D.G-SS.B

□何年越しの恋だろう
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「はぁい、アレン」

「…こんばんは、ロード」

きな臭い空気。散らばり溢れるアクマの残骸の中で、刹那の邂逅。

月をバックにボクは手にしたアンブレラをくるりと回す。

青白い光の中、銀と黒を纏った青年エクソシストが浮かび上がるように佇んで。

凡そどんな感情も窺い知れない、凪いだ青灰色の瞳がこちらを見ている。

キミの双眸。キャンディーよりももっと好きだよ。

最初はいろんなものが綯い交ぜになって揺らいでいたけど、今はもう、静かな静かな夜の海。

初めて会った頃と変わって、背も高くなったし髪も伸びたその姿。

…でもね、大きくなったのは君だけじゃぁないよ。アレン。

長くなった髪を今夜は綺麗に結いあげて。

身を包むのは白を基調にしたドレス。

所々に赤のリボンが華を添えてて。

今日の傘はレロじゃない。

折れそうな細い、レースのアンブレラ。

ドレスと合わせて誂えられたソレ。

こうして二つ揃えて、お披露目するのは初めてだよ?

「お父様」が今度のお茶会用にって作らせたんだ。

あんまりボクの趣味じゃあないケド。なかなか結構、気に入ったから。

一番に見せるのは、絶対アレンにしようって思ったんだよぉ。

お父様でもティッキーでも、千年公でもなくて。もちろん、貴族のバカ息子どもなんて問題外で。

新しい、綺麗なドレス。

見てもらうんだったらアレンがいい。


“ノアとエクソシストは結ばれねぇぞ?”


ねぇ、ティッキー。

そうは言うけれど、だったらこのボクとアレンの繋がりは何なのさ?

見えないけど。

確実に。

繋がってるんだよ、ボク達は。

「結ばれる」って、そもそもナーニ?

四六時中、一緒にいて、いちゃいちゃして。式とかあげて?

誰が決めたの、そんなこと。

ボクにはアレンが特別で。

アレンもボクが特別なんだよ、知ってるんだ。




―どぉ?




そんな気持ちをこめて、夜空を舞台に一回転をしてみれば。

彼の、感情を削いだ瞳が、ふっと細められたような気がした。




何年越しの恋だろう




お互いの命が尽きるまで

ううん、命が尽きても、きっと




end.


2008.6.2



→後書き



Title by 『天使祝詞』様
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