長編SS
□カイコの家
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男女の幼なじみというものは、いつの間にか「他人」になっていってしまうんだろうか。
それも学年が違ったりすると。
…余計に。
体育を終えて、友達と雑談まじりに更衣室を出る。
校舎と校舎の間を繋ぐ渡り廊下を歩いていると、1人が声を弾ませた。
「ねぇ! 次、三年の男子みたいだよ」
「あ、ほんとだ。ラビ先輩と神田先輩がいる」
耳へ触れた名前に思わず瞬いて、グラウンドへと視線を投げる。
同じような格好の群れの中で、一際。
「…やっぱ目立つよねぇ。あの2人」
「フツーに芸能人とかよりカッコいいよね」
きゃあきゃあと話題を盛り上げる友人たちの隣で小さく笑って。
傍立ち、こちらへと影を落とす木々を見上げる。
もうほとんど散り終わり、緑のばかりの葉桜。
…いつからだったろう。
この花の季節が巡る度に、「距離」を感じるようになったのは。