本棚2
□キスマーク
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「アシュタルって最近ずっとそのチョーカーしてるよね」
剣の稽古の休憩中、何気なく言ったアリオテスの言葉にアシュタルはドキッとした。
「そうか?特に意識してる訳じゃないんだけどな・・・変か?」
本当は嘘。見せられないものがあるからそうしているだけ。
「ううん、でも熱いんじゃないかと思って、もうすぐ夏だし」
額の汗を拭いながら言うアリオテス。
日射しはもう夏そのものだ。
「そうだな・・・」
無意識に喉に手をやりながらアシュタルはため息をついた。
「セリアル、相談したい事があるんだが・・・いいか?」
珍しい事もあると思いながら、思い詰めたような顔をしているアシュタルに話をするように無言で促す。
「あのな・・・・キスマークの消し方を教えてくれないか?」
アシュタルにしては、歯切れ悪くぼそぼそと話す。
「はぁ?」
予想していなかった言葉に呆気に取られるものの、普段、人を頼らないアシュタルからの相談事だ無下にするわけにはいかないと話を聞く姿勢を取るセリアル。
「中々、消えなくて・・・ちょっと目立つ場所にあるから困ってるんだ」
セリアルの態度に安心したのか、もじもじしながらも言葉を続けるアシュタル。
「ちょっと見せてみろ」
アシュタルが、幅の広いチョーカーを外すと、褐色の肌でもハッキリと分かるくらい喉にキスマークがついていた。
「これはこれは、随分と独占欲の強い相手のようだな」
その言葉に、褐色の肌でも分かるほど全身を赤く染めるアシュタルをニヤニヤ笑いながらじっくりと眺めるセリアル。
「・・・ふむ、これは普通のキスマークじゃないな?」
急に真面目な顔をするセリアルにアシュタルが驚く。
「普通じゃない?」
「僅だが魔力を感じる・・・魔力を使って消えないようにしてるんだな・・・ちょっとした呪いみたいなモノだ」
「呪い・・・」
アシュタルが呆然と呟く。
「安心しろ、キスマークが消えないだけでお前に害を与える類いのモノではない・・・魔力の無駄遣いなだけだな、消したいなら相手にそう言うことだ」
「分かった、相手に言っとく。すまなかったなセリアル、つまらない事に付き合わせた」
羞恥と怒りに肩を震わせながら何とか礼を言うアシュタルの肩をセリアルがポンと叩く。
「まあ、ほどほどにしろよ」
何を?とは聞き返せないアシュタルだった。