長編[ソーマ]

□2011年
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詩音「・・・・・・ん・・・」


ふと、目が覚めた


視界に入ったのは、白い天井


そしてそれは・・・


詩音「知らない天井・・・」


「おや、お目覚めかい?」


詩音「・・・・・・うわっ!?」


まさか近くに人がいるとは思わず、驚いて上体を起こす


眼鏡をかけた男性と、厳しそうな雰囲気を持つ女性がいた


サカキ「うん、実にいい反応だ。目覚めて早々に申し訳ないが、まずは自己紹介といこう。私はペイラー・榊。アラガミ技術開発の統括責任者だ。彼女は−−」


ツバキ「雨宮ツバキだ。作戦指揮・統括と新人の教練担当者をしている」


詩音「・・・来栖詩音、です」


サカキ「シオン君、だね。ではまず、メディカルチェックの結果から報告するよ。特に異常はなしだ。あんな状況だったにも関わらず、不思議なくらいに異常なしだ」


詩音「は、はぁ・・・」


サカキ「脳にも異常は見られない。様々なデータベースをあさったが、君に該当するデータは一切見られなかった。この事と、ここに来るまでにリンドウ君達が聞いた話・・・これらを照らし合わせると、様々な仮説を立てられはするが、確信がない。そこで、解決するために、君からもっと色々な話を聞きたいと思って来たわけなんだ。どうかな?君にとっても悪い話じゃない」


詩音「・・・・・・話が早くて助かります。正直、面倒な会話なんてしたくないと思っていたので」


サカキ「リンドウ君達からの報告で、そうじゃないかと思ったよ。じゃあ早速、君の生年月日、所在地、市街地で目覚める前に何をしていたのか。わかる範囲で教えてもらえるかい?」


詩音「1995年10月28日生まれの16歳」


ツバキ「1995年・・・?」


思わず、と言った様子で呟いたツバキ


詩音が視線を向けるが、サカキが手だけで制した


何かを言いかけたツバキだが、それで黙る


サカキ「続けて」


自分に何が起きたのか、知りたい


所在地、事故に遭った事、おそらく死んだ事


そしてあの場所で目覚めた事


それらを一気に話すと、相槌を打って聞いていただけのサカキが口を開く


サカキ「−−ところで、今日は何年何月何日かな?」


詩音「2011年12月9日の金曜日」


サカキ「それを証明できるかい?」


詩音「・・・・・・壊れてなければ」


ベッドの足下にある鞄を引っ張り、中をあさり始める


お目当のスマホを出すと、サカキがひょっこりと鞄の中を覗き込んできた


詩音「・・・なんですか?」


サカキ「あぁ、すまないね。何が入っているのかと、ついね」


ツバキ「・・・中を見ても構わないか?」


詩音「まあ・・・別にやましい物はないので。どうぞ」


鞄を受け取ると、中身を出して隣のベッドに並べる


筆記用具に教科書、テストの問題用紙、文庫本が2冊、音楽プレーヤーとイヤホン、財布、定期券が入ったパスケース


ツバキ「・・・2010年出版、か」


サカキ「円単位のお金、しかも野口英世に樋口一葉、福沢諭吉のお札とは・・・!コレクターが喜びそうな物ばかりだ」


詩音「・・・別に、何も珍しくなんか・・・・・・は?」


言いながら、携帯の画面を目にする


その途端、我が目を疑いたくなった


同じ12月9日でも、それは・・・


詩音「2070年・・・?」


手から滑り落ちた携帯は、詩音が座り込んでいるベッドの上に落ちる


サカキ「・・・どうやら、同じ結論に辿り着いたようだね」


詩音「・・・・・・なに、これ・・・ドッキリ?そんなに、そんなに私が気に入らない?悪い冗談やめてよ・・・」


サカキ「シオン君。君はタイムスリップして、2011年から2070年にやって来た。それが、私と君が導き出した結論だと、私は考えているよ」


詩音「タイムスリップ・・・・・・そっか、それなら納得だ・・・」


誰も、私の事を知らない世界−−


私が、何も知らない世界−−


詩音「・・・・・・サカキさんと、ツバキさん。でしたよね」


サカキ「ん?」


詩音「教えてください、この世界の事。私が知らない事、全部・・・私が知らなきゃならない事、全部」


真剣な顔で、そう言った詩音


もっとパニックになり、まともに話ができる状態でいてくれるかどうか


そんな心配は不要だったらしい


だが逆に、なぜそんなに飲み込みが早いのかと疑問を抱く


サカキ「−−構わないよ」


それでも今は、この真剣な瞳に応えたい


そう考えたサカキは、彼女の望み通りにする事にした


この世界の事、アラガミの事、ゴッドイーターの事・・・


可能な限り、詩音の疑問に答えてやりたいと


そう思った−−


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