長編[ルイ]
□第4章
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テミスト「お待ちしていました・・・どうか今一度、記憶の糸をお紡ぎください・・・」
[あんまり血を摂り過ぎちゃだめだよ。人間ってヤツはすぐに死ぬんだから]
[本当に大丈夫なのか、人間をさらってくるなんて。シルヴァの犬どもにバレたりでもしたら・・・]
[連中は、過剰な血税で私腹を肥やしてるんだ。アタシ達だって・・・!ええい、うるさい子だね!その耳障りな歌をやめな・・・!]
ジャック[大丈夫だったか・・・?・・・話せないのか?ここにいた連中に喉を潰されたか・・・もう大丈夫だ・・・・・・お前の安全は、俺が保障する]
ジャック[・・・手紙を読んだ。残念だが、お前の要望には応えられない。吸血鬼になったところで、行き着く先に未来はない。命を無駄にするな。過去の事は忘れて、この施設で余生を過ごせ]
エヴァ[過去を忘れる事なんて、私には無理・・・あの人の悲しそうな目を見るたびに・・・心が痛くなる。どうして自分だけが、こんな所にいるのか・・・あの人のために、私に何ができるのか・・・]
[君が、検査に申し出てくれて、本当に助かったよ。これほどの高い適合率は、君が初めてだ。ただし・・・この検査は、結果を確定付けるものではない。下手をすれば、自分自身を失う事になる・・・それでも、いいのかな?・・・決意は固い、か。それだけの意志があれば、きっと良い方向に導いてくれるはずだ]
エヴァ[ジャック・・・!]
ジャック[お前、声が・・・まさか、新たな継承者というのは・・・!]
エヴァ[貴方に、ずっと伝えたかったことがあるの。ありがとう・・・私を救ってくれて]
エヴァ[こんな方法でしか、神骸の封印を維持できないなんて・・・]
ジャック[神骸の暴走を許せば、より多くの犠牲が生まれる・・・他に方法はない。耐えられないのなら、ついてくるな]
ジャック[複数の神骸を取り込めるのか・・・?お前の歌で、暴走を鎮める事で・・・]
エヴァ[少し苦しいけれど・・・大丈夫。貴方が抱えてきた痛みに比べれば、これくらい・・・]
ジャック[ここなら安全だ。少し休もう]
エヴァ[ごめんなさい・・・私のせいで・・・]
ジャック[気にするな・・・たまには、ゆっくり夜空を見上げるのも悪くない。それに・・・]
エヴァ[それに・・・?]
ジャック[・・・・・・いつでもどこででも、呑気に眠っていたような女も・・・過去にいたからな]
エヴァ[そう言った彼は、今まで見た中で一番悲しそうな目をしていた。遠い夜空を見上げて、そのどこかに彼の言う彼女を、見ているような・・・]
ようやく、ジャックに追い付いた
ジャック「エヴァ・・・!」
静かに佇む堕鬼に、後ろから抱き締められるようにしてそこにいる、エヴァの姿
ジャックは、その正面に立っている
ジャック「よく、耐えてくれた・・・安心しろ・・・お前の神骸は、俺が代わりに・・・」
そう言って片手剣を構える彼を見て、突風のようにエマが駆け出した
今回ばかりは、誰も彼女を止めようとはしなかった
エヴァに剣を向けるジャックは、その瞳から一筋の涙をこぼす
剣を彼女に突き立てようとしたその手は、後ろから抱き付くように掴んできた誰かに止められる
エマだ
銃剣は、後方にいるルイ達のそばに落とされている
体を使って全力で、無我夢中で、ジャックを止めに行ったのだ
ジャック「止めるな、俺は・・・!」
エマ「止めるに決まってる!繰り返させない!!」
ジャック「!?」
怒鳴るように、顔を上げてエマが叫ぶ
初めて見る彼女の姿に、ジャックの思考が一瞬だが停止した
その時だった、堕鬼が動き出したのは
気付いたジャックが、体ごと振り返りながらエマに左腕を回し、彼女を抱えて後退する
エヴァの姿を見せたままの堕鬼が、こちらに敵意を向けてくる
ルイ「エマ!」
ルイは名前を呼びながら銃剣を足に引っ掛けて拾い上げ、彼女に投げ渡す
目の前の堕鬼から視線はそらさず、右手を後ろに向けて伸ばし掴んだ
エマ「殺すのは絶対に駄目。でも大人しくさせて、神骸だけにする。援護は任されてあげるから、前衛に入って」
ジャック「・・・いいだろう」
静かな口調で応えたジャックは、銃剣を構えるエマの隣で剣の柄を握り締めた
堕鬼を倒した後に残った、巨大な血英−−神骸
その正面に、エマとジャックが立つ
ジャック「・・・終わった、な」
ルイ「いいや、まだ終わりじゃない」
ヤクモ「会いに行こうぜ、もう一度」
ジャック「何をバカな事を・・・」
こちらに向けられたミアの視線に、エマが頷いて見せる
ジャック「そんな事ができるわけ・・・」
先程とは違い、控えめだが力を込めて腕が握られ、ジャックはその人物に顔を向ける
エマ「・・・いいから、黙って来なさい」
そのまま彼を引っ張り、神骸に手を伸ばすエマ
放たれた光に、5人は飲み込まれた