僕のヒーローアカデミア
□第4話
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『今日も天気いいね…』
「そうですわね」
「アンタら会話が女子高生じゃないから」
2限目と3限目の間、陽の光が差してきたので、温かいなぁ。と思いながら百と響香と話していると、なぁなぁ!とやってきたのは上鳴くん。
「嘉風、放課後ヒマ?」
『?ヒマっちゃヒマだけど…』
「まじで!!!じゃあメシでも行かね?」
何だかんだで嘉風とゆっくり喋ったことねえしよォ。と言う彼に、いいよ、と返そうとすれば口を抑えられた。
「下心見え見えだよ上鳴」
「許しませんわ」
「なんでお前らがガードすんだよ!」
「舞、上鳴は危険だからやめときな」
『??2人も行くんじゃないの?』
「「……」」
そう言うと固まった3人。
…え、私何か変なこと言った?
「これは…あれだな。お前ら大変だな」
「ナチュラルに人殺すタイプだわ舞…」
『は?』
何故か顔を背ける3人に疑問を抱きつつ、で、ご飯は?と尋ねると、いいのか!?と逆に聞かれた。
『どうせなら、上鳴くんもほかの人誘いなよ』
「くっ…そ、そうだな……!!」
「まぁ…結果オーライっつーことで…」
「ええ!」
と、いうことで放課後、私達3人と上鳴くん、切島くん、峰田くんで行くことに。
――午前中の授業も終わり、お昼休みに入った時。
「嘉風、職員室来い」
『はーい』
相澤先生にそう言われ、百と響香には先にご飯を食べておいてもらうように言ってから職員室へと向かった。
『相澤先生、何ですか?』
「コレ」
ヒラリ、と渡されたプリントには授業料や学費に関する事項がダラダラと書かれていた。
『…いてててて…ず、頭痛が……』
「よく読んで印鑑押してこい」
流されたボケにムッ、としつつ、とりあえずプリントを貰う。
『…読む人いないんですけど。っていうか、強いて言うなら相澤先生に読んで欲しいんですけど』
「俺はお前の保護者じゃないと言ってるはずだ」
『…小さい頃は可愛がってくれてたのに…』
「今も可愛がってる」
『今は違う意味で可愛がられてます!!!』
「グダグダ言ってねえで持って帰れ」
『…今家に誰も居ないんですもん』
ポツリ、とそう呟けば、1つ深い溜息を吐いて彼の名を出す相澤先生。
「…白衝(シラツク)は?」
『忌引の日に帰ってきて、また関西へ戻りましたよ』
仕事忙しいんですって。と言えば、ポン、と頭に乗る相澤先生の手。
「そうか」
『…先生、痩せた?ちゃんとご飯食べてます?』
「あぁ」
『嘘だ。今度お弁当作ってきますね』
「要らん…」
何度か撫でられた後、嘉風、と呼ばれ先生を見上げる。
「無理はするなよ」
『…だったら一緒に住んでください』
「無茶言うな」
じゃあ、それ今週末までにな。と先生は職員室へ入っていった。
…学校に来れたのはいいものの、こういう手続きまで自分でしないといけないのは正直面倒くさい。
『(…まぁでも、ここに来ようと思ったのは……)』
「嘉風!」
『え?』
突然グイッと後ろに引かれた身体を操ることも出来ず、そのまま倒れるように腕を引かれた方へ飛び込んだ。
で、前を見れば割れた窓ガラスと野球ボールがあった。
…うっそ…危な……。
思わず腰が抜けそのまま座り込んでしまい呆然とする。
「おい!誰だー!!」
「誰も怪我してねえか!?」
『……』
「大丈夫か?」
ぼーっと見つめていると、そう声を掛けられ、振り返ると轟くんが居た。
『…なんで、こんなとこに?』
「たまたま通りかかっただけだ。怪我してねえか」
『うん…私は別に…』
立てるか?と手を差し伸べてくれた彼。
…優しいなぁ、轟くん。
私は彼の手を取ることなく、大丈夫だよ、と言って立ち上がると、嘉風。と呼ばれる。
『?なに?』
「…ちょっと聞きてえことがある」
『えっ?あ、うん……!』
彼について行こうとした時、チラッと見えた手。
『轟くん!保健室!』
「え?」
『手、怪我してるから』
「あぁ…気ぃつかなかった…」
『行くよ!』
背中を押し、保健室へ向かえば、どうしたんだい?とリカバリーガールが居た。
『彼が怪我して…』
「大した傷じゃねえよ」
『ダメだよ、ちゃんと治しておかないと』
「まぁまぁ…見せてみなさい」
と、リカバリーガールが轟くんの手を取るとすぐに処置をしてくれた。
「さっきすごい音がしていたけど、それかい?」
『あ、はい…野球ボール吹っ飛んできて…』
「気をつけなさいね」
はーい、と返事をし、2人で保健室を出たものの沈黙。
隣に並ぶ轟くんを一瞥すれば、手当てされた手をじっと見つめていた。
『どうかした?』
「…お前、ガキん頃に俺と会ってねえか?」
『…?会ってないと思うけど…?』
本当に心当たりがないため、そう返せば、そうか。と、言われた。
「…昼、まだだよな」
『?うん』
「八百万と耳郎とは約束してんのか?」
『いや、今日は先に食べてていいよって言ったから多分もう食べ終わってるんじゃない?』
「じゃあ食堂に行こう」
ラッシュが終えた食堂では、皆もうご飯を食べ終わったのか、いつも以上にガヤガヤとしていた。
轟くんとお互いお昼を頼み、空いてる隅っこの席で2人でご飯を食べる。
特に会話もないまま、ご飯を食べ終われば、ようやく紡がれた言葉は、
「お前、俺に手ェ握られんの嫌なのか?」
『…へ?』
「この間のマスコミの時も、さっきも。俺の手…振り払ったから」
潔癖か?と真顔で尋ねられた。
…轟くんって、意外と天然なのかな…。なんか突っ込むところ違う気が…まぁいいか。
『あー…えと…気に障ったならごめん。ちょっとトラウマあってさ…』
「トラウマ?」
『…うん』
「……」
『…ん?』
「?話さねぇのか?」
『えっ、今話す流れだった?』
おう。と頷く彼に、ん〜〜〜…と悩みつつ、ぽつりぽつりと話し出す。
『…小さい頃、私敵に襲われてさ。その時助けに来てくれたヒーローに手を伸ばしたわけね』
『たすけっ…!』
『私は助かったんだけど、そのヒーローは敵に殺られちゃって。それから、誰かの手を取ったり、私の手を取られたりするのは苦手。フラッシュバックする』
「そうか…悪い。無理やり聞いたみてえで」
『ううん、いいよ』
「…嘉風は、そのヒーローに憧れたのか?」
『まあ、憧れはオールマイトだけど…。でも、その人を一番応援してたし、誰よりも好きなヒーローはその人だったかな』
…あの頃、私はあのヒーローが、誰よりもカッコよくて、誰よりも誇らしかったんだ。
「じゃあ雄英に来た理由も…」
『色々あるけど、まずヒーローになりたいから。私みたいな思いをする子供が増えないようにしたい。
…轟くんは?』
私ばっかり話すのは不公平。と言えば、少し眉をひそめ、俺もそうだな。と言った。
「小せえ頃に、テレビでヒーローを見て、憧れちまった」
『へぇ…』
「…俺はNo.1ヒーローになる」
右手をギュッと握り、見つめる瞳はどこか憎悪を含んだ色をしていた。
『(よく、見てきた目…)』
「…そろそろ戻るか」
『…うん』
――午後の授業も終え、放課後になった。
「メシィー!」
「「ウェーイ!」」
「恥ずかしいからやめろ」
「全くですわ…」
『…』
6人で駅前周辺のファミレスまで歩いていく。
『(轟くん、何かあったんだなきっと…じゃなきゃあんな目しないもんな…)』
…ああいう目をする人は、ちょっと怖い。
昔の自分と、重なるから。
「嘉風?どうかしたか?」
『!びっ…えっ?』
いつの間にか隣に来ていた切島くんが私の顔を覗き込んでいて、割と近かった距離に驚いた。
「なんか、昼から上の空だったろ今日」
『…そう?』
「おう。何かあったら言えよ?あんま上手いこととか返せねえけど、愚痴とかならいくらでも聞いてやる!」
男らしいその発言に、切島くんはやっぱりカッコイイなぁ、と思いながら、ありがとう、と返せば、唖然とする切島くん。
『?』
「…いや、嘉風ってそんな笑い方すんだなーって」
『え、』
「そっちの方が俺は好きだぜ!」
『ーーっ!』
ニカッと笑い、おい!待てよ!と、前の4人に声を掛け、私の手を取り走り出す。
「ほら、行くぞ!」
『っ、切島くん!手!手!』
「ん?あ、悪ィ!調子乗った!」
『いや、平気…』
…何だろう、切島くんには、隠し事出来ない気がする…。
『(まぁ本人はホントに疑問に思ったことを言ってるだけだと思うけど…)』
でも、そのストレートさが、いい意味で私の胸に突き刺さった気がしたんだ。