長編[ルイ]

□第2章
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エマ「ふわっ・・・」



寝過ぎた・・・



欠伸を噛み殺しながら、目を擦るエマ



目が覚めた時、ルイはもうその場にはいなかった



いつもなら気配でわかるのだが、今回に限ってはわからなかった



気付かなかった程、眠りが深かったようだ



エマ「・・・あとで、謝ろ・・・」



いつになく感情的になり、情けないところを見せてしまった



自分の気持ちに整理がつかずパニックになっていたとはいえ、ルイには酷い事も言った



エマ「・・・・・・」



本音を言えば、顔を合わせ難い



だがそうも言っていられない



エマ「ハァ・・・」



イオ「あの・・・」



エマ「?イオ。起きてたの?」



イオ「はい・・・貴方と、お話ししたい事があったので・・・」



エマ「?」



イオ「レダ・・・という女性を、ご存知ですか?私に、とても良く似た人がいたと聞きました」



エマ「知ってる・・・アウロラの側にいた。でも・・・」



イオ「いつの間にか姿を消し、代わりにひとつの血英が残されていたそうです」



エマ「え?」



確かに、彼女はいつの間にか姿を消していた



だが血英があったというのは、エマにとっては初耳だった



イオ「何か意味があるのではないかと・・・ルイが、私に持ってきてくれました」



エマ「そう、なんだ・・・?」



イオ「彼女が、何者なのかはわかりません・・・だからこそ、知りたいのです。この血英に刻まれた・・・記憶を・・・お願いできますか?」



エマ「・・・いいよ」






レダ[継承者様・・・]



アウロラ[・・・だれ?]



レダ[私はレダ・・・貴方を支え、貴方に寄り添う神骸の伴侶・・・]



アウロラ[そう・・・でもごめんなさい。中に入れるわけにはいかないの]



レダ[問題はありません。こちらで・・・おそばにいます]



アウロラ[それなら・・・私の話し相手になってもらえる?]






[この女・・・吸血鬼狩り(ハンター)なのか!?]



[どうしてこんな所に・・・いぎゃああああ!]



アウロラ[レダ・・・?どこに行っていたの?]



レダ[ご安心を・・・侵入者は排除しました。灰となれば、復活する事もありません]



アウロラ[そんな・・・追い返すだけでも十分じゃない。何もそこまで・・・]



レダ[確実な排除が私の使命。継承者様に、危険が及ぶ前に]



アウロラ[肋骸の継承者として命じます。今すぐ吸血鬼狩りを止めるのよ]



レダ[いえ・・・私は、私のやるべき事を、やるのです]



アウロラ[レダ・・・]






レダ[侵入者を排除してきました・・・継承者様?]



アウロラ[どうやら、私はもう、私ではいられなくなるみたい・・・今までありがとう・・・レダ。心残りがあるとすれば・・・貴方を一人残していく事。健気で、とても可哀想な貴方を・・・]



レダ[・・・言っている意味がわかりません。私は、やるべき事をやっています。継承者様のために・・・やるべき事を・・・]






イオ「神骸の伴侶・・・継承者に寄り添い、見届ける者・・・私が、貴方に寄り添う者であるように・・・彼女もまた、同じ使命を持つ存在だったのですね」



エマ「・・・みたいだね」



イオ「あの方は、聖域の守護者。レダは間違いなく、やるべき事を成し遂げました。そう・・・成し遂げたというのに・・・なんなのでしょうか、この気持ちは。どこか・・・空しくも思えるのです。使命にのみ生き続けた、レダの事を・・・」



エマ「・・・」



イオ「私は・・・知りたいです。私達が為すべき事が、本当に正しい事なのか・・・何を為すために生まれてきたのか・・・貴方と行動を共にすれば・・・今回のように、その手がかりが見つかるかもしれません・・・私のお願いは、やるべき事ではないのかもしれません。それでも私は・・・・・・私を、私を、同行させて頂けませんか・・・?」



エマ「ハァ・・・」



ため息をひとつ吐くと、真剣な眼差しを向けたエマが頷いた



イオ「・・・本当ですか?」



エマ「嘘は言わない」



イオ「ありがとうございます・・・よろしくお願いします」



エマ「・・・ん」




















エマ「ルイ」



ルイ「エマか・・・どうした?」



エマ「・・・」



ルイ「?」



エマ「あの時は、ごめんなさい。感情的になり過ぎて・・・酷い事、言った。情けないとこも、見せたし・・・」



ルイ「ああ、そんな事か。大丈夫だ、気にしていない」



エマ「・・・」



ルイ「本当に、気にしていない。だからそんな顔をするな」



不安そうな顔をするエマに、ルイは優しく微笑み掛ける



それを見たエマは、戸惑いながらもある疑問を口をする



エマ「・・・・・・あの時・・・何を言いかけたの?」



ルイ「え?」



エマ「お前だからいて欲しいんだって、言った後・・・エマ、俺はって・・・」



ルイ「あ・・・」



そう、彼女の流した涙で言い切る事ができなくなった、ある言葉があった



実はそれが気になって仕方なかった



だが当の本人はすっかり忘れていた



ルイ「あー・・・その・・・あれは・・・」



エマ「・・・」



ルイ「・・・・・・言わないと駄目か?」



エマ「うん、気になる」



即答されてしまい、答えるしかなくなってしまった



ルイ「・・・・・・お、俺は・・・力があっても無くても・・・エマに・・・いて欲しいと、望んでいた、と・・・」



エマ「・・・」



ルイ「・・・・・・いや、やはり今のは忘れて・・・」



ぽすっ



ルイ「?」



突然、隣に腰掛けてきたエマ



そして体を傾けると、ルイの肩に頭を預けた



ルイ「エマ・・・?」



すー・・・すー・・・



ルイ「・・・・・・寝た、のか・・・?」



突然の状況に、呆然とするルイ



だが安心したような顔で眠るエマを見ると、苦笑した



ルイのそばは安心する・・・そう言われているようで、少しくすぐったい気持ちになる



頭からずり落ちそうになっているベレー帽を取り、彼女の膝に乗せると、読み掛けだった本を開いた


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