D.G-SS TitleW2
□僕のてのひらに降りてきたもの
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ふ、と漏らした息が白い。
身に纏うコートも真っ白なファーがふわふわと動きに沿う。
ひらり、視界を上から下へ過ぎったものに気がついて顔をあげた。
灰色の空。マーブルの雲。…銀色の空気。
てのひらを差し出せば、誘われるように降りてくるものがある。
あーあ、と声を洩らして溜め息をついて。
踵を返した時。
「…ロード!!」
銀色の空気が震える。
殊更ゆっくり振り返れば、息せき切って走り込んでくる姿がある。
必死の形相で、頬を紅潮させて、…でも、僕を認めて嬉しそうで。
あーあ、ひどい格好。何があったの? どれだけ無理して急いで来たの。
髪もぼさぼさ、コートは半脱げ、ボタンも掛け違えてるじゃないさ。
レディを迎えにくる紳士じゃないね、そんなんじゃあ。
でもねぇしょうがないねぇ。許してあげるよ、アレン。
多分、僕の顔も今、嬉しそうに笑っちゃってるだろうから。
end
2009.10.14
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