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□まなざし
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ギンガ・カノンがどういう意図を持っていたのかは最早誰にも分からないが、彼女によって植え付けられた覇眼は、代を重ねても失われる事なく、覇眼の一族に脈々と受け継がれてきた。
セリアルは、覇眼を呪いだと言いきった目の前の彼のかって覇眼のあった左目をじっと見詰めた。
「なんだ?」
昔は人と目を会わせる事を嫌っていた、いや避けていたアシュタルだが今はちゃんと視線をあわせてくる。
「いや、覇眼持ちにはこの世界はどういうふうに見えていたのかと思ってな」
以前と変わらない美しい蒼い瞳、そこにはもう覇眼はないのだと言う、美しい新緑のような輝きを放っていたあの眼がもう見られないのは惜しいと少しだけ思う。
まあ、本人は厄介払いができてせいせいしているようだから、セリアルには何も言えないが。
「お前達と一緒だと思うぞ?見えているものは今も昔もたいして変わらない」
「そうか」
その返答に少し安堵する。ハクアが一体どんな方法で覇眼を持ち去ったのかセリアルは知らない、アシュタルに聞いた所で分かるはずもない。
だがアシュタルにその後遺症がないと言うのなら、良いことだったのだと思う。
「あ、でもセリアルは昔よりガキっぽく見えるな」
「・・・お前には教育が必要だな、年長者を敬え!」
「なんだよ!何を怒ってるんだ?痛っ!その杖で殴るな!」