D.G-SS TitleW2

□キスの法則
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Auf die Hande kust die Achtung,
Freundschaft auf die offne Stirn,
Auf die Wange Wohlgefallen,
Sel'ge Liebe auf den Mund;
Aufs geschlosne Aug' die Sehnsucht,
In die hohle Hand Verlangen,
Arm und Nacken die Begierde,
Ubrall sonst die Raserei.

Franz Grillparzer "Kus"(1819)

手なら尊敬。

額なら友情。

頬なら厚意。

唇なら愛情。

瞼なら憧れ。

掌なら懇願。

腕と首なら欲望。

それ以外は、狂気の沙汰。

フランツ・グリルパルツァー
「接吻」




ふと、そんな一節が頭の片隅をよぎった。

読んでいた本から顔をあげて、隣をみやる。

楽な部屋着のミランダは、さきほどから棒を使って毛糸と格闘中。

柔らかなウェーブを持つ髪が、時折肩の上を滑ってふわふわ揺れる。

近頃、編み物に凝っている彼女。

リナリーと二人で始めた趣味で、これが結構楽しいらしい。

地道にひたすらひたすら編んでいく所が自分の性に合っているようだと、笑って言っていた。

けれども元々、ちょっと不器用で要領の悪いところがあるから、編み直しになっては凹んだりするんだけど。

そこはリナリーや婦長たちと出来具合を見せ合い、アドバイスしてもらったり、逆にしたりするのを励みにしているらしい。

上手に出来たら、俺に着せたい、という目標もやる気に一役かっているようで。

だからこうして、大人しく邪魔しないでいるんだけど。

「…………」

本を閉じて、静かに顔を覗き込む。


手なら尊敬。

額なら友情。



彼女の綺麗な瞳が、真剣に自らの手元を見つめている。

一生懸命に頑張っている所。網目の状態に一喜一憂する所。可愛いし、見てて嫌いじゃないんだけど。


頬なら厚意。

唇なら愛情。



「―ミランダ」

呼べば、無防備に顔をあげて首を傾げる。

そこは、もう。吐息の届くキョリ。

ふわりと、でもしっかりと愛情の証を重ねて。


瞼なら憧れ。

掌なら懇願。



頬を染めて少し逃げ腰になる彼女の手を取り、掌に唇を寄せて。

それもわざわざ聞かせるような、リップ音で。


「―ミランダ」



ねぇ、構って?



そんな翠の視線で、逃げられないように捕まえに行く。


腕と首なら欲望。

それ以外は、狂気の沙汰。




寄せる唇の中。

小さく、カリ…ッ、と。

その桜色の爪先に歯を立てた。



END.




・・・・・・・・
素敵お題、どうもありがとうございました!
「キスの法則」でSS書いちゃおう!!』より


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