D.G-SS.B

□僕が食べた毒林檎
1ページ/1ページ



お気に入りのロッキングチェア。

そこで寛ぎ、足を伸ばして。

手に馴染む、少し古びた写本のページを捲る、そんなひととき。




―ぼすっ



「!」

いきなり腹部へと『着地』した物体に、思わず紳士にあるまじき声を上げそうになる。

カエルが潰れたような悲鳴を辛うじて飲み込んで、至近距離で煌めく瞳を覗き込む。

「…ロード」

「えへへ、アレン〜。暇ぁ?」

「暇じゃありません」

溜め息をつきながら言ってやるも、少女は聞く耳持たずに腕を回してしがみついてくる。

「お仕事じゃないでしょ。そんな煤けた本の相手よりボクを選びなよぉ」

言いながら、音を立てて頬にキス。首元を吐息でくすぐるように、唇を寄せてクスクス笑う。

諦めて、手にした本を閉じた。

そのままにしておくと投げ捨てられたり破られたりした前歴がある。

味気ない活版印刷とは違う、貴重な手書き写本の良さなんて、この少女は理解してはくれないから。

本の置かれる音を、合図と見て取ったか、彼女は嬉しそうに目を細めて猫のように擦り寄ってくる。

動くたびに、キス。

瞼、頬、鼻、また頬、耳朶、唇。

キスが好きな彼女は昔からいつもこの調子だ。

飽きずにいつも。どんな時でも。

そう、まだ僕がファミリーでなかった頃でさえ。

彼女にキスされるその度に、胸の奥がざわついて。

じわじわと、蠢くように広がっていった何か。

今思えば、それこそが全てを引きずり出す呼び水になっていたんじゃないかとさえ思う。




「…まったく」




全部、全部、キミのせい。

内心で肩を竦めると、その身を抱き込んで深く深く唇を合わせた。



僕が食べた毒林檎




責任とらせますよ、ロード

好きにすればぁ?

じゃあ頂きます




end.


2008.6.5






ノアアレン×ロード。
本誌の髪ロング版のアレンがイメージです。
…新たな14番目、とかになったら面白いよね(こらこら)


Title by 『メランコリック*キャンディ』様

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ