第一章

□月の神との出逢い
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「まず、何故あの様な場所、というか人間界に居たか。それは、私は元々別の場所、高天原に居て、時折この世界に来るんだ。私は夜を支配する神である前に、三貴神の一柱だから。」

「では、この世界にはよく来ているということですか…?」

「うん。驚いたか?」

「少し。」

「あまり聞いたことが無かったんだろう。まあ、無理も無い。知名度低いし。」

「そ、それは…。」

「気にしなくても良いぞ。そのことくらいで気に病む神ではない。」

「申し訳ありません…。」

「あ、いやいや。それじゃあ、次の質問に移っても良いか?。」

「あ、はい。どうぞ。」

「次は、どうしてハルを助けたか。いや、まあ…神様だからね。」

「それだけですか?」

「これは最後の質問に繋がっているから。では最後の質問に対して答えよう。」

「はい。」

「最後は、どうしてハルがあの様な状況になる事を知っていたか。ハルは知らないだろうけれど、私は前日にハルのことを見つけたんだ。」

「私を?」

「うん。それで、凄く可愛い子だなぁと思って。それで、とても気になって、どんな子なのか知りたくてハルのことを、暇さえあれば見てたんだ。そしたら、君が不審な者に追われているのを見つけた。特にハルは普通の人と違って、大国主の娘だ。何かあれば神界にまで影響を及ぼす。それに…。」

「それに…?」

「大切なハルのことを守ってやりたいと思って。」

「月読様…!」

「こ、これで全ての質問に答えた事になったか…?」

「十分です。十分過ぎます。本当に、ありがとうございました…!」

「神としての役割を果たしたまでだ。では、そろそろ私は戻らねば。朝が来る。そなたもそなたの役割があるであろう?それを全うせねば。」

「はい!月読様。」

「うん。ではな。」

月読命がそう言った直後、部屋に風が吹いた。すると、いつの間にか月読命は居なくなっていた。私だけが、一人部屋の真ん中に立っている。

「不思議な神様ね。」

そして今日もいつも通りの一日がやってくる。

私はいつも通りに支度をして、学校へ向かった。

〜学校〜

「ハル、おはよう。昨日は大丈夫だったか?」

「え?何で知ってるの?」

「ハルの母さんから、ハルを知らないかって電話があって。」

「そうだったんだ…!ごめんね、心配掛けて。」

「いや、良いんだ。ハルがこうやって無事に学校に来てくれただけで安心できた。」

「それなら良かった!」

その日のお昼休みに、私は月人に事の詳細を話した。

「それで、月読命に助けられたって訳か。」

「そう。意外と優しくて、不思議な神様だなって思った。」

「意外と、って…笑」

「違うの。私のイメージでは、夜の神様は冷酷な神様だって思ってたから。」

「なるほどなぁ。」

放課後になり、

「今日も気を付けて帰るんだぞ。って気を付けていても変な奴は現れるか…。」

「大丈夫。気をつけるから。」

「じゃあな。また明日。」

「うん。また明日ね。」

そう言って、月人と別れて部室に戻ると、何とそこには…

「あっっ!何でここに居るですか!?」

「あら、ハルちゃん!」

「ハ、ハルちゃんって…。」

「姉上、ハルが困惑しているではありませんか。」

「あ、ごめんね!私のことは分かる?」

「横に月読様がいらっしゃるということは…天照大御神様、ですよね?」

「正解!」

「こちらの方が知名度高いもんね。」

「月読様…。ところで、何故ここに居るのですか?」

「弟から貴女の事を聞いて、どんな子か見てみたくてね。とても利発そうで、その上凄く可愛い子じゃない!流石我が弟、見る目があるわ〜!」

「恐れ入ります、姉上。」

(やはり太陽と月ではこんなにもテンションの差に開きが出るのね…汗凄い温度差…。)

「あの、私以外の人間が居なくて良かったです。他に誰か居る状態で叫んだら、明日から学校に行けなくなります。」

「大丈夫よ!人が居ないことを確認してから部屋に入ったから!」

(い…いや、そういう問題じゃ…。)

「済まなかったな。姉上のせいで困らせてしまって。」

「いえ、月読様。私は、大丈夫ですよ。」

そうは言ったものの、私は戸惑いを最後まで隠せないまま、二柱が見守る中で部活動をするという羽目に…。

でも、何だかんだ有りつつも、二柱は他のことには口を出さず、ただ見守ってくれているというだけだった。

だけど、天照大御神様が現れたことで、翌日凄いことになろうとは、私はまだこの時、予想する事さえも出来なかった。
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