長編SS
□first down
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「―リナリー!!」
「危な…っ」
―バチッ!
一瞬の衝撃。
…科学班の皆の声が遠のいた。
first down
(…あれ?)
目を開けてみるとそこは、森の中だった。
自分はどうしたんだったろうかと考えても、ここまで来た過程が思い出せない。
仕方なしに辺りをゆっくり見渡せば、知っている場所だということに気付いた。
教団の森。
天気が良いのだろう、降るような木漏れ日が眩しい。
太陽の位置から午前中だと判断してホッと息をつく。
これなら普通に帰れる。よく分からないことだらけだけど、とりあえず心配ない。
生まれた余裕に微笑して、歩き出す。
木漏れ日の中。深い森、包まれるような緑。
それは不思議な感覚だった。
ふわふわとして、現実感のないような。
気分良く、足を進めていけば、視界の先に何かが横切る。
ひとつにまとめられた長い黒髪。
(…神田?)
鍛錬でもしにきたのだろうか。
少し足を早めて、後を追ってみた。