D.G-SS
□もう幼馴染みには戻れない
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南仏の穏やかな街で。
2つの小さな人影が石畳の上を駆けていく。
白い街並みに映える黒いブルネットの髪が靡いて。
そのうち、後ろを走っていた少女がよろけて蹈鞴を踏む。転ぶのをなんとか避けて踏みとどまり、顔を上げる頃には先を行く少年との間にずいぶんな距離。
少年の方も気がついたのか、走るのを止めて立ち止まる。
けれど止まっただけで、迎えに行ってやろうとはしない。振り返りもしない。
そんな背中を認めて、少女は潤みかけた瞳をこすり、一歩踏み出した。
一歩、二歩、三歩とテンポを上げて走り出す。
やがて追いついてきた彼女に少年は無言で手を伸べる。すると少女は心底嬉しそうに笑って、その手を握った。
そして男の子はちょっとゆっくり目に。女の子は心持ち早めに足を動かして。二人、歩調を合わせ遠ざかっていく。
その様子を少し離れた所から眺めていたリナリーは辛抱たまらずに軽くふきだした。
任務のため、神田とやってきた街でこんな光景を目の当たりにするなんて。
「…何、笑ってんだ」
隣に佇む彼が寄こした一瞥を彼女は悪戯っぽい瞳で受ける。
「ちょっとね」
くすくす笑いながらの意味深な返答に舌打ちを漏らす神田。そんな彼を振り仰いで、リナリーは言う。
「何だか懐かしくなったの」
いつも置いて行かれたくなくて、一生懸命付いていった自分と。
ぶっきらぼうで、決して甘やかさないけど、本当はどこまでも優しいあなたと。
思い出したのよ。二人で必死に、幼い時を重ねていたことを。
「ねぇ神田」
「あ?」
「手、繋ごう?」
あの子たちみたいに。あの頃のように。
いつも、そうしてたでしょう?
楽しそうな無邪気な笑みで、リナリーは甘えるように手を伸べるけれど。
「断る」
当の彼と言えば、それこそ子供のように眉根を寄せてそっぽを向いてしまい。
そんな相手に彼女はまた笑ってしまった。
もう幼馴染みには戻れない
けれどそこにはもっとずっと深い繋がり
じゃあ恋人繋ぎ?
なおさら出来るか!
end.
2008.7.24
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でも帰りの汽車の中(個室)では内緒で手繋いでるだろう二人が愛しいです
in 『絶対無敵LOVERS!!』さま
参加させて頂きましてどうもありがとうございました!