長編SS

□first down
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次に目を開けると、そこには科学班の面々が肩を並べ、こちらを覗き込んでいた。

思わず瞬けば、一斉に安堵と歓喜の声が上がる。

ジョニーが一番に飛びついてきて破顔した。

「リナリー、よかった!本当によかった!!」

「室長が留守の今、何かあったらどうしようかと…」

「頭とか痛くないか?平気か!?」

「マジ助かった!室長に挽き肉にされる所だった〜」

わやわや騒ぐ皆に、婦長の注意が飛ぶ。

よく見ればそこは医務室で、彼女はベッドに寝かされていた。

きょときょとと辺りを見回せば、リーバー班長が微笑んで訊いてきた。

「覚えてるか?」

お前さん、新しい実験機に触っちまって倒れたんだ。

そう言われて、直前の情景がフラッシュバックする。








『これがその装置?』

『そう、最新式だよ〜。カッコイいだろ』

『ふうん。大きいわね』

ジョニーに説明されながら、機器へと手を伸ばした時。

『班長! 数値が急上昇してます!』

『何だ!?』

『ジョニー、離れろ!』

『リナリー!』

『あぶな…ッ』



ーバチッ!



その衝撃の後から記憶がない。

ようやく得心がいって、泣きついてくるジョニーに笑顔を向ける。

「ごめんな〜」

「ううん。平気よ、どこも痛くないし」

ごめんね、心配かけてと回りに謝れば、婦長がやってきてテキパキと様子を確認する。

「リナリー、本当に大丈夫なの? 気分が悪いとか頭痛があるとか、ない?」

「うん、全然」

答えると、念の為にドクターを呼んでくるからと婦長は部屋を出て行った。

残った科学班の皆からは、ほっとして気が抜けたからか、ぽつぽつとボヤキが出始める。

「ほんと何で、いきなりあんな風に暴走したんだろうな」

「はぁ〜、もう一度調整しなおしですかねぇ〜」

しょんぼりする皆に苦笑して身を起こした。

少しずつ体を動かしながら自身で確認する。

大丈夫。どこもおかしいところは無い。

「…結局、あれって何の装置なの?」

気になって尋ねれば、よくぞ聞いてくれましたとばかりに皆の目が輝いた。

「うんとね、簡単に言えば『時空間の座標を正確に捕捉・計算・測定』する為の機器なんだ」

「座標軸を正確に設定できるようになるなら、例えば結界装置(タリズマン)の強化に繋げられるんだよ」

その後は各自が延々と専門的な論理を繰り広げて、さっぱりだったが、最後のジョニーのセリフだけが耳を刺した。

「最終的にはテレポーテーションやタイムトラベルだって、夢じゃない!」



―タイム、トラベル。




その言葉に鼓動が鳴って、ひやりと胸元に冷たい塊が落ちた。

さっき見た夢の情景がぐるぐる回る。

教団の森。

大きくなった神田。

…その傍に来た女の人。

二人は…恋人、同士…みたいで。



(…まさかね)



まさか、まさか、そんなことないよ。

あれはただの夢。

違うよ、絶対。

…あれが。

未来のことかもしれない…なんて。




「…リナリー?」

呼びかけられて、ハッと顔を上げる。

すると、何とも気遣わしげな表情の班長がいた。

「本当に大丈夫か?」

「う、ん。もちろんだよ」

笑おうとして、失敗したことに気がつく。

無意識にシーツを握り締めていた手を慌てて離して、ベッドから飛び出した。

「私、大丈夫だから! もう行くね!!」

「リナリー!?」

どうしてか、何でか分からないけれど。

そこにいることがどうにも居た堪れなくて、病室から走り出す。

「ちょ…、おい! リナリー!!」

「リナリーってば! どうしちゃったんだよー!?」

皆の驚愕を背に聞きながら廊下を駆け抜けていく。

自分自身でも説明できない衝動が全身を突き動かしていた。

分かるのは、締め付けられたように感じる胸と、嫌になるような重たい鼓動だけ。
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