ワールドトリガー

□第8話
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「あ〜、瑠唯さんのおかげで今回の遠征は随分ラクだ」

『イサミン、足伸ばせてよかったね』

「あ、ケータイ繋がった」

『ホントだ』


無事に任務を終え、帰りの遠征艇。

隊長連中は本部への報告のまとめで居ないため隊員達で過ごしていた。

ようやく電波が届く範囲に入れば、何件かメールが届いていた。


『(悠一…?)』


…わざわざ連絡入れてるってことは何かあったのか…?

そう思ってメールを開いてみれば、案の定何かがあるようなメールの内容で。


『………』

「どうかしたんですか、瑠唯さん」

『こら、人のケータイを覗かない』


きくっちがケータイを除く前に画面を消せば、減るもんじゃないし。と口を尖らせるきくっち。


『プライバシーの問題だよ』

「瑠唯さん、隠すようなプライベートあるの?」

『おいコラ』


きくっちの頭をぐりぐりとしていれば、お前ら何をしている?と蒼也さんが入ってきて、その後ろから欠伸をしている太刀川さん、船酔いでかなりやばそうな冬島さんが入ってきた。


「もうそろそろ着くぞ。降りる準備をしておけ」

「『了解』」


それから、本部へと帰ってくれば、エンジニアの人達にお疲れ様です。と声を掛けられ、少し歩いた先には上層部が待っていた。


「んじゃ、太刀川さん、また後で」

「おー」

「菊地原、歌川、ご苦労だった。当真、お前は冬島の代わりに報告へ顔を出せ」

「え〜」

「風間さんもお疲れ様です」

『じゃあ、私もここまでで…』

「待て」


きくっちやヒロシゲについて歩き出せば、城戸さんに止められた。


「国城、お前もこちらへ来てもらおう」

『……すみません、城戸さん。それは出来ないです』

「何故だ」


ケータイの画面を見せ、ニコリと笑う。


『どうやら支部の電子レンジをとりまるが壊しちゃったらしくて。住み込んでる私と迅が不便だから、すぐにでも買いに行かなきゃ』

「そんなもの、他の者に任せろ」

『それは私にも言えることじゃありませんか?』

「ええい!つべこべ言わず来い!」


と、鬼怒田さんに横からそう言われ、言葉を続けた。


『報告は隊長の仕事なのでは?今までそうでしたよね。この遠征では私は太刀川隊の"隊員"だし。あと、今回は遠征艇を少しでも拡大するための要員でもあっただけでしょ?』

「……」

「た、確かに…だが…『それとも』

『私が支部に戻っちゃいけないワケでも?城戸さん』


じっと目を見てそう言えば、わかった。と返してくれる城戸さん。


「今回も助かった」

『いえ、では』


最後に再び微笑んで私は支部へと急いだ。

バタバタと中へ入り、勢いよく扉を開ける。


『ちょっと悠一!遠征から帰ってきて早々、私に何頼むつも、り…』


扉を開ければ悠一以外の面々+知らない男の子2人と女の子1人が集まっていた。


『……誰?』

「あ、瑠唯さんおかえり〜。3人とも、新しくウチに入る子たちだよ」


みんな自己紹介しよっか、と栞ちゃんが3人に言うと、手前から順番に名前を紹介してくれる。


「ど、どうも、三雲修です!よろしくお願いします」

「空閑遊真。遊真でいいよ、よろしく」

「雨取千佳です。よろしくお願いします」

「こんにちは瑠唯。私はレプリカ。遊真のお目付け役だ」


と、出てきた黒色のトリオン兵に、お、と反応してしまう。

…自律型のトリオン兵、とか?久しぶりに珍しいのに出会ったなあ。


『えーっと、修くんに、遊真に、千佳ちゃんに、レプリカね…うん、覚えた。私は国城瑠唯です。こちらこそよろしくね』

「3人とも遠征部隊を目指してるんだよ。ボーダーの正式入隊日までレイジさん達がそれぞれマンツーマンで特訓してあげてるの。瑠唯さんもまた付き合ってあげてね」

『へえ!まさか3人に正式な弟子が出来るとは…!』

「瑠唯は弟子多すぎるのよ」


桐絵ちゃんにそう言われ、そう?と返せば、ああ。とレイジさんも共感していた。


「あ、そうそう、瑠唯さん。遊真くんね、ネイバーなの。あとブラックトリガー使い」

『あ、そうなんだ。確かに強そうだもんね』


あっさりとそう返せば、修くんが何か言いたげな顔をしていた。


『…"なんで驚かないんだ"って顔だねえ』

「えっ?あ、は、はい…」

『聞いてると思うけど、ウチの支部ちょっと特殊だからね、そういうことにあんま驚かないよ』


そう返せば、どこかホッとしたような顔になった修くん。


「ねえ、瑠唯さんも強いの?」

「そうね、悔しいけど私より強いかもね」

『えへへ〜、それほどでもあるよね〜』


ニマニマしながら言えば、この!と、桐絵ちゃんに頬を摘まれる。


「瑠唯さんはレイジさんと同じ完璧万能手なんだよ」

「だが、俺より上だ」

『レイジさんも謙遜するなあ。そんなに上げてがっかりさせたら悪いじゃんか』

「事実だろう?」

「へぇ…」


私を見つめる遊真の目はどこかギラギラとしていて、桐絵ちゃんにやめときなさい。と止められていた。


「私以上にボコられるわよ、あんた」

「でも、闘ってみたい。小南先輩より強いんでしょ」

「瑠唯さん、元は攻撃手で、狙撃手は東さんと同時期に始めて、射手は……なんだっけ?ノリ?」

『そうだよ〜。全部制覇してみたくてノリで』

「ノリ……(なんというか…この人も自由だ……)」

『…で、遊真、私と勝負してみる?』

「お願いします」

「ちょっと、本気でやるつもり?」

『本人が所望してるからねえ』


立ち上がって、部屋借りるよ〜と中へ入って栞ちゃんに設定を頼む。


《はじめていいよ〜》

「『トリガー起動』」


10本勝負ではじめた試合だったが、まあ私が負けるわけもなく。


「惨敗でした」

「だから言ったじゃないの」

「(あの空閑が、手も足も出ないなんて….)」

『でも、さすがに戦い慣れてるね。実力も十分あるし、こっちのトリガーに慣れたらA級でも普通にいけるな』

「なんてったって、私の弟子だからね!」


ふふん、と自慢気な桐絵ちゃんに、そうだね。と頭を撫でてやれば、やめてよ!と照れる彼女。


「瑠唯、雨取も見てやってくれないか?狙撃手志望だ。トリオンが超A級でお前と似ている。俺より専門だから、お前に教わる方がコイツの為にもなるだろう」

『時間がある時は稽古つけるよ。え、っていうか千佳ちゃんのトリオンってどれくらいなの?』

「瑠唯さんと同じくらいか、それ以上だよ」

『凄いね!こんな小さい身体にそんなチートみたいなトリオン量を持ってるとは…』


瑠唯さんも小さい割にトリオンすごいすよ。と、言うとりまるの頬を摘んでいれば、ポケットで震えるケータイ。


『…もしもし?…うん、居るよ。…は?じゃあなんで私をいちいち支部に……あ、いや、わかった、ん』


電話を切り、ちょっと出るね。と言えば、どこ行くの?と聞かれる。


『んー…暗躍?』

「あんた達ほんと…まぁいいけど。気をつけなさいよ」

『はーい』


支部を出て指示された場所に向かうと、来た来た。と寄ってくる悠一。


「どうだ?新人3人は」

『今後に期待』

「そう言うと思った」

『じゃあ聞くな』


悪い悪いと笑っている悠一に、で、要件は?と聞くと、少し真面目な顔をして言葉を紡ぐ。


「なぁ、ちょっと俺に乗ってくれねえか?」


カチ、とハマる音。

…コイツの言うことなんて、大概ロクなことじゃないけど。でも、


『…いいよ』

「助かる」


コイツ1人に負わせるのは違うから、私も加担することにしよう。
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