D.G-SS

□とある少年エクソシストの憂鬱
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それは、確かに予測はされた災厄だった。

しかし任務を終えて自室に戻ったばかりのエクソシストにとって、それというのはなまじのAKUMAよりも悪魔じみた存在であり。

下手に撃破できない分、ノアなんかよりもある意味性質が悪いとも言えた。





―トントン



………来た。

夢現の中、扉を叩く音を知覚はしたものの最初から無視する気でいるティモシーは身動き一つせず、意識を根底に沈めることに専念した。

寄生型のエクソシストというのは何とも燃費が悪い。

アレンの大食い然り、クロウリーの吸血然り。

ティモシーの場合、食欲もそうではあるが、何より睡眠欲が強い傾向にあったため、この休息は彼にとって正しく生命線でもあったのだが。



―コンコンコン

「ティモ兄、おかえりー」

軽やかな少女の声と。

―ゴンゴン、ガンガン

「ティモ兄ー!」

闊達な少年の声とが。

扉を叩く&蹴る音と四重奏になって、少年エクソシストを襲う。





『……呼んでまっせ、マスター』

「うぐぐぐぐ………」

止むどころか、どんどん音量を上げていくそれらにツキカミが笑っている様な呆れた様な吐息を洩らし、ティモシーはベッドに爪を立てて唸り声をあげた。

「てぃーもー……」

「………っだぁああぁあああ!!! うるせぇえええぇーッ!!!」

ドガン、と扉を蹴破る勢いで、とうとう堪え切れなくなった彼が出ていくと、幼児が二人、ぱぁっと顔を輝かせた。

「いい加減にしろ、お前ら!!!」

騒音を撒き散らしていた黒髪ツインテールの少女と赤毛の少年を力いっぱい怒鳴りつけるが、二人はまったく意に介さず、ますます嬉しそうに笑って寄って来た。

「ティモ兄ーおかえりー」

「ケガとか、無いさ?」

「ねぇよ! つか黙れよ! お前らは!!」

この出迎えが嫌だったから、極力こっそり帰って来たというのに。

誰がバラしたんだとイライラ考えながら、怒りにまかせて叱りつけてやるのだが、

「おかえりなさい、ティモ兄」


―ぎゅぅ


嬉しそうに足にしがみ付いてきた幼子に、彼は怒鳴り声を飲み込まされる。

―聞いちゃいねぇ。

頭を抱えるティモシーとは裏腹に、赤毛の子供が感心したように目を瞬かせた。

「すげぇさ、ユーリ!」

―何が? と振り返り注視してくる二人に対し、子どもは大発見!と言わんばかりの顔で、

「だって、ユーリが『ぎゅっ』ってやると、絶対ティモ兄、静かになるもん」

――な。

その指摘に固まった彼は、そうなの?と見上げてくる少女の視線を受けて再度ブチ切れた。

「………っんなわけねぇだろうが!」

「でも、86回目さ?」

「数えんな! 覚えとくな!! 抹消しろ!!!」

『ハハハ、愛されとるなーマスター』

「てめぇも黙れ」

ふよふよ漂う己のイノセンスに悪態を吐くと、ちょうどそれが居るあたりに向って、少女が片手をあげて笑いかけた。

「ツッキーもおかえり〜」

『おう、ただいま。嬢ちゃん』

「………何、会話してんだよ」

ティモシー以外には見えないし声も伝わらないはずのツキカミがどうして彼女と話してるんだと突っ込めば、

『聞こえてるわけやない思うよ。感覚的なもんやろ』

と笑って返される。

そうしてニコニコと微笑み見つめ合っている一人と一匹(1イノセンス?)にティモシーは心底から脱力した。

もういい。何がどうでもいい。

盛大な溜め息をついて壁に手をつけば、少女が何かに気づいたように首を傾げる。

「ティモ兄、もしかして眠いの?」

「……………」

―だからそう言ってんだろ、とはもはや突っ込まない。労力の無駄なのが分かり切っているからだ。

けれどその沈黙を肯定と取った少女はコクコク頷いて。

「そっか、ごめんね。おねんねなんだね」

……その言われ方はどうにも頂けないが、これらから解放されるならそれはそれで許容できる。

半眼で沈黙する彼を前に、少女は歩み寄ってその腕をクイクイと引っ張った。

もう逆らうのも面倒だった彼が促されるままちょっと身を屈めてやると

「―『おやすみなさい』」


―ちゅっ


「!!!!!!!」

『おー♪』

恐らく母親の真似であろう、その行動にツキカミが歓声を上げて手を叩く。

が、当のティモシーと言えば顔を強張らせたかと思うと、一足飛びで一部始終を目撃していた赤毛の子供を締め上げんばかりにして掴み上げた。

「………ジュニア」

「ん?」

「今のは忘れろ。見なかったことにしろ。忘却の彼方に捨てろ。もしくは墓場まで持って行け」

「…今のって、ユーリがティモ兄のほっぺにキ………」

「だああぁああああぁーッ!!! 言うんじゃねぇ――ッ!!!」

ティモシーは半狂乱で絶叫した。本当にヤバすぎておかしくなりそうだ。

…もしもこれが知られようものならば。

殺される。刻まれる。あの伯父バカに。あの父親バカに。

絞め殺しかねない勢いで子供に他言無用を迫る彼に、何を勘違いしたのか、少女が後ろから飛びついて来た。

「ラビばっかりずるいー。ティモ兄、わたしも抱っこ!」

「抱っこじゃねぇ! くっつくな!!!」





とある少年エクソシストの憂鬱




おい、Jr。 ちなみに俺が帰って来たのお前らに教えたの、誰だ。

へ? ジジだけど

よしわかった。絶対殺す








END
2009.3.20






8割くらい、捏造オリジナルですみません。
ティモシーと、神リナの娘とラビミラの息子です

でも楽しかった!!!!
ティモシー好きだ!

KIYONOさまに捧ぐ!

見てらっしゃるかも分からないのに勝手に、ここから叫んでみる。
(やめれ)






(本館UPに際して)
本誌での、エミリアの決断前に書いたものなので、こんなふうに。

実際にはありえませんね(笑
彼女がついてるもの

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