D.G-SS TitleW

□和菓子ほど甘くはなかったね
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「神田、食べる?」


鍛錬のため、遅くなった昼食。


がらがらの食堂隅でいつものように蕎麦を摂っていると、隣にリナリーが腰かけた。


「…何だ?」


「和菓子。ジェリーがレシピを手に入れたから、試しに作ってみたんですって」


“ヨウカン”、ていうの?


首を傾げながら笑う彼女の皿には茶色っぽい、つるんとした水菓子。


けれど神田はほとんど条件反射で眉をしかめると、


「いらん」


一刀両断に切り捨てて、そっぽを向く。


「激烈に甘いだろうが、それ」


「そうかなぁ…」


せっかく神田の国のお菓子なのに、と内心で溜め息をつきながらリナリーはおやつを口に運ぶ。



ひとくち含めば、くどくない上品な甘みが広がって。


思わずうっとりと、幸せな笑みが口元に浮かぶ。


「美味しいよ、神田」


「そりゃ良かったな」


「そんなに甘くないよ? 騙されたと思って食べてみて」


はい、と一切れ差し出されても、彼の拒否姿勢は変わらない。


「いらねぇ」


「もー、本当に大丈夫だと思うのに」


むぅ、とむくれて彼の分の羊かんを咀嚼する。


神田に食べてもらって、その感想をジェリーに伝えてやりたかったリナリーとしてはどうにも悔しい。


どのくらいならいいの。お砂糖無使用じゃなきゃダメなの?


そんなふうにぶつぶつ呟いていると、前触れなく後頭部を捕まえられた。


疑問の声を上げる暇も有らばこそ。


視界と唇を彼で塞がれて。


悲鳴も抗議も、ただ吸い上げられて消えた。


解放され、呆然と瞬きを繰り返すリナリーの横で、神田は明後日の方を見ながら呟いた。


「…これぐらいなら悪くねぇな」


「―――ッッ!!!!」








和菓子ほど甘くはなかったね






(唇に残る、ほんのりとした甘味)



バカ、いきなりはやめてって言ってるじゃない








end.


2008.0815






羊かん、そのものだと彼には甘すぎるらしいのです。




神リナサーチ


Title by 『Word Cascade』緋羽りつや様

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