第一章
□月の神との出逢い
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私の周りは、不思議に満ち溢れている。
〜ハルの通う高校〜
「ハル、おはよう…!」
「月人君、おはよう!あ…何か付いてる…?」
「いや、相変わらず神様と学校来てるんだな〜って思っただけ笑」
「わ、笑わないでよ…!仕方がないでしょ?連れてきたくて連れてきたわけじゃないし…。」
「んで、今日は素戔嗚様か。なかなかだな。」
「ん…な、何がなかなかよ。」
「ま、安心しろ。見えているのはハルと俺しかいないから。」
「…」
私と同じ様に普通の人には見えないものを見る事が出来るこの彼の名は、一ノ瀬月人。名前に月が入っている理由は、夜に生まれたからなんだって。
「と〜に〜か〜く、素戔嗚様は学校の外か、高天原にでも行ってて!月人はそれ以上干渉しない!」
「はいはい笑」
「なあ、そう怒るでない。やはり心配なのだ。大国主の娘であろう?それにそなたの父から頼まれているのだ。故に、ついて行かぬ訳にもいかぬ。そこは、分かってくれ。授業の邪魔だけはせぬから。なっ!」
「し、仕方が無いですね…。そういうことなら。」
(親バカですか…!)
「教室の後ろに居るから。それなら良かろう?」
「緊張するんですけど。」
「大丈夫。ハルは優等生であろう?心配ない。」
「か、関係ありません。」
「まあ、いつも通りにしておれば良い。ではな。」
「あ、ちょっと…!」
素戔嗚命は私から離れて教室の端に寄ってしまった。
「振り回されてるな。」
「月人は黙ってて!」
「はいはい。」
いつもこんなやり取りを、登校してから授業が終わるまでしている。放課後にまで月人が付いてくると、もっと厄介な事になる。ただそれだけは、私が部活に入っているので頻繁には起こらない。それだけが救い…か。
〜お昼休み〜
「なあ、ハル。ハルって、好きな人とか居るの?」
「なあに?いきなり。」
「いや、特別深い意味は無いんだけど。そういう話ほとんどしないじゃん。ちょっと気になってね。」
「う〜ん。今のところは居ないかな。」
「そっか。」
「何よ。」
「ハル可愛いしさ、言い寄ってくる奴とか居ないのかなぁって思っただけ。」
「居ないよ、そんな人。それに私はぱっとしないし、それほど可愛いくないし。」
「謙遜はいけないぞ。ある程度自信持ってないとな。」
「余計なお世話よ。それで、もうお弁当食べたの?」
「ほら、とっくに。」
「相変わらず早いね。」
「それほどでも笑」
「褒めてない。」
何だかんだ言いつつも、月人は何かと私の手助けをしてくれる。幼馴染みってこともあるかもしれないけど、他の男子とは何かが違うの。
〜放課後〜
「んじゃ、また明日な!」
「うん、帰り道気をつけてね。」
「おう。」
私はその後、いつも通りに部長として部活動をこなし、帰路についた。
〜ハルの家〜
「ただいま〜。」
「おかえり、ハル。」
「ただいま、お母さん。」
「今帰ったのか?」
「あ、お父さん。ただいま。」
「おかえり。何か良いことでもあったのか?」
「え?特に無いかな。」
「そうか?」
「まあ、素戔嗚様のお陰かも。」
「素戔嗚命のお陰?」
「うん。素戔嗚様のお陰でいつも以上に月人君と話ができたから。」
「なら良かった。」
その後、いつも通り家族3人での夕食を済ませ、お風呂から上がると、2階にある自分の部屋へ移動した。
「今日は満月か…。」
普段月を見ることなんてほとんど無いのに、今日は何だか月が恋しくなってしまった。不思議な気分だ。
「やっぱり月って美しいな〜。とても綺麗。昔の人もこうやって眺めたのかな…?」
でもこの時、私は全く気が付かなかった。まさか、あの神様が私のことを見つけて、恋をしたなんて。