D.G-SS

□それぞれのV.D
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「…はぁ」

溜め息を吐こうが、何度見上げ直そうが。

未処理の書類の山が減るはずもないわけで。

決裁済み束の軽く十倍はありそうな強敵を前に、コムイは机へと突っ伏した。

…少し前までならば、こんな時は気分転換が必要とばかりにさっさと逃げ出している所だが、近頃ではそうもいかない。

何故ならば…


「室・長!」


びくーん!


響いた知的なアルトの声にコムイは反射的に身を起こすと、ペンをとり背筋を伸ばす。

「はいっ! はいはい、お仕事してますよ〜!!」

「そうですか、お疲れ様です」

急にきりりと顔を引き締めアピールする上司を真面目で有能な美人補佐官殿はさらりと受け流す。

「それらは本日中に裁可願います。余裕があるようでしたら、こちらの資料も御一読を」

「えぇっ!?」

「…何か?」

「………イイエ」

内心で滂沱と血の涙を流すコムイなど知らぬふりでブリジットはきびきびと仕事を捌いていく。

その一貫した態度は旧本部メンバーの―…主にリーバー班長あたりに―…、尊敬の目で見られていたりする。

コムイのあまりな破天荒さに中央庁が付けたお目付役なのだから、当然と言えば当然だが。

やがて彼女は、歩き方の手本のような美しく無駄の無い足運びで彼の執務机に歩み寄ると、白磁の皿を静かに置いた。

思わずコムイが何事かと手を止めれば、艶々とした茶褐色のお菓子が綺麗に並べられている。

少しずつ色合いの違う、幾種類かのチョコレートはまるで芸術作品よろしく整えられていて。

繊細な筆致で、おそらく販売店の名と思わしき刻印が入れられている。きっと名の通ったパティシエの手によるものだろう。

「お嫌いでなければ、どうぞ」

脳の疲労には糖分が良いそうですので、と勧められコムイは彼女をきょとんと見やる。

「ムダなおしゃべりなどは感心しませんが、能率を上げるための休憩でしたら認められます」

わたしも鬼ではありませんので、と呟き、ついと視線を逸らせる補佐官殿の横顔をコムイはまじまじと眺めてから、微笑んだ。

「―ありがとう」

その柔らかい謝辞に、彼女は一瞬、虚を突かれたような表情を閃かせるが、あくまでも視線は合わせずに高くヒールを打ち鳴らして離れていく。

「コーヒーでもお入れしますね」

「うん、お願い」

そうして、二人きりの司令室に薫り高いコーヒーの芳香が満ち溢れた。





そんな二人のやり取りを、そっと扉の隙間から窺う人物が1人。

やがてリナリーは慎重に扉を閉めて、小さく笑った。

兄へと思って持ってきた、このチョコレートの出番はもう少し後でも良さそうだ。

くすくす、とこみ上げてくる笑いが止まらない。

彼女はほわほわする気持ちを感じながら、静かに廊下を戻っていった。




えんどv
その3に続く―>








二話目はコム×フェイ!!

管理人的には大プッシュでございますが、いかがでしょうか…!!!

すっごいお似合いだと思うんですよねー
サボり魔室長に、しっかりもの補佐官さんで。

ブリジットさんには是非ともリナリーの義姉になって頂きたい!!!
でもってでもって、ブリジットさんを怒らせては
「兄さん! 義姉さんに謝ってきなさーいっっ!!!!」とかリナリーに叱られてるといいんです。



…連続、マイナーCPですいません
次はメインキャラたち行きます!
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