第一章
□月の神との出逢い
3ページ/4ページ
「まず、何故あの様な場所、というか人間界に居たか。それは、私は元々別の場所、高天原に居て、時折この世界に来るんだ。私は夜を支配する神である前に、三貴神の一柱だから。」
「では、この世界にはよく来ているということですか…?」
「うん。驚いたか?」
「少し。」
「あまり聞いたことが無かったんだろう。まあ、無理も無い。知名度低いし。」
「そ、それは…。」
「気にしなくても良いぞ。そのことくらいで気に病む神ではない。」
「申し訳ありません…。」
「あ、いやいや。それじゃあ、次の質問に移っても良いか?。」
「あ、はい。どうぞ。」
「次は、どうしてハルを助けたか。いや、まあ…神様だからね。」
「それだけですか?」
「これは最後の質問に繋がっているから。では最後の質問に対して答えよう。」
「はい。」
「最後は、どうしてハルがあの様な状況になる事を知っていたか。ハルは知らないだろうけれど、私は前日にハルのことを見つけたんだ。」
「私を?」
「うん。それで、凄く可愛い子だなぁと思って。それで、とても気になって、どんな子なのか知りたくてハルのことを、暇さえあれば見てたんだ。そしたら、君が不審な者に追われているのを見つけた。特にハルは普通の人と違って、大国主の娘だ。何かあれば神界にまで影響を及ぼす。それに…。」
「それに…?」
「大切なハルのことを守ってやりたいと思って。」
「月読様…!」
「こ、これで全ての質問に答えた事になったか…?」
「十分です。十分過ぎます。本当に、ありがとうございました…!」
「神としての役割を果たしたまでだ。では、そろそろ私は戻らねば。朝が来る。そなたもそなたの役割があるであろう?それを全うせねば。」
「はい!月読様。」
「うん。ではな。」
月読命がそう言った直後、部屋に風が吹いた。すると、いつの間にか月読命は居なくなっていた。私だけが、一人部屋の真ん中に立っている。
「不思議な神様ね。」
そして今日もいつも通りの一日がやってくる。
私はいつも通りに支度をして、学校へ向かった。
〜学校〜
「ハル、おはよう。昨日は大丈夫だったか?」
「え?何で知ってるの?」
「ハルの母さんから、ハルを知らないかって電話があって。」
「そうだったんだ…!ごめんね、心配掛けて。」
「いや、良いんだ。ハルがこうやって無事に学校に来てくれただけで安心できた。」
「それなら良かった!」
その日のお昼休みに、私は月人に事の詳細を話した。
「それで、月読命に助けられたって訳か。」
「そう。意外と優しくて、不思議な神様だなって思った。」
「意外と、って…笑」
「違うの。私のイメージでは、夜の神様は冷酷な神様だって思ってたから。」
「なるほどなぁ。」
放課後になり、
「今日も気を付けて帰るんだぞ。って気を付けていても変な奴は現れるか…。」
「大丈夫。気をつけるから。」
「じゃあな。また明日。」
「うん。また明日ね。」
そう言って、月人と別れて部室に戻ると、何とそこには…
「あっっ!何でここに居るですか!?」
「あら、ハルちゃん!」
「ハ、ハルちゃんって…。」
「姉上、ハルが困惑しているではありませんか。」
「あ、ごめんね!私のことは分かる?」
「横に月読様がいらっしゃるということは…天照大御神様、ですよね?」
「正解!」
「こちらの方が知名度高いもんね。」
「月読様…。ところで、何故ここに居るのですか?」
「弟から貴女の事を聞いて、どんな子か見てみたくてね。とても利発そうで、その上凄く可愛い子じゃない!流石我が弟、見る目があるわ〜!」
「恐れ入ります、姉上。」
(やはり太陽と月ではこんなにもテンションの差に開きが出るのね…汗凄い温度差…。)
「あの、私以外の人間が居なくて良かったです。他に誰か居る状態で叫んだら、明日から学校に行けなくなります。」
「大丈夫よ!人が居ないことを確認してから部屋に入ったから!」
(い…いや、そういう問題じゃ…。)
「済まなかったな。姉上のせいで困らせてしまって。」
「いえ、月読様。私は、大丈夫ですよ。」
そうは言ったものの、私は戸惑いを最後まで隠せないまま、二柱が見守る中で部活動をするという羽目に…。
でも、何だかんだ有りつつも、二柱は他のことには口を出さず、ただ見守ってくれているというだけだった。
だけど、天照大御神様が現れたことで、翌日凄いことになろうとは、私はまだこの時、予想する事さえも出来なかった。