D.G-SS.B

□彼と彼女だから
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昼夜問わない薄暗闇の中。

硬い足音が地下水路へと連れ立ち、響く。

急な任務を言い渡され、赴くは三つの人影。





「オイラに神田にマリのおっさん? マジに豪華メンバーじゃん」

本当にそんなに必要なのかねと肩を竦めるディシャにマリが頷きを返す。

「レベル2が複数確認されている上にイノセンスかもしれない奇怪絡みだ」

教団としても万全を期したいのだろうと諭されて小柄なエクソシストはふうんと鼻を鳴らす。

―と、その時。

二人の雑談に特に加わるでもなく黙々と歩みを進めていた神田が不意に立ち止まる。

「神田?」

「どしたん?」

二人の呼びかけには応えないまま、彼は今まで通ってきた道をただ無言で振り返った。

そんな兄弟弟子の様子にディシャが問い掛けの目でマリを見上げる。

いつもは何かを知覚するなら、人一倍聴覚の発達した彼が真っ先に反応するからだ。

しかしそのマリにしても神田が何を気に留めているか分からず、同じ疑問の表情を浮かべている。

「神田。なにか忘れ物でもあるのか?」

「…いや」

何でもない、と応えて再び踵を返しかけた彼を、一瞬遅れてマリが制した。

「神田、待て」

多くの人間が生活するこの教団内では雑音の一つとして埋もれてしまう足音と息遣いが一人分、明確な指向性を持ってこちらに向かってくる。

それが誰のものか理解したマリが一同を留め置く事、暫し。

息を切らしてやってきたリナリーは三人を認めてパッと顔を輝かせた。

よかった、まだ居た。

まさしくそんな表情で少女は神田の元へと駆け寄って。

彼女と何かを言い交わす同僚から少し距離をとり、他の二人は佇む。

「神田のヤツ、マリのおっさんより先に気づいたじゃん」

すげぇ勘だなと感心するディシャに最年長の兄弟子は首を振る。

「いや、別にそういうわけではないだろう」

呟いて、マリは物馴れた大人の顔で微笑った。




彼と彼女だから




愛の力、だな

何それハズい




end.


2008.6.1


138夜を見た時、「何この熟年夫婦」とビビりました。
それまでD-Gray読者ですらなかった(ファンどころかまともに読んだ事さえない)私をドツボらせた神リナは偉大だと思います




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