D.G-SS
□愛してる愛してる愛してる!
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宴は潰えて沈黙落ちて。
黒の教団親睦パーティー、もとい『コムイ大暴走。リナリーの彼氏は誰だ!サバイバルゲーム』が一応の終結をみて暫く。
教団のほとんどが主催者コムイを追いかけ地下スペースで大混戦を繰り広げている頃。
一部例外的に、リナリーは階上の神田の部屋の前に居た。
「ジェリー、手伝ってくれてありがとう」
「いいのよ、気にしなくて〜」
二人で意識のない神田の体を支えて、扉を開ける。
コムイに何かを飲まされた彼は会場で昏倒していて、さすがにこのまま放置してはおけないと連れてきたのだ。
部屋に入った所で当の本人がふと、目を開ける。
「………」
「神田、大丈夫?」
目が覚めたのかと顔をのぞき込むと、寝ぼけたような瞳が向けられて重心が傾ぐ。
「え、きゃ!?」
急に体重を預けられたリナリーは支えきれずによろけて倒れ込んだ。
背中をついた先はベッドの上で事なきを得たが、完全に圧し掛かられる格好になって悲鳴を上げる。
「ちょ、ちょっと神田!」
「あらあら」
必死にもがいて体を起こしたものの、膝の上を彼の頭に占領されてしまってそれ以上動きようがなくなった。
「もぅ…」
「ま、いいじゃないのよ」
困ってむくれるリナリーにジェリーがくすくす笑う。
「でもコムたんも迂闊よね〜。リナリーが誰を好きかなんて、よく見てれば分かるのに」
「ジェリー!」
思わず大声を上げてしまって、慌てて口元を押さえる。
起こしてしまっただろうかと膝の上の相手を窺えば、規則正しい寝息が答えで。
…いや、起きてくれた方が良いといえば良いんだけれど。
「神田ちゃんが起きたら、食堂にいらっしゃいな」
ジェリーが、微笑ましい2人を見守る母親の顔で笑う。
「酔いざましのお茶でも淹れてあげるから」
「ありがとう」
「どういたしまして」
ひらひらと手を振って出て行く相手にリナリーは笑みを返して礼を言った。
扉の閉まる音を区切りに、部屋は沈黙で満ちて。
小さな寝息だけを感じながら、リナリーは軽く嘆息する。
(後で皆に謝らなきゃ)
兄のやらかした騒動を思い起こすに付け、頭痛がする。
しかも原因が自分なのだから申し訳なさも一塩だ。
インタビューなんて答えない方がよかっただろうか。
出来るだけあたりさわりのない事を言ったつもりだったのに。
もう『好みのタイプ』なんて聞かれてもノーコメントを貫いた方がいいかもしれない。
苦笑して、内心で独りごちる。
(…嘘は、言ってないんだけど)
お菓子作りに凝ってるから、甘い物が好きでたくさん食べてくれる人がいい、というのは本音。
ポーカーとか強い人に憧れる、というのも本当。
リナリーは小さく笑って膝の上に視線を落とす。
…たまに憎たらしくなるくらい、さらさらの綺麗な髪が太ももをくすぐる。
それを撫でながら目を細めて。
(一応、持っていけば食べてくれるよね)
甘い物はキライだから、ひどい顰めっ面だけど。
(…ポーカーは、ルールから教えなきゃいけないみたいね)
ゲームなんて、ほとんどした事なかったし。
(起きたら誘ってみようかしら?)
…理想は理想として、本当のことだけど。
でもね。
好きになったら、そのひとのすべてを受け入れたいです
リナリーは幸せそうに笑うと、彼の額に小さなキスを落とした。
愛してる愛してる愛してる!
ねぇ、どうしてなのかしら
あなたじゃなきゃ駄目なの
END.
『メルト』:リナリー×ヘタレな神田を愛でよう企画!さまへ参加させて頂きました。
神田を大好きなリナリーが大好物な私にはヨダレものの企画でございました。
仲間に加えて頂き、とても嬉しかったです。ありがとうございます!
最後になりましたが、D灰小説本ネタですみません。未読の方は是非!