僕のヒーローアカデミア
□第6話
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――1日の休養を終え、翌日。
「おはよう」
「相澤先生復活早えええ!!!」
「先生無事だったのですね!」
「まぁ怪我は軽かったみたいだし…」
『……』
先生はふら〜と教卓へ立つと、いつもと同じテンポ、変わらない声色で、まだ戦いは終わってない。と言った。
「戦い?」
「まさか…」
「まだ敵がー!?」
「雄英体育祭が迫ってる」
「「クソ学校っぽいのきたぁああ!!!」」
と、騒いだものの、敵に襲われた直後で、そんなものしていても良いのか?という疑問にたどり着いた。
「逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと示す…って考えらしい。警備は例年の5倍に強化するそうだ。
何よりウチの体育祭は…最大のチャンス。敵ごときで中止していい催しじゃねえ」
『まぁ確かに、オリンピックに代わる行事だとも言われてるしね。アレ毎年全国放送してるし』
「スカウト目的でね!」
「……」
「当然、名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる。時間は有限、プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ。
年に1回…計3回のチャンス…ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ!」
以上、朝のSHRを終わる。そう言って出ていった相澤先生。
『私個人的には楽しみだなぁ、体育祭』
「嘉風は強ェからいーけどよ…俺もう敵に襲われるのなんか嫌だぜ!」
『…まぁ、襲われるのは嫌だけど…学校行事は基本的に楽しいからスキ』
あと、敵に襲われるの前提で話すのやめて、と峰田くんに笑いながら言った。
…このクラスの皆と出れるんだ。そんなの…、
『(楽しいに決まってる…!)』
「随分嬉しそうですわね」
『うん!だって皆と体育祭出れるの嬉しいもん!』
「「(天使か!!!)」」
「おれ…嘉風の為にならなんでもできる……」
「私も……」
「A組の天使……」
ルンルンで午前の授業を終え、お昼休みに入り、百や響香とご飯を食べようと食堂へ向かう。
ご飯をもらって場所を探していると、轟くんが1人で食べているのが見えた。
『ねえ、どうせなら轟くんも一緒に食べない?1人みたいだし』
「そうですわね!」
「あ、もし私ら邪魔なら違う場所行くけど?」
『そういうんじゃない!!』
3人で轟くんのところへ行き、一緒に食べよう!と言えば、あぁ、と短く返した彼。
『…轟くんいつも蕎麦だね』
「美味いからな」
「そう言う舞はいつも違うもの食べますね」
『まあ…。どうせなら家で食べられないようなものがよくない?』
「ハッ!!)…確かに…そういうのも考えた方がいいですわね…」
「いや、アンタの家多分何でも食べれる大丈夫」
響香に共感するようにうんうん、と頷けば、そうですか?と言う百。
振る舞いとか言葉遣いから百がお嬢様であることは間違いないと思ってる。(多分響香も気づいてる)
「ご馳走様でした」
「轟食べんの早!」
「悪い、先に教室に行ってる」
『あ…うん…』
何だか様子のおかしい轟くんに疑問を抱きつつ、3人でご飯を食べ終え、その後はだべっていた。
――放課後。
「うおお…何事だあ!?」
お茶子ちゃんが教室の扉を開ければ、他クラスの人達が群がっていた。
出れねーじゃん!何しに来たんだ?と言う峰田くんに、敵情視察だろ、勝己くんが出て行った。
「敵の襲撃を耐え抜いた連中だもんな。たたかいの前に見ときてえんだろ。
意味ねェからどけ、モブ共」
「知らない人の事とりあえずモブって言うのやめなよ!!」
勝己くんの言葉にざわつく生徒達。
…まぁそりゃそうだよね。すんごい失礼なこと言われたもんね。
だけどそんな中、1人の男の子が声を上げた。
「ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」
「あぁ?」
「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ」
そう言って出てきた男の子はヒーロー科志望だった普通科の男の子。
彼はまっすぐした目で私達に言った。
「調子のってっと足元ごっそり掬っちゃうぞっつー宣戦布告しにきたつもり」
その直後、どこからか隣のB組の男の子も何かを叫んでいた。(ごめん、あんま聞こえなかった)
「待てコラどうしてくれんだ!!お前の所為でヘイト集まりまくっちまってんじゃねーか!!」
「関係ねえよ」
「はあ?!」
「上に上がりゃ、関係ねえ」
『ふふっ、確かにね。勝己くんの言う通りだ』
彼にクスクスと笑っていると、あ!!と、またどこからか声が聞こえた。
「嘉風だ!お前雄英だったんだな!」
『……』
「舞ちゃん、お友達?」
『…いや、知らない』
「?」
「カワイソーだなぁ、A組!ロクなこと起きねえぞ、その女と一緒に居たら!」
『……』
中学の時の…多分あの口ぶりからして同じクラスだった奴だろう。本当に記憶にはないが、挑発じみたその言葉にはさすがに腹が立った。
グッ、と握りしめた拳。すると、私の前に立ち、拳ごと手で包んで引っ張るように歩き出したのは…
『と、轟くんっ!』
「…」
『ちょっ、あの!2人に!』
「さっき許可もらった」
『え?!そうなの!?』
ズンズンと進む轟くんにひたすらついて行く。
後ろめたさはあるものの、その時振り返る勇気など私にはなかった。
外へ出てもずっと繋がれた手に、無言のままただ前だけ見て進んでく轟くん。
…なんか、体育祭の話になってから、轟くんずっと怖いんだよなぁ…。
『(何か思い詰めてるなら話をした方がいいよな…でも彼が話してくれるかはわかんないし…)』
「嘉風」
『!は、はい!』
「平気か?」
『…え?あ、さっきの?』
あぁ、と言う轟くんは鋭い目をしていた。
『…中学で同じクラスだった人…多分』
「……」
『中3の時に敵襲われたって言ったでしょ?あとその前にも2回。誰に言ったわけでもなかったけど、クラス中に広まっちゃっててさ。
私と関わったら敵に殺される〜ってよく騒がれてただけ』
そう、平然と言った。そこに感情なんてなかった。
事実、あんな奴のことなんて記憶になかったんだから。
…なのに、
『…轟くんは…怒ってるの?』
「…腹立った」
『え…!』
握りしめていた手を解くと、その手を再び掴んだ轟くん。
「お前のことあんな風に言うアイツにも、すぐ我慢する嘉風にも。腹が立った」
『!』
「いい加減、手ェ伸ばせよ」
『……』
目をじっと見つめられる。吸い込まれるような瞳に、固まっていればゆっくりと離れる手。
「ヒーローは、そんな顔しねえ」
ごめん、と言おうとしたが、途中で止め、ちゃんと笑って言った。
『ありがとう』
「…あぁ」
薄らと笑みを浮かべる轟くんに、今度は私から切り出した。
『…じゃあ…"余計なお世話"を焼いてくれた轟くんに私からも質問です』
「何だソレ」
『どうして、轟くんはずっと怒ってるんでしょうか』
「……」
ポカン、と鳩が豆鉄砲を食ったような表情の轟くん。
『…もしかして無意識だった?』
「…あぁ、そう見えてたならすまねえ。そんなつもりなかった」
『体育祭の話が出てからだよね、眉間にシワが寄ってる』
「……」
おでこ辺りを指させば、視線を左手に落とす轟くん。
「…体育祭、クソ親父が見に来る」
『(あぁ…エンデヴァーさんか…。プロヒーローだし、まぁ来ないわけないだろうな)』
「…"こっち"は使わねえで、1番になってやる」
ぎゅっと力強く握りしめた手。憎悪とも取られる瞳。
…あぁ、彼もまた…。
『(同じ眼だ…)』
「…家まで送る」
『え、いいよ、轟くんと別れるとこまでで』
「危ねぇだろ」
…もしかして、百や響香にまた言われたのか。
とか思ったけどまぁ今日はお言葉に甘えよう。
『じゃあよろしく』
「おう」