ワールドトリガー
□第7話
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――学祭当日。
『あ、哲〜!』
「!瑠唯さん!」
「瑠唯さーーん!!!」
『うげっ!なんで犬飼まで…!』
「誘える奴誘ってって言ったの瑠唯さんなんでしょ?」
と、無駄に身長でかくて顔面偏差値の高い18歳組(哲、篤、犬飼、鋼くん、イサミン(当真))が私の周りに集まると、視線も一気に集まる。
『…誘うんじゃなかった』
「酷くないですかそれ」
私しばらく店番だからみんなブラブラしておいで。と言えば、じゃあとりあえず豚汁下さい。と鋼くんが早速店のものを買ってくれる。
『今日寒いもんね。これで温まってね』
「ありがとうございます。いただきます」
「瑠唯さん、鋼には甘いですよね」
『え〜荒船隊には優しいよ?ね?篤』
「そうですね」
「お前それ言わされてね?」
と、そんなツッコミを入れるイサミンに肘打ちを食らわし、お前も買え。と脅していれば、瑠唯さん瑠唯さん。と犬飼に呼ばれる。
「嵐山さん居ないんですか?」
『あー、准は被ってない。っていうか…アイツは舞台だね』
「?」
『なんか今年からやり始めたらしいの、ミスコン』
男子も女子もあるからそっち。と言えば、なるほど。と全員が納得した。
「瑠唯さんは出ないんですか?」
『出ないよ。目立って仕方ないじゃん』
「(普段から散々目立ってるくせになこの人……)」
と、話していると、お、あれじゃね。と声が聞こえてくる。
『あ、悠一!…と… 』
「どうもです」
「瑠唯さんだ!久しぶり!」
「ちゃんと来ましたよ」
「瑠唯さん〜!」
悠一が連れてきたのは、とりまる、駿くん、義人、太一くんの4人だった。
「おーおー、なんでこんな集合してんの?」
「俺たちも誘われてたんで」
「っていうか、迅さんが引き連れてるメンツ……」
「いやあ、さすがに16歳と14歳だけで回らすのは…っていう俺なりの配慮」
ははは、と笑う悠一に、あんたでもそんなこと考えるんだ。と言えば、当たり前だろ!と突っ込まれる。
「で、瑠唯は何時まで店番?」
『10時半』
「じゃあそれくらいにまた来る」
『えっ、あ、うん』
行くぞ〜。と悠一は4人を引き連れてどこかへ行く。
「瑠唯さん、ナチュラルに迅さんと回ることになってますよ」
『あ、ホントだ。まあでもとりまるとか駿くん達いるし、いいよ』
「俺たちとは回ってくれないんですか〜?」
『犬飼が抜けるならいいよ』
「酷すぎる!」
と、適当に犬飼を遇い、私は10時半までの仕事に専念することにした。
――――――
「終わった?」
『!びっくりした…』
時間が来たので片付けをしてからテントを出れば、丁度立っていた悠一。
「色々見て回りたいって駿がうるさくてよ」
『え、回ってたんじゃないの?』
「瑠唯が一緒がいいんだと」
『ナニソレ可愛いかよ』
なんて会話をしつつ、とりまる達と合流し、展示品を見たり、縁日をしたり、食べ歩きをしたりとなかなか充実した時間を過ごし、残るは午後からのミスコンになった。
「じゃあ、そろそろ行きますか?」
『…あ、ごめん、みんな先に行ってて』
「どうかしたか?」
『ウチの模擬店、完売したらしいから片付け行ってくるよ。あとでそっち行くから』
「早く帰ってきてね瑠唯さん!」
『はーい!』
急いで模擬店の場所まで戻り、みんなで片付けを終わらせて、ミスコンのステージまで戻ろうとしていれば、瑠唯と呼ばれる。
『悠一!なんで1人?』
「全員で来ても邪魔だし、観覧場所で待機してもらってる。他のボーダーの奴らも結構集まってたし、俺だけ迎えに来た」
『あ、そうなんだ。わざわざごめん』
いーえ。と悠一が歩き出し、その後ろをついて行きながら観覧場所へ着くと、予想以上の人だった。
『男子も女子もすごい人だな…』
「まあステージ一緒だとこうなるだろうな」
はぐれんなよ。と私の手を取り、ズンズン進んでいく悠一になんとかついて行きながら、ベストポジションを取っていた皆と合流する。
それから少ししてミスコンが始まった。まず女子かららしく、あっちこっちから、おお〜…と感嘆の声が聞こえてくる。
「瑠唯さん、なんで出なかったの?」
『いや、普通に嫌でしょ』
「えー、瑠唯さんが一番可愛いのになあ」
…かぁ!おばさんはお世辞でも嬉しい!!
ぶー。と拗ねるように言った駿くんに、ありがとう…!と抱きしめれば、ホントのことだよ〜。と言ってくれる駿くん。
女子のナンバーワンが決まり、優勝者がコメントをした後、男子の部が始まる。
「瑠唯さん、あの中に好みの人とかいないんすか」
『えーーーー…みんなやだ……』
「可哀想ですよ」
『まあでもあの中から選ぶなら間違いなく准を選ぶよね』
「それ、嵐山が知り合いだからだろ」
…いや、でももし准を知らなくてもだ!准以外、みんなチャラそうだし、謙虚さが足りない。全員准を見習え准を!
エントリーした人達が全員出れば、投票が行われ、すぐに集計に入る。
「嵐山さんいけそうっすね」
『だねえ』
「まあボーダーの広報担当だし、ほかの人に比べて顔は知られてるよな」
なんだか私たちまでドキドキしながら結果発表を聞く。
「ミスコン、男子の部ナンバーワンは…嵐山准!」
「「キャアア!」」
黄色い声とともに拍手が起こり、准が1歩前に出て挨拶をする。
「ありがとうございます。純粋に嬉しいです」
「はい!ありがとうございます〜。では、女子のナンバーワン、中川美咲さんもご登場下さい〜」
パチパチパチと私たちも拍手をしていれば、後ろからぽんぽん、と肩を叩かれ振り返る。
「国城さんだよね?さっき知り合い?の人が、模擬店出してた辺りで探してたよ」
『?わかった、ありがとう』
隣に居たとりまるの肩を叩き、ちょっと抜けるよ。と伝えて、人混みから抜け模擬店を出ていた場所まで戻ろうと歩いていれば、グイッ!と力強く引かれる腕。
『!?な、なに……って、犬飼?どうしたの?1人?てかなんでそんな息切らして…「どこ行くんですか」…え?』
「どこに行くんですか、瑠唯さん」
『どこって…私探してる人居たって聞いたから、模擬店の場所に戻ろうかと…』
「ダメです」
ギュッと力を込められ、顔を歪めれば、すみません。と、すぐに力を緩めた犬飼。
『ちょっと、ホントなんなの?』
「ダメです。とりあえず俺と来てください」
『待って、状況が掴めないんだけど!』
「瑠唯さんを探してる奴ら…怪しいんです」
『え?』
人混みに紛れるように歩き、なるべく声を抑える犬飼。
「明らかにボーダーの人間じゃないし、"探してる"というより…"狙ってる"感じが…!」
急に方向を変えた犬飼に、足が縺れそうになりつつ、必死についていく。
『ちょっ、待って、早い!』
「すみません…っ、でも隠れるか逃げ切るかしないと…!」
と、その時急に止まった犬飼。
思わず背中にぶつかってしまい、前を見れば一見普通の身なりをした男の人たちが、私たちの前を阻んでいる。
「トリガー使いたいとこですけど…ダメですよね」
『銃手のあんたが一番ダメだわ。
…さて、どうしたもんか……』