長編[ルイ]

□第1章
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ひとりになり、少し奥まで進んだエマ



その先で、人影を見つける



エマ「堕鬼(ロスト)、じゃない・・・?」



どうやらただの吸血鬼(レヴナント)のようだ



静かに背後へと回り、銃剣の切っ先を突き付けた



エマ「動くな」



「お前も探索者か・・・どうやら一人みたいだな」



エマ「それが何?」



「・・・俺も今回は一人で探索を行なっていたのだが。この先に進むのに、連れ合いが欲しかった所だ。どうだろう、今回の探索が終わるまででもいい。同行しないか?」



エマ「・・・」



「騙して襲うような真似はしない、安心してくれ。こんな瘴気が濃く、堕鬼がうろつく場所で争ったりしないさ」



エマ「いいわ」



「それは助かる。だが、随分とあっさり決めたな?」



エマ「私を生かすメリットはあっても、私をここで殺すメリットがない。そう判断したから」



「・・・?」



エマ「連れ合いが欲しかったのは、本当だと思う。あなたからは、殺気を感じない。嫌な気配も感じない。私を生かしたまま連れ歩けば、最悪の場合は囮として使える。自分が逃げるために。しないとは思うけど、あなたは。でも、どちらにせよ、あなたが私を殺すメリットがない。それだけ」



「・・・勘、というやつか。わかった。短い間だが、よろしく頼む」



だが少し進んだ所で早速、堕鬼の群れに出会す



「待ち伏せか・・・?」



エマ「連中にそんな頭があるとは思えない」



「・・・あの、銃剣を使う奴が厄介だな」



エマ「・・・・・・2匹はいる・・・突っ込むの、任せてもいい?」



「?」



エマ「近接を先に叩いて欲しい。遠距離を叩いてる最中に来られても、面倒なだけだから」



「だが、確実に的になるぞ?」



エマ「ちゃんとバックアップはしてあげる」



「・・・」



エマ「合図で飛び出して。3・・・2・・・1・・・GO!」



彼が飛び出すのと同時に、エマもその場で銃剣を構えた



堕鬼が彼に気付いて攻撃を仕掛ける中、銃剣を持った堕鬼が発砲する



それを見たエマは、素早く引き金を引いた



「!?」



1発も、彼には当たらなかった



エマの銃弾により、堕鬼の銃弾を弾いているからだ



周りの堕鬼を倒すと、彼とエマとで銃剣を持つ堕鬼を仕留める



「・・・良い腕だな」



エマ「どうも」



「だが、あのまま俺を捨て駒にする選択も、お前にはあった。なぜそうしなかった?」



エマ「そんな事をするメリットがない。それに、ちゃんとバックアップはしてあげるって、そう言ったはずだけど」



「・・・そうだったな」



側にあった梯子を登り、奥へと進む



するとその先には光が差し込み、少し開けた場所があった



エマ「血涙の、木・・・」



だが、血涙が実っている様子はない



その時、エマは少女のやった事を思い出した



自らの手に傷を付けると、血を木に垂らした



すると泉が活性化し、血涙がその実を実らせた



「これは、まさか・・・」



エマ「?」



「後で事情を聞かせてもらおうか」



エマ「・・・?答えられる事なら、構わないけど」










「地上に戻ってきたか・・・」



エマ「ハァ・・・」



やっとか、と言いたそうなため息を吐く



「よし、地上の光だ」



エマ「オリバー・・・?」



ただならぬ状況と、その場にいるオリバーに対して、嫌な予感がした



駆け寄ったエマに、オリバーが振り向き様に攻撃してきた



だがオリバーの武器は、彼によって受け流された



エマ「ッ・・・」



「堕鬼に堕ちた奴は、二度と元には戻らない。迷いは捨てろ」



オリバーの近くで倒れている少女を見つけ、エマは銃剣を強く握り直し、構えた



「援護を頼む!」



エマ「了解」










堕鬼に堕ちてしまったオリバーを倒し、少しだけその場に立ち尽くすエマ



だがすぐに切り替えると、少女に駆け寄った



少女「ん・・・」



目を覚ました少女が、体を起こす



「無事だったか」



少女が無事だった事に安堵すると、彼が更に口を開く



「ところで、お前達は・・・」



[・・・吸血鬼に定められた義務だ。例外はない]



声が聞こえた方を見ると、そこには赤い結晶のような物が落ちていた



「血英か・・・そいつには触らない方が良い。触れた者に侵喰し、堕鬼に変える危険な石だ。囁きに耳を貸すな」



オリバー[誰かが、犠牲になるしかないんだ・・・血涙がなければ、俺達は・・・!]



エマ「オリバー・・・?」



この時、一瞬、エマの両眼が赤く光った気がした



だが彼は、それに気付かない



「その子が落ち着いたら、ここを離れよう」



そう言った彼の言葉は耳に入らず、エマの右手が血英に伸ばされる



「待て、何を・・・!」



触れた血英が、手に突き刺さる



「手を離せ!飲み込まれるぞ!」



少女「大丈夫・・・貴方なら」



「くぅっ・・・!これは・・・ッ!」



眩い光が、3人を包み込んだ−−
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