僕のヒーローアカデミア

□第5話
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――翌日。午前中の授業を終え、午後のヒーロー基礎学の時間。


「今日のヒーロー基礎学だが…。俺とオールマイト、それともう1人の3人体制で見ることになった」

『(元々3人体制ではなかったってこと…?)』

「はーい!何するんですか!」

「災害水難なんでもござれ、人命救助訓練だ」


ヒーローっぽい!と騒ぐ皆を静め、相澤先生が続ける。


「今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。

訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上準備開始」


ほぼ全員がコスチュームに着替え、バスの前まで集合すると飯田くんが、スムーズにいくよう番号順に2列で並ぼう!と声を張った。

…すごいな、飯田くん。委員長っぽい……。


『(……あっ、委員長だったか)』


で、いざバスに乗れば思っていた形とは違うタイプで、皆とりあえず適当に座り出した。

…やばい、皆座ってる。どっか空いてるとこ…。

と、不意に目が合ったのは轟くんだった。


「空いてる」

『あ、ありがとう…』


…昨日あんな話した後だし、何となく気まずさがあるのだが…。

って思ったけど多分轟くんはあんまり気にしてなさそうなので、とりあえず隣に座った。


「…昨日、メシ食えたか?」

『えっ?あ、うん。食べたけど…何で?』

「また泣いてんじゃねぇか、って」


思っただけ。と窓の外を見ながら言った轟くんに、泣き虫はそっちでしょ。と言えば、うるせえ。と返された。


『……』

「……」


お互い無言のまま、皆の会話をBGMにぼーっとしていると、肩に感じる重み。

ふわっ、と香る匂いにちょっとだけドキッとした。


『と、轟くん…?』

「…ん….あ、悪い……」


見るからに眠そうな彼は反対側に倒れようとするも、いい高さが見つからないらしい。


『あの、いい高さないなら、全然いいよ、こっちに凭れてくれて』

「…悪ィな」


じゃあ、と少しだけかかる重み。何だか私まで眠気が…と思ったところで、轟くんと勝己くんと私の名前が聞こえた。


「派手で強ぇとかマジでずりぃ…って、え!?何してんの轟!?」

『あっ、えと、轟くん眠いらしくて、だから、しぃー…』


上鳴くんに向かって人差し指を口に持ってきて、そのジェスチャーすれば、何故かふら〜と倒れる彼。


「おい!上鳴!大丈夫か!?」

「て、天使が居た……」

『?』


騒ぐ前の席の皆に、どうしたのかと思えば、前に座っていた勝己くんが振り返った。


「…クソ女」

『はあ!?』

「ケッ…」


…何なんだ全く!マジでクソを下水で煮込んだような性格かよ!(さっきの聞いてた)

はぁ…と溜息を吐いたところで、相澤先生からも、いい加減にしとけよ、と一喝入り少しして訓練場に着いた。


「すっげーーー!!!USJかよ!!!」


確かに…。とこみ上げてくる笑いを堪えていると、出てきたのはスペースヒーロー13号だった。


「水難事故、土砂災害、火事…エトセトラ。あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も…

U(嘘の)S(災害や)J(事故)ルーム!」

「「(USJだった!!)」」

『ぷふっ…ダメだ……し、しんどい……』

「えっ、アンタのツボ浅くない?」


響香に突っ込まれ、頑張って真顔に戻るも、堪えるのに必死になる。

すぐに始まるのかと思えば、相澤先生が13号先生に何か話しをしていた。

…そう言えば、オールマイトも来るって言ってたのにな。


『(結局2人でやんのかな…)』

「えー始める前にお小言を1つ2つ…3つ4つ…」

「「(増える……)」」

「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性は"ブラックホール"、どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」


緑谷くんがそう言うと、隣に居たお茶子ちゃんがブンブンと激しく頭を振った。


「ええ…。しかし、人を簡単に殺せる力です。皆の中にもそういう"個性"がいるでしょう」

『……』

「超人社会は"個性"の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます」


そうだ。個性の使用の資格制とは言え、規制なんて各々のモラルがある前提の話だ。


『(モラルがないから、破るから…敵が出て来るんだろう……)』

「この授業では…心機一転!人命の為に"個性"をどう活用するかを学んでいきましょう!

君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰って下さいな」


以上!ご清聴ありがとうございました!とお辞儀をする13号先生に皆で拍手を送れば、相澤先生がそんじゃまずは…と切り出した。

が、


『ゾクッ)ーーっ!!』

「一かたまりになって動くな!!」


相澤先生のその声に、全員の視線が集まる。

何だ?と不思議そうな皆に、相澤先生1人焦燥の声を上げる。


「13号!生徒を守れ!!」

『ま、さか……!』

「!」


おぞましいソレらは、過去をフラッシュバックさせるには十分なものだったのに、怯える以上に、その時抱いた感情はまさしく、

"憎悪"


『…あ、いつ……!!!』

「何だありゃ?!また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」

「動くな!!あれは…敵だ!!!」
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