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□雷夜
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窓に大粒の雨が叩きつけられ、世界を引き裂くかのように走る稲妻と耳をつんざく雷鳴。
嵐の夜、眠れずにいたアリオテスの部屋に音もなく忍び込むアシュタル。
「アシュタル?どうしたんだよこんな夜中に?」
「眠れなくてな・・・」
簡素な部屋着を着たアシュタルがアリオテスのベットに腰かける。
見慣れたはずの姿、だけど雰囲気が違う、儚げと言うか危ういような・・・
「すごい嵐だもんな、ルミアは大丈夫なのか?」
いつもと様子の違うアシュタルに内心ドキドキしながら話かける。
「ああ、女の方が度胸があるなぐっすり眠ってた」
柔らかく笑むアシュタルはまるで慈母のようだ。
「凄いな!こんなにうるさいのに!」
屋敷の上に雷の巣でも在るのかと思うほどひっきりなしに雷鳴が轟いている。
「そうだな・・・だから少しくらいうるさくてもルミアは気が付かないだろう」
「アシュタル?」
アシュタルの蒼い瞳がアリオテスを捉える。
切なげに揺れるその瞳から覇眼は失われたはずなのに、目をそらす事が出来ない。
先程の慈母のような笑顔とは全く違う、端整な顔にまるで娼婦のような蠱惑的な笑みを浮かべ、アリオテスの手をとるとその掌に口づけた。
掌へのキス、その意味は「懇願」
「お前は悪くない、全部俺のせいだ」
アリオテスの身体に撓垂れるアシュタル。思わずその背に手を回すアリオテス。
「全部俺のせいだ・・・だから抱いてくれアリオテス」
むせかえるような色香、アリオテスの耳元で甘く囁く声はまるで媚薬のようで・・・簡単に身体の熱が上がった。
「もしかして酔ってるのかよアシュタル!」
「そうかもな・・・酔いしれているよ・・・お前に」