長編[ソーマ]

□2071年、始動
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テーラパーカーのフードを深く被ったシオン


下はスカートではなく、リーパースラックスにして動き易くした


そんな彼女の目の前に立つコウタは、どう話したものかと悩んでいた


自室に戻ろうとした彼は、ちょうど部屋から出て来た彼女と鉢合わせたのだが・・・


声をかけた途端、勢いよくフードを被ってしまったシオン


一緒にいる事すら気になるのか、先程から眼鏡のレンズの奥で、黒い瞳が左右に何度か揺れていた


まるで、怯えているかのように・・・


コウタ「あ、あのさ」


シオン「?」


コウタ「自分の神機、もう見に行ったか?」


シオン「え?」


コウタ「・・・見に行こうぜ!」


パーカーの裾を握り締めている、シオンの両手


左手を掴むと、楽しそうな笑みを見せて駆け出すコウタ


引っ張られるまま走り出すシオンは、彼について行くしかなかった










2人がやって来たのは、神機保管庫


コウタ「リッカさん!」


リッカ「あれ、コウタくん?さっき出てったばっかじゃない」


コウタ「こいつのアレ、見せてやろうと思ってさ」


シオン「ど、どうも・・・」


リッカ「整備室主任の、楠リッカです。よろしく」


シオン「来栖シオン、です」


リッカ「ちょうど最終調整に入るとこだったんだ」


シオン「これ・・・」


リッカ「そう、君の神機だ。ちょうど良かった、聞いておきたい事があったんだ」


シオン「え?」


リッカ「君の適合率はサカキ博士からも聞いてたけど、本当に高くてびっくりしたよ。でね、この適合率の高さなら大丈夫だろうって事で、ブレード型とポール型が選べるんだけど・・・どうする?」


シオン「・・・・・・は?」


リッカ「あ、ごめんごめん。いきなり過ぎたね。えっとね、神機は通常、近接型と遠距離型があるんだ。でも君の場合、つまりは新型神機の場合、この両方を使う事ができる。遠距離型の場合はスナイパー、アサルト、ブラストの3種類の銃身があって、君はスナイパーとの相性が良さそうだから銃身はこれに決定したんだけど・・・近接型は君との相性が良いタイプが3種類もあって、ちょっと困ってるんだ」


シオン「は、はぁ・・・」


リッカ「近接型の神機は、ブレード型神機とポール型神機の2つに分けられる。ブレード型はショート、ロング、バスターの3種類。ポール型はチャージスピア、ブーストハンマー、ヴァリアントサイズの3種類。中でも君と相性が良さそうなのは、ブレード型のショート、ポール型のチャージスピアとヴァリアントサイズ。ポール型は今のところ、欧州支部で使われてるんだ。もし君がポール型を望むなら、この支部では君が第一号の試験運用者になる。ポール型は制御機構がすごく複雑で、ただでさえ神機の暴走を引き起こし易い。その上、試験的に欧州から輸入してるパーツは、人工コアとかなり相性が悪い。だからもし使うなら、経過観察させてほしいんだ。勿論すぐに換えてもらってもいいし、そのまま使ってもらっても大丈夫。これは、君の適合率が高いからこそできる話なんだって事だけは、覚えておいて」


シオン「・・・・・・わかりました。いいですよ、試験運用しても。ヴァリアントサイズでお願いします」


リッカ「わかった。じゃあそれで最終調整に入るね。何か違和感を感じたりしたら、遠慮しないですぐに教えてね。君の不都合にならないよう、最速で整備する事は約束するよ」


シオン「はい」


コウタ「鎌かぁ・・・いいじゃん!カッコいいじゃん!」


シオン「そ、そう・・・?」


コウタ「ああ!カッコいい!」


シオン「っ・・・」


フードの両端を掴み、さらに深く被ってしまったシオン


どうやら照れたらしい


カワイイとこあるじゃん・・・


ほとんど身長が変わらないシオンを、軽く下から覗き込みながらコウタは思う


ずっと無表情に近い顔をしていた彼女が、怯えたような落ち着かないような様子を見せたり


こうして照れたような態度を見せるのが、少し意外だと思った


口数が少ないのもあり、無愛想な女の子だというのが第一印象だったからだ


コウタ「・・・訓練、頑張ろうな!」


シオン「え、あ・・・はい」


数時間後、訓練が始まった


まずは基本的な動きを教わり、神機の扱い方を教わる


遠近切り換えをすると、隣にいるコウタからは「おぉ!」と感動したような声が上がった


訓練用にとシステムで作られたダミーアラガミは、オウガテイルと酷似していた


ヴァリアントサイズ−−大鎌の刃で、アラガミを斬り裂く


まるで使い慣れているかのような戦い方に、全員が目を奪われる


ツバキ「こいつは・・・」


コウタ「すげぇ・・・」


神機は勿論、大鎌すら使った事などない


だが・・・


なんでだろう・・・わかる・・・使い方が・・・


その時、アラガミの咆哮が聞こえた


コウタ「うわぁ!?」


シオン「ッ!?」


振り返ると、2体のアラガミがコウタに迫っていた


彼の神機−−アサルトは構えたものの、引き金を引く前に聞いたアラガミの咆哮に驚いたらしい


その場で腰を抜かしたコウタ


1体は彼の目前まで迫っていて、もう1体は少し後ろにいる


シオン「伏せて!!」


コウタ「!?」


反射的にコウタが伏せた直後、何かが頭上を勢いよく通り過ぎた


と思ったら、目前まで迫っていた1体が斬り伏せられていた


コウタ「え?」


顔を上げて振り返ると、ちょうど刃が元に戻っていくのが見えた


コウタ「の、伸びた・・・!?」


ヴァリアントサイズの特徴、咬刃展開形態


敵を水平に切り裂き、最大の攻撃範囲を持つ「ラウンドファング」を使ったのだ


すぐに銃形態(ガンフォーム)に切り換えると、もう1体をスナイパーで撃ち抜いた


シオン「ハァ・・・ハァ・・・」


コウタ「・・・」
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