長編[ルイ]

□第3章
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ルイ「壮観だな・・・」



目の前の景色を見て、ルイが言った



あの白い聖堂から、今いるこの雪山へと繋がるヤドリギを見つけた



山から見る景色は、どこまでも広く見渡せた



ヤクモ「・・・山登りが好きな連中の気持ちが、少しわかる気がするぜ」



そう言って歩き出すヤクモ、後ろにルイが続く



ミア「あの時の景色と同じ・・・」



それは、彼女が夢で見た景色だ



ミア「ニコラ・・・ここに、何があるというの・・・?」



ふと向けた視線の先・・・灰となって消えたはずのニコラが、そこにいた



ミア「え・・・」



ヤクモ「お前は・・・灰になったはずじゃ・・・!?」



ルイ「警戒しろ・・・罠の可能性もある・・・」



エマ「待って」



静かな口調で言いながら、片手を上げて2人を制した



エマ「敵意も悪意も感じない・・・同じ気配がする。あの時、灰になったあの子と・・・同じ気配が」



ルイ「なんだと?」



ミア「ニコラ・・・本当に、貴方なの・・・?私に・・・何を伝えようとしているの・・・?」



微笑むニコラの姿は、吹き抜けた風と共に消えた



ルイ「消えた・・・」



ヤクモ「なんなんだ、あれは・・・?」



ニコラが消えたその場所には、血英が残されていた



ミア「これは・・・」



ルイ「血英・・・」



ミア「これに・・・あの子の記憶が・・・?」



エマ「・・・」



直後、黙ったまま歩み寄ったエマが、その血英に触れた



その彼女の腕に、ミアはそっと触れた






ジャック[継承者のイメージによって、棺はその形を変える。ニコラ・・・お前はどんな場所を選ぶ?]



ニコラ[せっかくなら、カッコイイのがいいな。悪と戦う巨大ロボットとか!]



ジャック[お前が、心から落ち着ける場所を選べば良い]



ニコラ[落ち着ける場所か・・・うん、決めた!]






ニコラ[継承者になったら・・・その力で、もう一人の僕を作ってもいいかな?ミアはああ見えて、結構さみしがり屋でさ。僕がいない事を知ったら、きっと悲しむと思うから]



ジャック[・・・だめだ。神骸の力は危険だ。行使すればするほど暴走の危険が高まる。分身を維持するには相応の代償が必要になる。悪いが認めるわけにはいかない。それに・・・棺はあらゆる情報を遮断する。たとえ、もう一人のお前が姉と一緒にいても、お前自身は・・・]






ジャック[ここが・・・継承者となるお前の、戦場だ]



ニコラ[うん・・・行ってきます!]



ジャック[お前は誰よりも強い心を持った戦士だ・・・せめてその眠りの安らかならん事を]






ニコラ[ごめん、ジャック、それでも・・・]






ニコラ[ハァ・・・ハァ・・・ミアを・・・頼んだよ・・・]






エマ「・・・」



両眼を見開き、驚いたような表情をするエマ



その彼女の側で、ミアが膝をつく



ミア「ニコラが・・・継承者・・・今まで一緒にいたニコラは・・・あの子が作り出した、分身だったっていう事・・・?私が、吸血鬼(レヴナント)として目を覚ました時には、もう・・・」



ルイ「そうか、だからあの時・・・あの子は・・・血涙を飲んでも回復しなかったのか」



ミア「そんな・・・ずっと一緒だったのに・・・今まで・・・どんな時だって・・・ずっと・・・私だけ・・・何も知らないまま・・・ニコラは一人きりだったのに・・・」



ルイ「あの子は、この先にいるはずだ」



ヤクモ「会いに行こうぜ。そのために、ここに来たんだろ?」



顔を上げたミア



そして3人が、奥に続く雪山へと視線を向けた










ミア「・・・・・・そんなに怖いの?」



エマ「・・・」



ヤクモ「まあ、こいつの場合・・・戦闘時はともかく、なぁ・・・?」



ルイ「俺に振るな」



ぎゅうぅぅぅ、とルイの牙装を掴むエマ



先程、道だと思って通った場所から落ちて以降、ずっとこうだ



道だと思っていたそこは氷で、砕けて転落死した



ヤドリギに死に戻ってきた彼女が、驚いたような怯えたような顔をしていたのを、かなり鮮明に思い出せる



「氷・・・割れた・・・氷・・・割れた・・・」と、うわ言のように呟いていたのも



戦闘中はともかく、移動中のエマは足元への注意が疎かになる



普通は逆になるはずなのだが・・・



エマ「・・・」



ミア「よく見れば、見分けがつくでしょう?」



エマ「だって・・・」



ヤクモ「ミア、エマにそれを求めるのは間違いだ」



ルイ「・・・・・・ハァ・・・」



ため息を吐くと、エマの手を牙装から引き剥がす



エマ「ッ・・・」



すぐに怖がる子供のような顔をしたエマ



それが妙に可愛らしく、苦笑したルイが離れさせた彼女の手を握った



エマ「え・・・」



ルイ「この方がいいだろう?すぐ戦闘に入れるし、落ちかけても引っ張ってやれる」



エマ「・・・・・・ん」



ルイに手を引かれて歩くエマを、ヤクモとミアが見つめる



ミア「まるで兄妹ね」



ヤクモ「ルイが甘やかしてるだけだろ。だから足元がお留守になるんだよ」



ミア「でもエマの記憶を見た限りだと、昔からみたいよ?」



ヤクモ「・・・」



ミア「なに?」



ヤクモ「・・・・・・エマ(あいつ)のせいだ。って、お前は思うか?」



ミア「・・・思わないわ。気付けなかった自分に腹は立つけど、エマのせいだとは思わない。これは、ニコラが自分で考えて・・・選んだ事だと思うから」



ヤクモ「そうか・・・もし、エマがなんか言ってきたら、同じ事を言ってやれ」



ミア「そのつもりよ。ついでに、ひとりで背負い込むなって、一発叩いてもいいけど」



ヤクモ「だな」
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