D.G B-SS
□落ちる滴は何色ですか
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“―…ロード”
呼ぶ声がしたから。
窓辺で空を見つめていた身を翻して、『世界』を開く。
闇と光と。時間と空間。
現(うつつ)と幻(まほろば)入り交じる僕だけの世界を通過して、降り立った。
着いた先は薄暗闇の中だった。
今にも雨の降りそうな空。
古い街並みを背にして、アレンが佇んでいた。
僕が一歩近づくと、ようやく顔を上げてニコリと微笑んだ。
…儚く消え入りそうな笑み。
死の静寂に包まれた街へ融けていきそうな。
…そう、きっとこの街は死んだのだろう。
彼はイノセンス破壊の仕事を任されていたはずだった。
いつも隙のない装いは所々乱れて、黒ずんでいる。
明るい場所で見たならば、それはもっと赤を感じさせたのだろうけど。
「…ロード」
柔らかな微笑を張り付かせたままで歩み寄ってくるアレン。
その姿は強烈な違和感を持ってそこにあった。
どうしたというのだろう。
彼はこちらへ来てからも、人間やエクソシストを傷つけることは断固としてしなかったのに。
……ぽつり。
ついに空が水滴を溢し始めて。
二人だけが佇む石畳に染みを作り出す。
「ただいま」
そういって、アレンはふわりと僕の肩に手を置き、そのまま額をも肩口に預けてきた。
無意識に握っていたのか、左手にあった何かが滑り落ちて転がっていく。
それはやがてLenalee=Leeという刻み字をこちらに見せる角度で止まった。
……ぽつり。
降り出した雨が、頬に弾けて…伝っていった。
「…ただいま、ロード」
彼が繰り返すから、その身に腕を回して応えた。
「おかえり。アレン」
泣き出した空は、灰色の世界を広く静かに包んでいった。
落ちる滴は何色ですか?
end.
2008.10.5
アレリナではありません。強いていうなら、母親と決別した子供、と思って頂ければ。
ああアレキャメ好きです。
コミケ、絶対マンガ本出します!
Title by 『メランコリック*キャンディ』様