本棚2
□誕生日プレゼント
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「チビ〜チビ〜どこだ〜?」
アシュタルが、俺を呼んでいる声がする、なんだか犬や猫を呼んでるみたいだけど、間違いなく俺を探している。
いつもならアシュタルに呼ばれたらすぐに駆けつけるのだけど、今はダメだ怒られるのが分かっていて出て行く勇気は俺にはない。
「・・・・アリオテス、俺が優しく呼んでるうちに出てこい、さもないと・・・」
声音がガラリと変わる、これはヤバい早く出ていかないと殺される!
「はい!はい!ここにいます!」
これ以上師匠を怒らせないように慌てて彼のいる居間に駆け込む。
「そんな所にいたのか、俺が呼んだらすぐに来いよ」
「ハハハ」
とりあえず笑ってごまかす。
「で?お前はどの程度関係しているんだ?」
居間のソファーに長い脚を組んで座ってるアシュタルが、ジロリと睨みつけてくる。
「えっと何の事でしょう?」
無駄に風格があっておっかない、美人は怒ると怖いってのは本当だな、でも可愛い。
「とぼけるな、俺がギンガ・カノンを斬ったことをアーサーに教えたのはお前だろう?俺の所に来た挑戦者全てが、お前のせいではないと思うが・・・言えどこまで喋った?」
誤魔化すだけ無駄だと思った俺は素直に喋る事にした。
「手紙はアーサー殿だけだよ、後は姉上とギルベイン殿とゲーの家臣達と武器屋の親父さんと店にいたよく知らない人達くらいかな」
姉上やギルベイン殿、ゲーの家臣達も吹聴してまわるような人間じゃない、噂が広まったのは武器屋の親父か客達だろう。
「・・・・それだな、お前何で武器屋なんかに?」
アシュタルが、疲れたような顔してソファーに沈み込む。
「それは、師匠が折った剣の代わりの剣を探してたからだよ」
そういうと、アシュタルの目が泳ぐ。
本当にわざとじゃなかったのだろう、あんなナマクラの剣で戦い抜いたのだ折れても仕方がない。
本当に気にしてなくてもいいのに、こういう所が本当に可愛い。
「本当はナイショにして当日に渡そうと思ってたんだけど・・・お誕生日おめでとうアシュタル!」
背中に隠していた剣をアシュタルに差し出す。
本当に驚いたのか鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているアシュタル。
「・・・ありがとう」
素直に受け取って、顔を赤らめるアシュタルは本当に可愛いくて思わずキスをしてしまった。
アシュタルが、座っていて俺が立ってるから少し屈み込む形になるのが何だかいつもと違って新鮮な気分になる。
「アシュタルは本当に可愛いな」
思わず本音を口にしてしまった。
「・・・調子にのるなよ、チビ」
睨みつけてくるアシュタルだが、まだ顔が赤いままだ。
「剣聖が持つのに相応しくない、ナマクラな剣だけど、この剣で稽古つけてくれよな師匠!」
「・・・剣は切れれば何でもいいさ、ありがとな大事にする」