長編[ギルバート]

□柊ミコト
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ヒバリ「ですからーー彼女はただいま任務中ですので、呼び戻すことはできません。他のゴッドイーター達の存命にも関わってきます。任務終了、及び帰投するまでお待ちください」



「他のゴッドイーター達の存命など知るか。いいからさっさと娘を呼び戻せ!」



ギル「?」



エントランス1階にある受付が、何やら騒がしい



任務から戻ったギルが、2階から下を覗き込む



そこにはヒバリに苛立ちをぶつけている、小綺麗な身なりの男がいた



見覚えはない



どうやら女性ゴッドイーターの父親で、任務中の娘を呼び戻すように言い寄っているようだ



シエル「他のゴッドイーター達の存命など知るか、だなんて・・・酷いですね」



ナナ「なんかあのおじさん、ちょっと怖いかも・・・」



一緒に任務に行っていたシエルとナナも、2階から下を見下ろしてそう言った



ヒバリ「こちらとしては、これ以上の対応は・・・」



「なんでもいい、さっさと娘を呼び戻せ!」



その時だったーー



ロミオ「あれ?お前ら何してんだよ、こんなとこで?」



別任務に出ていたロミオ、ジュリウス、ミコトが帰ってきたのは



ナナ「あ、先輩!それがねー・・・」



「君では話にならん。支部長を呼びたまえ!」



ミコト「【ビクッ】!?」



下から響いてきた男の声に、ミコトの体が反応した



それに一番に気付いたのは、ジュリウスとギルだった



ジュリウス「ミコト?」



ギル「・・・?」



ミコト「・・・・・・皆さんは、先にお部屋の方に戻っていてください」



ナナ「え?あ、ミコトちゃん!?」



ロミオ「お、おい!」



早足で階段を降り、男の側に立つ



ミコト「こんな所へ、なんの用ですか?・・・・・・お父様」



シエル「え?」



ロミオ・ナナ「「お、お父様ぁ!?」」



ギル「!?」



ジュリウス「!」



ヒバリ「ミ、ミコトさん・・・?」



ミコト「すみません、ヒバリさん。あとは私が引き受けますので」



そう言って頭を下げると、父親と呼んだ男とラウンジへと消えた



ジュリウス「あの人が・・・」



ギル「知ってるのか?」



ジュリウス「ああ。面識はないが」



ナナ「ミコトちゃん、お父様って言ってたけど・・・」



シエル「では、あの人が柊家の?」



ジュリウス「柊スバル。ミコトの養父だ。ここ、極東支部と本部との橋渡しをしている研究員で、神機と神機使い。そして偏食因子の研究をしている研究員のひとりだと聞いている」



ナナ「じゃあ、ミコトちゃんのお父さんって、すごい人なんだね?」



ジュリウス「ああ。だが、あまり良い話は聞かないな」



ギル「どういうことだ?」



ジュリウス「研究のためならば、手段を選ばない人だと聞いている。ミコトが施設育ちなのも、それが原因だ。彼は・・・・・・養子とは言え、娘であるミコトでさえも、研究に利用したという話だ」



ギル「なっ!?」



シエル・ナナ「「!?」」




















ナナ「ミコトちゃん!」



ラウンジから出てきたミコトを、ブラッド全員で迎える



ミコト「皆さん・・・先に部屋に戻っていてください、って言ったと思うんですけど」



スバル「こいつらはなんだ?」



ロミオ「【ムカッ】」



ミコト「現在、私が所属しているブラッドの皆さんです」



スバル「あぁ、本部の直轄部隊か。で、お前の肩書きは?」



ミコト「副隊長です」



スバル「平隊員よりはマシか」



ロミオ「平隊員で悪かったな!」



ナナ「せ、先輩!?」



ジュリウス「部下が失礼しました」



スバル「お前か、隊長は」



ジュリウス「はい。ブラッド隊隊長、ジュリウス・ヴィスコンティです」



スバル「そうか。娘は返してもらう。偏食因子の投与はこちらで行う」



ジュリウス「随分と急ですね」



スバル「こちらも急遽、娘が必要になったんだ。研究に必要な材料が急に要りようになるなど、よくある話だ」



シエル「研究の材料って・・・」



ミコト「お父様!!皆さんとは、私が話します。先に戻っていてください。すぐに行きます」



スバル「勝手にしろ」



養父・柊スバルが立ち去ると、ミコトはその背中を見送ってから振り返る



ミコト「すみません。皆さんには、不快な思いをさせてしまいましたね」



シエル「研究の材料だなんて、あんな言い方・・・!」



ミコト「構いませんよ。私の扱いなんて、そんなもんですから」



シエル「ですが!」



ミコト「すみません、隊長さん。ミッションの組み直し、ですよね?」



ジュリウス「そうだな。だが気にするな。いつでも戻ってこい。待っている」



ミコト「・・・・・・きっと、もう・・・戻ってこないと思います」



ジュリウス「え?」



ミコト「・・・・・・あはは!そんな顔しないでくださいよぉ?ミコトちゃんだって寂しいんですよぉ」



ギル「ふざけてんのか?」



ミコト「ギルさん、顔怖いですよぉ?あ、いつものことですね」



ギル「あ?」



ミコト「それでは皆さんーーサヨナラ」



この時のミコトの表情は、笑顔を見せてはいたがーーとても儚げだった
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