D.G-SS.B
□Rairy drop
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内包する熱が荒れ狂う。
唇を割り裂く嬌声はまるで他人のもののよう。
耳を塞ぎたくなる水音と息遣いが意識を攫う。
自分と、彼と。そして世界の輪郭が、融けて。混ざって。
ぼんやりとする意識の中。
夢と現を彷徨う頃に。
逞しい腕がそっと、後ろから私を抱き寄せる。
その所作はまるで壊れ物を扱うようで。
眠っているのを確かめるかのような仕種の後に、仄かな吐息が触れる。
うなじに、肩に。背中に。
怖々とした、小さなキス。それは触れるのをためらっているような。
繰り返す行為に、時折深い溜め息が交じる。
…ああ、まただ。と思う。
跡を残さない無数の口付けは私の心に痕を穿つ。
向かい合わせに肌をあわせて。私をしっかり抱きしめて。穏やかに、幸せに、眠ってもらいたいと思うのは…ねぇ、ワガママなの?
哀しすぎるくらいの優しいキス。
優しくて、優しくて、残酷な。
あなたを好き過ぎる私には、今、ここであなたを振り仰ぐ勇気がない。
ただでさえ脆い繋がりが…切れていってしまいそうで。
だから、だから。
…私もあなたに見えない所で。
頬を伝う水滴を、許すの。
Rairy drop
降るようなキスと毀れる雫
こんなに近いのに、どうしようもなく遠い
end.
2008.8.1