長編[ギルバート]

□亀裂と異変
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マルドゥーク討伐から2週間ーー



神機兵は量産が進められ、激戦区と言われ慌ただしかった極東支部も、ミッションが減って少しのんびりとしていた



ブラッド各員も、各々がやりたかった事を進めている



シエルはブラッドバレッドの開発



ナナは料理という名のアイテム開発



ギルは神機開発の方に才能を開花して、今はミコト専用の神機を彼女と共に作っている



元々技術者としての面も持ち合わせているミコトとしては、嬉しいお誘いだった



ギル「・・・使ってみてどうだった?感じたことがあれば遠慮なく言ってくれ」



ミコト「はい、とっても扱い易かったです!ですが強いて言うなら、これを機に極限まで強化してみたいですね」



ギル「ハッ。また無茶なことを平気で言ってくれるな。だが、極限か・・・それはそれで面白そうだ。いいだろう、俺も努力してみよう。お前の期待に・・・いや、それ以上の物で応えてみせるさ」



ミコト「ふふっ【ニコニコ】」



ギル「なんだよ?」



ミコト「いえ、ギルさん変わったなぁと思いまして」



ギル「そうか?」



ミコト「そうですよ」



ギル「どっちかって言うと、変わったのはお前の方だろう」



ミコト「そうですか?」



ギル「戦い方とかな。前のお前なら、周りなんか構わず自分だけで前線に突っ込んで行ってただろ。それが減った」



ミコト「まあ、そうでしょうね・・・」



ギル「・・・己の命を軽視してる人間は、自然と死に急ぐような行動を取る。お前もそうだった。やっぱ変わるもんだな。帰りたいと思える場所があるのとないのとじゃあ・・・色々と」



ミコト「あはは、そうですね」



ギル「・・・・・・ミコト」



ミコト「はい?」



ギル「俺には、前のお前は危なっかしく見えた」



ミコト「?」



ギル「いつも周りなんか構わず最前線に立って、後方支援の射程外にまで突っ込んで行って・・・なんなんだ、こいつって思ったこともある」



ミコト「あはは。す、すみません」



ギル「けどお前の事情を知って、帰りたくもない場所に帰るよりも、死を選ぼうとしていたのかって・・・お前の行動に妙に納得しちまった。そんなお前や、納得しちまった俺自身に腹が立った。もっと早くに気付いてやれてたはずなのに、気付いてやれなかった俺に・・・腹が立った」



ミコト「気付けなくても仕方ないと思いますよ?そんな素振り、見せないようにしていましたから」



ギル〈無意識、か・・・〉



これまでの彼女の発言そのものが、ギルにとってはもっと早くに気付いてやれていたと感じる要因だった



人として、柊ミコト個人として初めて必要とされた



その発言だけでも、彼女が家庭内でろくな扱いを受けていなかったのではないのかと想像はできる



だがそうしなかったのは、彼女自身が踏み込ませようとしなかったから



自分が踏み入っていいものなのか?



そう思い悩んでいるうちに、結局何も聞き出せず、あの事件を引き起こしてしまった



ミコトの隠されたSOSに、気付いてやれなかった



ミコト「私が初めてギルさんを見た時は、無理してるなぁって思いました」



ギル「!」



ミコト「自分から手を伸ばすことを躊躇っているみたいに見えて・・・だから、本当は踏み込んじゃいけないかなって思いながらも、ついつい手を伸ばして捕まえてみちゃいました♪」



ギル「ーーハッ。ハハッ、なんだよそれ」



蝶だと思っていた彼女に捕まっていたのは、自分だったのだろうか



危ういのには変わりないが、それでも彼女は自分を捕まえてくれた



道に迷っていた自分を・・・



こっちだよ、と言って捕まえて



道を示してくれた



だからこそ、立ち止まっていた彼の時間は動き出した



ギル〈ああ、だから俺はこいつを放って置けないんだ。あの時間に置き去りにされていた俺を、こいつは動かしてくれた〉



だからこそ、今度は俺がどうにかしてやりたかったんだ



あの場所に縛られていたお前を、解放してやりたかったんだ



それを忘れていられるこの場所に、お前を戻してやりたかった



いつものーー小悪魔的で飄々としている、明るいお前でいてほしかったんだ



サツキ「イチャついてるとこすみませーん」



ミコト「そう思うのなら、もうちょっと空気を読んでくださいよぉ」



ギル「別にイチャついてねぇだろ!!」



ミコト「冗談なんですけどねぇ。そんなに必死に否定されると寂しいです」



ギル「お前の冗談は冗談に聞こえないんだよ」



サツキ「ま、なんでもいいですけど。隊長さんを、ちょーっとお借りしてもいいかしら」



ミコト・ギル「「?」」




















サツキ「すみませんね、突然お邪魔して。どうしても、お尋ねしたいことがありまして・・・」



ギルと別れてミコトの自室に場所を移し、彼女のベッドに腰掛けたサツキが話を続ける



サツキ「うちのユノがね、黒蛛病患者として、フライアに収容されているアスナちゃんに会いに行ったんですよ。そしたら、ラケル博士でしたっけ。あの人が、どうしても会わせてくれなかったんですよねー」



ミコト「え?」



サツキ「んで、慰問はおろか、メールの使用も禁止されてましてね。要するに、外部からの接触が全くできないんです。感染予防って話ですけど・・・なんか色々、おかしいなーって思ってましてね。そこで!ここから、相談なんですけど・・・今、フライアにいる方で信頼が置ける方、っていらっしゃいません?」



ミコト「ジュリウスさんは?」



サツキ「いやー、ジュリウスさんは真っ先に連絡したんですけどねー。向こうが出てくれなくって・・・他の人、いません?」



ミコト「んー・・・・・・でしたら、オペレーターのフランさんはいかがでしょうか?」



サツキ「ほほう、なるほどね・・・その人、詳しくお願いします!あ、こっそりと!」
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