ワールドトリガー

□第12話
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「瑠唯、デートしよう」

『ぶっっ!!!』


大学の食堂でご飯を食べていれば、突拍子もないことを言う准。

思わず、ゲホッゲホッ!と咳き込めば、大丈夫か?と背中を摩ってくれる。


『え゙ッ、ごほっ、な゙っ!』

「み、水!」


水をもらい息を整えて、ふぅ、と一息吐いて、えっと、と、言葉を紡ぐ。


『わ、私達…別に付き合ってない…よね?』

「そうだな!」

『じゃあデートって言わないんじゃ…?』

「?そうか……なら、今度の休み出掛けよう!」

『あー、うん……うん…行こっか……』


ちなみにどこ?と、聞いてみれば、最近改装が済んだテーマパークがある六野(ロクノ)市だった。


「この間の広報活動でそこのチケットを貰ったんだ」

『へえ。何人まで行けるの?』

「……2人がいいって言ったらどうするんだ?」

『………だめ…です…』


どこかいたずらっぽく言ってきた准からの視線を逸らし、ぼそりと呟けば、冗談だよ。と笑いながら私の頭を撫でる彼。


「チケット1枚で6人まで誘えるが…誰がいい?」

『んー……誰でもいいかなあ。あ、でもあんまり気い遣いたくないし、同い年で集まりたいかな』

「じゃあ柿崎たち誘うか!」


連絡は俺からしておくよ。とケータイで連絡を取る准を見つめていれば、ん?と柔らかい眼差しで私を見る。


『……その…ご、ごめ「謝るな」

「それは違うだろ?俺は一方的に瑠唯に気持ちを伝えただけだし、振り向かすって決めたから…。逆に謝られるのは嫌だな」

『!…ありがとうね、准』

「どういたしまして」


ニッと笑う准に、私も笑い返して、2人で午後の講義も受け、その日は終える。

――そして。


「あれ?橘高も?」

「そうなの!ごめんね、お邪魔するね!」

『人数は超えるけど、どうせなら羽矢さんも蓮ちゃんも誘っちゃえって思って。三輪隊今日は丸一日防衛任務らしいから、蓮ちゃん居ないけど』

「じゃあ綺麗に蓮さん以外集まったのか」

『まぁ、また7人でも遊ぼうよ』

「せやな」

「とりあえず全員揃ったな?」


入るぞ〜!と准や悠一、かっきーやたっつんが先に歩いてく。


『……羽矢さん、お願いだから余計なことしないでね』

「えー、こんな乙ゲーみたいな状況を楽しむなと?」


オタクの血が騒ぐよ〜。笑う羽矢さんは、傍から見れば可愛らしいんだろうけど、最早私からすれば悪魔にしか見えない。


「…っていうか、その羽矢(↓↑)さんって呼び方やめてよ」

『なんで?かわいいじゃん』

「呼ぶなら呼ぶで、王子くんたちと同じイントネーションにしてくれない?」

『えー、私以外この呼び方しないから、特別な感じで好きだよ』


個人的には気に入ってるんだけど?と、笑って言えば、うっ…と言葉を詰まらせる羽矢さん。


「……かわいいから許す」

『可愛くないけどね。ありがと』


チョロいな。とは言わずに、羽矢さんの肩を叩きながら4人についていく。


* * *


「瑠唯、橘高、疲れてないか?飲み物買ってくるぞ」

「ありがとう、嵐山くん」

『ありがと』

「あ、嵐山俺も〜」

「俺も頼むわ」

「なら一緒に行くぞ、嵐山」

「ありがとう柿崎!」

『えっ、2人で持てる?やっぱり一緒に行こうか?』


立ち上がる瑠唯に、そうだな…頼むよ。と笑う嵐山。ありがとう、と頭を撫でる柿崎。

…ああ、なんか……。


「ええな〜」

「!」

「って顔してるで迅」

「……生駒っち…」

「瑠唯って、ちっちゃいからっていうのもあるけど、なんか守ってあげたくなるよね。

迅くんの気持ちもよくわかるよ」

「…なんのことかな?」


含み笑いをする橘高にそう尋ねれば、わかってるくせに。と肩をポン、と叩かれる。


「幼馴染と、かつての隊長に取り合いされる罪な女の子…創作できそうな状況だよねえ」

「ははは、やめてくれ。そんなんじゃないよ俺は」

「ホントに?」

「……瑠唯が幸せになれるなら、俺はアイツがどんな選択肢をしてもいいと思ってるからな」

「うっっわぁ…重ッ!なんやそれ、どこの少女漫画やねん…」

「えっ、今の発言に対して酷くない?俺結構いいこと言ったよね?」

「でも好きなんでしょ?瑠唯のこと」

「フル無視やん橘高」


橘高にそう詰められ、否定も肯定もせずにいた。


「…まぁ、ただの幼馴染ではないよな、俺もアイツも」

「そらそうやろな。何年の付き合いやねん」

「14、5年?とか?」

「長いわね」

「でも、だからこそ"それ以上"踏み込めないんだよ」


2人と笑いながら帰ってくる瑠唯をじっと見つめ、言葉を紡いでいく。


「信頼してるはずなんだけどな。"何があっても"、今までの関係が変わらないって」

「……難儀だねえ」

「よく言われる」

「今日告れば?」

「また生駒っちはとんでもないことを……」

『悠一、好きな人居たの?』


エッ、と思わず変な声を漏らせば、ほら、買ってきたよ。と知らぬ間に隣にやってきていた瑠唯は俺の好きなジュースを差し出していた。


「あ、ありがとう……」

『質問に答えなさいよ。私何も聞いてないけど?』

「?……!?えっ…なに、好きな人出来たらお互い報告してるの…?」

「『うん』」


頭を抱える橘高に笑っていれば、ねえ、聞いてる?と俺の頭を叩く瑠唯。


「あー、いないいない。まじで。好きな奴なんて居ないよ」

『ふーん…』


あっそ。と言うと、かっきー。と柿崎の方へと行く瑠唯。


「…ねえ、彼氏とか彼女出来ても報告してるの?」

「んー、まあお互い察してるかなその場合は」

「好きな人は報告するんかい」

「応援しろよって意味でな」

「はぁ?変なの…」


呆れた様子の橘高に、だよなあ。と空を仰ぎながら同意しておいた。


「………変わってるよなあ」

「「うん」」

「ハモるのやめて……」
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