長編[ルイ]

□第3章
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パンッ



ミア「あ・・・」



エマ「・・・あんまり、先行し過ぎないで。射程距離を伸ばしたっていっても、フォローできる範囲にも限界がある」



ミア「ごめんなさい・・・」



エマ「・・・・・・謝るのは、私ね。焦る気持ちもわかる。それに・・・」



ミア「ストップ、そこまで」



エマ「え?」



ミア「ニコラの事を謝るのなら、それは要らないから」



エマ「・・・」



ミア「貴方のせいだとは思わないし、ニコラが自分で決めた事だと思うから。だから謝罪なんか要らない。そうやって、貴方ひとりでなんでも抱え込まないで・・・お願い」



エマ「・・・ん」



ふたりのやり取りを、少し離れた場所から見ているヤクモとルイ



まるで妹に叱られる姉を見ている気分だ



ヤクモ「エマの悪い癖だな」



ルイ「だが、彼女の気持ちもわからなくはない」



ヤクモ「あー・・・そういや、ふたりは似た者同士だもんな」



ルイ「・・・そうなのか?」



ヤクモ「自覚なしかよ」



ミア「行きましょう」



そう言ってこちらに歩いて来たミア



彼女の顔を、ヤクモがじっと見つめる



ミア「なに?」



ヤクモ「一発叩くんじゃなかったか?」



ミア「そう思ってたけど・・・あんな、傷付いたみたいな顔してるエマを叩くなんて・・・やっぱり無理」



ヤクモ「・・・」



ルイの時もそうだった



まるで彼女自身が傷付けられたような、そんな顔をするエマ



実際、彼女の心は傷付いているのかもしれない



こんなはずではなかった、と



だがそれはおそらく、みんなが思っている事だ



彼女ひとりが背負うべきものではない



それを伝えたいと思うものの、なかなかうまく伝わらない



ヤクモ「どうしたもんか・・・」




















キュレ-ネ「お待ちしていました・・・どうか今一度、記憶の糸をお紡ぎください・・・」






ミア[ニコラ、何してるの?]



ニコラ[剣術の練習!僕は騎士(ナイト)になるんだ!]



ミア[へぇ、面白そう。じゃあ、私が相手してあげる]



ニコラ[えー!ミアは強いからなぁ]






ミア[この悪ガキ共!向こうへ行きなさい!ニコラ、大丈夫?]



ニコラ[う、うん・・・大丈夫だよ。でも・・・またミアに助けられちゃった・・・]






ニコラ[ミア、僕もっと強くなるよ!強くなって、いつか僕がミアを守るんだ・・・!]






ミア[何よこれ・・・・・・一体何が起きているの?]



ニコラ[ミア、危ないっ!]



ミア[きゃあ!!]






ニコラ[ここは・・・僕は・・・]



[君は蘇ったんだ・・・これはとてもラッキーな事なんだよ]



ニコラ[ミ、ミアは?]



[大丈夫・・・我々がきっと蘇らせてみせる、約束するよ・・・]






[ニコラの検査結果ですが。やはり継承者の適正があったようです]



ニコラ[・・・継承者?」



[しかし、数値的にさほど高くないな・・・まずまずといったところか・・・]



[はい、あとは本人次第といったところですね・・・]






エマ「・・・・・・行こう。ニコラの所に」



ミア「うん!」



その先にいたのは、鹿のようなトナカイのような、大きなツノを持つ獣だった



片膝を付き、ひれ伏すようにそこにいる



ルイ「あれが・・・」



ヤクモ「継承者・・・いや・・・」



ミア「ニコラ・・・」



ニコラ「ミア・・・」



声が聞こえた後ろを振り返ると、最初に会った時と同じ、幼い子供の姿をしたニコラがいた



走り出したニコラは、獣と化した自身に飛び掛かる



が、簡単に振り払われてしまう



それでも、負けじと立ち上がる



ニコラ「負けないよ・・・!」



エマ「!」



ミア「ニコラ!!」



再度飛び掛かり、振り払われる



結晶のように弾けて消えてしまったが、今度は4人のニコラが現れる



ニコラ「僕が・・・ミアを守るんだぁ・・・!」



飛び掛かった4人のニコラも振り払われ、結晶のように弾けて消えた



ルイ「あの子は、ひとりきりで。暴走する自分と戦い続けていたのか・・・」



ヤクモ「なんて奴だ・・・」



エマ「・・・・・・」



あんな小さな子が、今も戦い続けている



その事実に、エマは顔を俯かせる



どうすればいいのか、わからなくて



悩んで、苦しくて、何もかも投げ出そうかとも思った



だが・・・



ミア「今まで、気付かなくてごめん・・・今、お姉ちゃんが・・・!行くからッ!!」



エマ「・・・・・・必ず、会わせるから」



強い口調で呟き、顔を上げたエマ



その瞳にはもう、迷いはなかった



真っ直ぐ、睨むような鋭い視線を獣に向ける



先に飛び出したミア



その後ろに続くルイとヤクモ



彼らと共に戦うため、銃剣を強く握り締め、雪原を強く蹴った
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