D.G-SS

□大人と子供と爪先立ちと
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「おい」

呼ばれて、軽く引っ張られる感触。

振り返れば、小さくなった神田がそこにいた。

「それ、向こうだぞ」

私の持ってる荷物のことだろう。

頷いて、思わず微笑む。

普段だったら彼は私の肩を軽く叩くなりしている所だろうに、今は届かずちょっと服の裾を摘んで引いているのだ。

紅葉みたいな、小さな手で。

「ーにゃあ」

つい、”可愛いなぁ”と漏らしてしまったら、途端に彼がものすごい顔をした。

他の人には解らない、私の猫語がどうにも神田には理解できるらしい。

その証拠に、荷物を置く私を思い切り睨みつけている。

けれども、いつもなら怖いだろう表情も、やっぱり全然迫力が足らなくて。

むしろ微笑ましいくらいで、どうにも頬が緩む。

「・・・にゃあ(可愛い)」

荷物を下ろし、しゃがんだ体勢のまま彼を見やって呟くと向こうは更に青筋を立てた。

そういえば昔から、可愛いとか綺麗だとか言われるのが大嫌いだったっけ。

でもねぇしょうがないのよ。本当に可愛いんだもの。

小さく微笑っていると、本気で腹を立てたらしい神田にがっしり捕まれた。

「だれが、なんだって?」

思いっきりギリギリ引っ張られるけど、今の彼の体格と力じゃ大して痛くも何ともない。

それがまた可愛らしいやら微笑ましいやらでこみ上げてくる笑いを抑えきれない。

必死に吹き出しそうになるのを堪えて、もう一度呟いた。

「にゃあ(可愛い)」

「……………」

三たび言われた神田は、とことん据わった目つきでこちらを見上げる。

無言で細い腕に体重をかけると、私の頭を引き寄せた。

前屈みになった所へ、触れる。

それは普段の彼から与えられるより、もっとずっと柔らかくて熱いもので。

神田はすぐ何事も無かったかのように密着を解くと、ふん、と鼻を鳴らしてすたすた向こうに行ってしまう。

―その背中を見送りながら、数瞬置いて。

硬直から我に返ると、ものすごい勢いで顔に血が上った。

口元を押さえながらも、たまらずに絶叫する。


「みぎゃー!!!」






それって、いきなり反則よ!









END


2009.6.1










何でもいいから、一矢報いたかったらしい神田さん(笑)

でも、その後自分でも恥ずかしくなって赤くなってるといい(大笑)
(て、ゆーか書いてる方が恥ずかしかったわ!)

奥手純粋培養な二人が好きです。

そんなこんなですが、D.G部屋も1周年、これからもよろしくお願いします。
(深々 ぺこり)

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