この空の向こう

□夕焼け空
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学校が終わり、私は溜め息をつきながら校門をくぐった。前の学校では美術部として毎日部活をしていたが、今は部活をする気すらなくなった。

「いーちーかーちゃんっ!」
「···はつき···」
「おー、やっと名前覚えてくれたんだね♪」
「あれだけしつこかったらね」
「あは、は、なんかごめん···」
「別に怒ってない」
「分かってるよ」
私達は並んで歩き始めた。
「はつき部活は?吹奏楽でしょ?」
「今日は休み」
「ふーん」
「いちかちゃん部活どうすんの?」
「決めてない。むしろやる気ない」
「あっははー、だと思った」
「じゃあ聞かないでよ」
「えー?いいじゃん別に。というより、明日から夏休みだね」
「···うん···」
「いつ頃会いに行くの?」
「···8月···半ばぐらい」
「交通費はなんとかなった?」
葉月がニヤリと笑った。
「なった···」
「残念、せっかく貸しを作れるチャンスだったのに」
「性格悪っ」
「生まれつきだよー♪」

むこうも、これくらい暑いだろうか。
あるいは、涼しいだろうか。
もう、あそこは私のいない土地。
みんなは元気だろうか。
そう考えていると、赤い夕焼け空が目にはいった。

「わー、綺麗だねぇ夕焼け空も」
「···そうだね···」
吸い込まれそうな青い空も、鬱陶しいほど綺麗だけど、この赤い夕焼け空も、十分に綺麗だと、自然と心から思えた。
「いってらっしゃい、いちかちゃん」
「···いってきます」

夕日をみて、自然に笑えた。

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