長編[ルイ]

□第2章
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イオ「皆さん、もうお休みになられたようです」



エマ「そう」



外の景色を眺めているイオに近付けば、そう切り出された



エマは先程、ミアの肩を借りて眠ったせいか、妙に目が冴えてしまったのだ



イオ「どこか・・・明るくなったような気がします。空気が、というのでしょうか・・・ここに初めて来た時よりも、ずっと・・・どんな困難に阻まれても、貴方には、それを乗り越えていく力があるようです・・・不思議な人ですね、貴方は」



エマ「・・・何かあった?」



イオ「・・・最近、わからない事があるのです。私も、皆さんと同じように・・・叶う事ならば、いつも貴方と共にいたい。貴方と一緒に、何かを変えていきたい・・・そんな風に思う事があるのです。でも、それは無理な事・・・戦う力を持たない私では、貴方を危険に晒してしまう。私は、私がやるべき事を、やるべきままに・・・そうするべきだと思っています」



エマ「・・・」



イオ「でも、わからないのです。体の内側から込み上げてくるような、この不思議な気持ちが。一体なんなのか・・・」



エマ「切なかったり、もどかしかったり、羨ましかったり・・・色々あるけど、この中にはある?」



イオ「どうなのでしょう・・・わかりません。何かに突き動かされるようなこの気持ちは、一体・・・」



エマ「・・・・・・ならきっと、それはあなたが自分で見つけないと、意味のない答えなのかもしれない」



イオ「私が、自分で・・・?」



エマ「たぶん、だけれど」




















エマ「・・・あった」



旧市街地に向かい、女神像の仕掛けを動かした



すると、上がったままだったハシゴが降り、先へ進めるようになった



その先で見つけたのは、枯れた血涙の泉だった



エマの血で活性化させて地脈の流れを調べると、今度こそ先へと続いていた



ルイ「やはり・・・今までの泉は、全てここに繋がっていたのか・・・」



ヤクモ「大方、エマの予想通りだった、ってわけか」



ルイ「・・・行こう。この先に、きっと血涙の源流がある」



洞窟を抜け、その先にあったのは



エマ「白い、聖堂・・・?」



ミア「広い・・・」



ヤクモ「これはまた、探索には骨が折れそうだな」



エマ「・・・」



ルイ「どうした?」



エマ「・・・殺気と、嫌な気配を感じる。いる」



ヤクモ「いるってまさか・・・堕鬼(ロスト)か?」



ミア「ここからでもわかるの?」



エマ「ざっくりと、だけど」



ルイ「本当に頼もしいな。行こう」



エマ「ん」










エマ「・・・」



ルイ「・・・」



ヤクモ「・・・移動する度に掴み直してるよな、お前」



ミア「確かに」



堕鬼を倒しながら先に進んでいたのだが、進む度にルイの牙装を掴むエマ



ヤクモ「歩き難くないか?」



ルイ「まあ、そうなんだが・・・」



エマ「色調が同じ、道も似たような感じ・・・絶対、二度と帰れなくなる」



ヤクモ「大袈裟だな。まあ、迷子にならないようにしてる努力は認めるが・・・」



[ねぇ、またあの子よ]



ヤクモ「ん?」



[さすが、エレシュキガルだな]



[エマの腕は本物だな]



ミア「今、エマって・・・?」



ヤクモ「ああ、聞こえた」



ルイ「まさか・・・!」



エマ[・・・全く。弱い男共・・・戦場なんて来ないで、奥で茶でも啜ってろ]



ヤクモ「・・・・・・エマだな」



ミア「エマね」



ルイ「エマだ」



エマ「・・・・・・」



息を飲み、躊躇いながらも手を伸ばす



血英に触れると、全員が飲み込まれていった・・・






シルヴァ[クイーンの放つ瘴気に飲まれ、多くの仲間が堕鬼に堕ち、ヤツの傀儡と成り果ててしまった。かつての仲間と戦った奴もいるだろう・・・それでもよく・・・ここまで辿り着いてくれた・・・俺はお前達を誇りに思う。思い出せ!愛する者達の顔を、温もりを!そして灰となって消えていった仲間達を!グレゴリオ・シルヴァの名のもとにここに誓う!この戦いが終わった時、立っているのは・・・俺達だ!共に戦い、この地獄を終わらせようじゃねぇか!]






[ねぇ、またあの子よ]



[いっつも同じ顔して・・・本当、何考えてるのかわからないわ]



[どうしてあんな子、色んな分隊に回してるのかしら]



エマ[・・・]






[堕鬼を倒しても、顔色ひとつ変わらずか・・・鉄仮面だよな、あの新入り]



[さすが、エレシュキガルだな]



[なんだよ、それ?]



[まだ国ってのがあった昔の話だよ。どこかの国の神話ってのに出てくる、女神のひとりだそうだ]



[女神?あれが?]



[エレシュキガルってのは、冥界の女主人とも言われていた女神だ。死神って言うよりは、エマはこっちだろ?]



[冥界の女神・エレシュキガルか・・・確かに、そっちの方がしっくりくるな]






[すげぇ・・・この距離で、堕鬼の頭を一撃かよ]



[エマの腕は本物だな]



[他の分隊に引っ張られるのも、無理ないわね]



[さすがだな、エマ!]



エマ[・・・別に]






[おい、お前新入りだろ!?上官に手をあげて、タダで済むと・・・ぐわっ!]



エマ[権力を笠に着て威張り散らすだけのあなた方に、一体何ができると?]



[んだと!?うっ!]



エマ[・・・全く。弱い男共・・・戦場なんて来ないで、奥で茶でも啜ってろ]



[あ、あの・・・ありがとう]



エマ[別に。気に入らなかったから黙らせた・・・それだけ]



[またか?これで何回目だよ、上官への暴行]



[でも、エマにやられてる人達、みんなロクでもない上司だから。正直ちょっとスカッとするわ]






エマ[さっきの腹癒せ?・・・寝込みを襲うのが趣味だったなんて、驚き]



[くっ・・・!]



エマ[二度と近付くな]






エマ[ここには、もう来るなって言ったはずだけど?]



[だって、エマ姉ちゃんのそれ、また欲しかったから]



[エマ姉ちゃんも甘いの好きなんだね!]



エマ[そ、そんなんじゃない!]



[エマ姉が怒った!]



[怒った怒った!]



エマ[・・・・・・早くこれ持って、帰りなさい。危ないから]



[わぁーい!ありがとう、エマ姉ちゃん!みんな、行こうぜ!]



エマ[・・・]
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