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□月の光
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悪夢に魘されアシュタルは文字通り飛び起きた。じっとりと嫌な汗が全身から吹き出す、早鐘のように鳴る心臓がうるさい、シ−ツを握りしめた手にポタリと落ちた雫に自分が泣いている事に気づく。

「夢で泣くなんて・・・ガキかよ・・・」

「怪物ラド」が夢で泣くなんて焼きが回ったもんだと自嘲する。
ぐいと乱暴に目を擦り同じテントで寝ているルミア達の様子を伺う。
俺の事には気付かずに眠っているようだ。
こんな情けない姿を見られたくなくて、外へと抜け出した。

交代で見張りについている兵達が遠くで歩く気配があるだけの静かな夜、月明かりを頼りに水場で顔を洗い、水を飲むと少しだけ気分が落ち着いた。
無性に酒を呑みたい気分になったが、いつもなら付き合ってくれるセリアルは今は亜人達の女王として離れて行動しているから無理だろう。
それにここは戦場だ、二日酔いで起きれませんなんて間抜けな事をする訳にはいかない。
手頃な岩に腰掛けぼんやりと空を見上げる。
ひさしぶりにみた悪夢、内容はいつも同じだというのに何度見ても慣れない、きっと一生慣れることはないだろう。
これは俺が生涯背負うべき罪なのだから。
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