story.

□2.記憶は消えるもの
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「え…?」

どういうこと?
と彼女は目をパチパチする。

「俺の名前、孫 悟空
悟空っての。」




悟空がそう話すにつれ
彼女の目は大きく開かれた



「キミが…悟空なの?」

ジャラと鎖の音を響かせ
膝立ちで悟空に近づく。




「うん。
本当にアンタが知ってるゴクウかは分かんないけどなっ」

もしかしたら違ってたり。
と苦笑いする悟空




「でも、見つけてくれた。」

「…!、うん。」



そう微笑かける彼女があまりに綺麗で
なんてゆーか。
こんなの初めてで照れくさい。




「ちょっと下がってて」

はい。と彼女が下がると
悟空は如意棒を振りかざし、
意図も簡単に封印を解いた。




「わ?!」

その瞬間、
辺りは光に包まれる。

覆われていた木々はなくなり、太陽が現れる。
緩んでいた地盤も元に戻り道なりができた。




この暗さも封印のせいだったのか…
光が落ち着き、
彼女も鎖から解放される。





「大丈夫…か…、」

改めて明るい場所で見る彼女
人を綺麗と思ったのは人生で2度目




眩しそうに太陽に手をかざし
上を見上げ真っ直ぐと立っている。
と、此方を見ている悟空に気づいた。




「眩しい…。
私今、外に居るんだ…」

じわっと涙が溢れてくる

泣いてる女の子の対応何てしたことない。
悟空はどうすれば〜とひとり悶えていた。



「ごめんね。可笑しいな。
あの中にいる時はこんな感情無かったのに」

ぐいぐいとそれを拭う

あの中…
ーーそうだ
俺もこの子も、
500年幽閉されてたんだよな。




「なぁなぁ」

「なぁに?」

「アンタ、名前は?」

「名前…覚えてないの。」

「そっか…」



俺が名前を覚えてたみたいに
コイツは俺の名前を覚えてたんだ。
…って俺じゃなかったら激ハズいけど。



「そだ!俺が名前付けてもいい?」

「え!」

と言う彼女はとても嬉しそうで。
それに何故か俺の中でその名前はもう決まっていた。





「……桜良
桜良はどうかな?」

実はキミの顔を見た瞬間
この名前が浮かんだ。



「桜良…
桜良!とっても良い名前。」



何だか懐かしいような
そうでもない様な。
胸の奥がきゅっとなった。



「へへっだろ?
頭に浮かんで来たんだ。」

「そう…なの。」



悟空…
私はやっぱり貴方の事を知っている気がする。
ーー思い出したい









ーーーガサッ



「…え、なに?」

「桜良。俺の後ろに隠れて」




森の封印が解かれた事により
妖怪の侵入が自由になった。
どうやら先程の妖怪達が追ってきたらしい。

それにいち早く気づいた悟空は
桜良を自分の背後へと隠す。



「…ごめん。少しだけ此処で待ってて」

「ワルモノ?」

「え?!あー…
まぁ、そんなトコ。」



ふうん。と妖怪達を見る
悟空は如意棒を出し
その群れの中へ一人入って行った。




すると、
桜良の背後に妖怪が一人近づいていた。




「ッ!!桜良!」

「え?」



目先の敵を倒し、
急いで向かおうとするが間に合わない




キィィン…




「え…」

よく見れば桜良が
背後の妖怪が振りかざした刃物を
二つに折っていた。




「後ろはダメだよ。」

そのまま腕を引き、肘で仕留める。









何処…何処だろう。
とりあえず三蔵達と合流するしなきゃだよなー。
桜良の事なんて言おう。



「あのさ。
俺天竺ってとこ目指して旅してんだ。
あ、他にも仲間が後三人いる。」





































ーーー……500年ぶりの、外の世界




「わッ、大丈夫?」

久しぶりの地面があまりに柔らすぎて
思わずコケそうになった
それを悟空が支えてくれる




「歩くのってこんなに難しかったっけ…」

「あ…この森は地盤が緩いんだって。
八戒が言ってた。」

「八戒?」

「俺の仲間!他にも後2人…ってああ!」



先に行っててと言ってたのを忘れていた。
あれからだいぶ時間も経っている。




「どうしたの?」

「えっと…ごめん!!」

「わっ」



彼女を抱き、駆け足で来た道を戻っていく。
とりあえず事情を話そう。
ここに一人女の子を置いておく訳には

















ーー同時刻
三蔵達は宿屋の部屋で寛いでいた。



「悟空、帰ってきませんねぇ」

もう時期夕飯なのにと心配をする八戒



「どーせ、腹が減ったらこっち帰ってくるだろ。
あの森からもココ見えんだしよ?な、保護者さんっ」

「チッ誰が保護者だ誰が」

眉間にしわを寄せ
タバコを灰皿に擦り付ける
タバコのペースがいつもより早い。
気づけば灰皿いっぱいになっている。
全く、この人と言う人は…
八戒は節目で静かに笑った。




そして

タ…タタ…タタタッ!

ガチャッ


「ただいまー!!
っていででタンマタンマッ」

「おっせぇよ馬鹿猿!」



悟空が帰って来た。
すかさず悟浄が肩を組み技をかけた。



「お帰りなさい。突然いなくなるなら驚きましたよ?」

「ご、ごめん…」

シュンとする悟空の肩に手をおき
無事で何よりです。と一言笑顔で伝えた。



「あ、因みに三蔵はこの間にタバコ2箱吸ってましたよ」

「げっ」



ビクビクしながら三蔵を見れば、
椅子にすわりいつも通り新聞を見ている



「さ、三蔵…」

「連れてきた。
…とか言うんじゃねーだろうな。」

「えッ!えっと…うん。」



連れてきた?誰を?
悟浄と八戒は全く話が分からず
状況が把握できない。









悟空が合図をすると、
ドアの奥から桜良がゆっくり入ってくる。



「お、女の子〜?!」

まさか、え?!と悟空と桜良を
悟浄は交互に見た



「ち、ちげーよ!
そういうんじゃねー!!!」

「…どういう事か説明してくれますね?」



それに悟空は頷き、
桜良を近くに呼び
先程の出来事を一から全部話した。









ーーーー
ーーー
ーー


「やっぱ親子って…」

「似るんですねーー」

「ころされテェのか。」



三蔵は悟空を拾い
悟空は桜良を拾った

しかも状況も何となく似てるしで、
悟浄と八戒は『他人事』と言う意味で尊敬した。




「三蔵だから…
だから俺!
桜良も一緒に連れて行きたいんだ!」

「何?」



ほっとけない、1人にできない。
色々と理由はあるらしいが一番は気になるから、らしい。

…くだらねぇ。
まぁ、500年前の悟空の僅かな記憶が
そう伝えてるのかもしれん。

が、そうだとして?
そうだとして連れて行く理由になんの意味がある。




「意味なんて必要ないよ。」

「…ぁあ?」



桜良が此方を見て微笑んでいる。
今のは偶然?それとも…




「貴方だって、そうじゃないの?」




西へ行く意味
ーー俺が行きたいから行く。
三仏神何て関係ねぇ。









「さ、三蔵?」

返事がなかなか返って来ないので
悟空は不安になる



「チッ……足手纏いになったら
すぐに降ろすからな。」









三蔵一行の本当の旅は、
ここからだ。




to be continue





























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