D.G-SS

□300秒、それが限界
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ぷい、とお互いに音がするくらいの勢いでそっぽを向いた。

切っ掛けは極々些細なことだけど、そこから口論に発展して今に至る。

神田は眉間に皺、リナリーは頬を膨らましてムクレ顔。

むかむか、イライラ。

どうしてあいつはいつもこうなんだ、とか。なんでこう分からず屋なのかしら、とか。

ぐるぐる、カッカして、二人はそれぞれ別の方向に歩き出す。

一歩一歩に怒りと必要以上の力がこもって、足音を大きく響かせた。

それを聞きながら、もう知るもんか口もききたくないと示し合わせたわけでもないのにお互いに決意する。

…けれど。

急激に膨れ上がった感情というのは、山場を越えてしまうと、その後は下降の一途を辿るしかないもので。

「「…………………」」

一歩、一歩。

今度は少しずつ、小さくなっていく足音。

怒りを湛えていた表情が、片や気まずげに、片や不安げに曇っていく。

…泣いていたらどうしよう、とか。…本気で嫌われちゃったかも、とか。

婦長や兄の元で泣くならいいが、もし一人で膝を抱えて押し殺すように咽ぶのだとしたら。

もうどんなに頼んでも一緒に遊んだり寝たりしてくれなくなってしまうとしたら。

「「…………………………」」

渦巻く思いは、進む足を鈍らせ、目線を床にと落とさせる。

やがて完全に止まってしまった己の足を見詰めながら暫し。

それはちょうど、互いの背中が見えなくなるギリギリの位置で。

パッと顔を上げた二人は同時に振り返って、口を開きかけた。


「「―あ、」」




300秒、それが限界





…何だよ

…何よ

…お前が先言え

…神田が先だもん







END.



2008.12.21








何処まで仲がいいんでしょう、この二人(生暖かい目)


表題は「空想アリア」様より拝借

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