ワールドトリガー
□第9話
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地形を利用し、激しい撃ち合い、斬り合いで間合いを取り、一旦退いていく。
「…次はこっちを分断しに来そうだな」
「その場合はどうする?」
「別に問題ないよ。何人か嵐山たちと瑠唯に担当してもらうだけでもかなり楽になる。風間さんがそっち行ってくれると嬉しいんだけど、こっち来るだろうな」
『嵐山隊の足止めなら三輪隊じゃない?撃ち合いするなら、編成的に三輪隊くらいだし。あとは公平もついていきそう』
「ですね。どうせなら分断されたように見せかけて、こっちの陣に誘い込む方がよくないですか?」
藍ちゃんがそう言うと、准がニッと笑った。
「そうだな。迅と瑠唯と連携して迎え撃とう」
「おっ、来たな。上手いことやれよ、嵐山」
「そっちもな、迅」
『頼むね、藍ちゃん、みっちー。…あ、賢も』
「「了解」」
「《ちょ、俺の扱い!?》」
『返事は?』
「《了解です!!!》」
嵐山隊と別れ、迎え撃とうと屋根から降りようとすれば、さっきより増えている人数。
しかも、
『…完ッ全に対私だよね、あの人選は。狙撃手も増えてなきゃいいけど』
「駿に、辻、犬飼か…まぁ、二宮さん居ないのはラッキーじゃねえの?」
『そういう問題じゃないわバカ』
…攻撃手と銃手持ってきたってことは、接近戦をさせるつもりで…しかも、白弧を使わせないようにするための。
『ふむ…まぁ、何とかなるか』
「おー、頑張れよ」
『そっちこそね』
悠一と共に下へ降りれば、案の定太刀川さん、風間隊が悠一の方へ、駿くん、新ちゃん、犬飼が私へと向かってくる。
ガキィン!!
『なーんで君らまで居るわけ?』
「風間さんに"今なら無条件で瑠唯さんと闘える"って聞いたんで、久しぶりに剣を交えようかと」
「俺は嫌がらせ要員らしいですよ」
「俺も瑠唯さんに会いに来た!」
『あぁそう…二宮さんは?』
「今日ウチは非番なので、すぐに来れる距離に居ないらしいです」
『おー、それはよかった。
で、駿くんや犬飼は別だけど…新ちゃんは師匠に勝つつもりなの?』
「いえ、あくまで足止め目的ですから」
ガキン!と剣を弾き、一定の距離を保とうとするにも、駿くんがグラスホッパーを使い距離を詰め、そこへ新ちゃん、そして隙を見て撃ってくる犬飼。
…さすがは元A級だよな。無駄がない。
「《瑠唯、三輪隊の狙撃手組と、風間隊もそっちに意識を向けてる。気をつけろよ》」
『《了解》』
と、インカムで聞いたハナから飛んでくる弾丸。
…攻撃を受けつつ、弾丸を避けるのはなかなか面倒くさいな。いくら"視える"とはいえ、このまま続けるのはあんまよくない。
悠一もサイドエフェクトでわかるとはいえ、面倒だろうし。
『《…狙撃手のどっちか、先にベイルアウトさせに行く?》』
「《そうだな…戦力削れるなら削ってほしいとこだな》」
『《オッケー》
…遊びたいのは山々だけど、負けられないの、ごめんね?』
駿くんのスコーピオン、新ちゃんの弧月を制し、犬飼が撃ちだした瞬間にメテオラをぶつけて土煙を立てる。
全体的に煙を立たせた後、バッグワームでレーダーから消え、透くんと、章平くんの元へと向かった。
『《悠一、狙撃手2人引き受ける代わりに、3人がそっち行くから。堪えてよ》』
「《了解》」
サイドエフェクトを使いながら遠巻きに姿を探せば、壁の影から見えるのは割と小柄な身体。
足音を立てずに、攻撃の範囲内まで詰めれば、
ザッ…
「!?なッ…」
『まずは1人目』
「奈良坂せんぱ…!」
白弧でトリオン供給器官を破壊し、ベイルアウトさせれば、次は透くんを探しに行く。
「《無茶して深追いすんなよ。浮けば当真に狙われる。それと、風間さんあたりがそろそろ"気づいてる"…
こっちに来てくれるとありがたい》」
『《…わかった。牽制だけするよ》』
400m程先に視える透くんの姿。
イサミンに気をつけながら、彼よりも高い場所に位置取りをし、手元を狙う。
そして、パァン!と撃った瞬間に、その場を離れ、すぐに悠一の元へ合流を目指す。
『《透くんのイーグレット破壊した》』
「《なんだそりゃ。後で怒られても知らねえぞ》」
『《ふふっ、たまには年下に怒られるのもいいかもね》』
「《とりあえず合流よろしく》」
レーダーで悠一の居場所を辿り、彼の後ろに飛び降りれば、太刀川さん達が反応した。
「チッ…」
「この2人を合流させると面倒なんだよな…」
『悠一、どうすんの』
「とりあえずこのままで」
分断させたがってる向こうに乗らないよう、とりあえず攻撃を防いで下がっていれば、太刀川さんが止まった。
「ずいぶん大人しいな、迅、瑠唯。何を企んでる?」
「まともに戦う気ないんでしょ、迅さんも瑠唯さんも。単なる時間稼ぎで、今頃きっと玉狛の連中がネイバーを逃がしてるんだ」
きくっちがそう言うも、蒼也さんが、いや、と否定する。
「迅は予知を使って守りに徹しながら、こちらのトリオンを確実に削っている」
「ああ…成程」
「こいつらの狙いは、俺たちをトリオン切れで撤退させることだ」
「あらら……」
と、こちらの狙いが完全にバレたところで、私は白弧を鞘に収めた。
「あくまで俺たちを帰らせる気か。"撃破"より"撤退"させた方が本部との摩擦が小さくて済む」
「え、なんの話?」
「…誰か緑川に説明してやれ」
「説明しなくていいって言ったの太刀川さんですよ」
「…戦闘中に後始末の心配とは大した余裕だな」
蒼也さんがそう言うと、きくっちが、私たちを無視してブラックトリガーを取りに行こうと提案していた。
…ああ、これはもう無理だな。
トリガーをオフにし、悠一の横腹に肘打ちをする。
「(トリガーをオフにしただと…?)」
「(何をするつもりだ……)」
『…結局こうなるんじゃんか。ホント、頼むよ』
「ははっ、わかってるって。
…悪いな、ブラックトリガー使わせちまって」
「「!?」」
「ブラックトリガーだと!?」
『…百華起動』
「「!!」」
ブラックトリガーを起動させれば、自身の周りにサクラの形のトリオンを纏う。
「瑠唯…お前…!!」
カチ、とまたハマる音。
『…ふぅ……』
「……さて、と…」
悠一が風刃を発動させ、私はトリオンで弧月を作り、お互いほぼ同時に攻撃を放つ。
『旋空弧月』
「なっ…」
「はぁ!?」
「「!!!」」
悠一はきくっちを、私は新ちゃんと犬飼の首を吹っ飛ばす。
"戦闘体活動限界、ベイルアウト"
「出たな"風刃"…それに…瑠唯がブラックトリガーとか…」
「よし、いくぞ瑠唯。プランBだ」
『了解』
相手が警戒し、私たちとの距離をしっかり取り出せば、こちらもじっと相手を伺うように動きを止める。
「太刀川さん達にはきっちり負けて帰ってもらう」
「いやいやいや…こんなわけのわからねえまま帰れるかっての…瑠唯がブラックトリガー?詳しく言え」
『そのまんまですよ』
人差し指と親指で銃の形を作り、右の方へ向けてクイッと動かせば、パァン!!と空中で爆発が起きた。
『…視えてるよ、透くん』
「(狙撃もダメか……)」
「そのサクラがトリガーということか…」
『…そうですね』
「おいおい、お前のチートみたいなトリオン量+ブラックトリガーとかもう意味わかんねえぞ…どういう性能だ?」
『…ふふ、どんなものか試してみます?』
ニコリと微笑んで、大量のサクラを駿くんへと飛ばせば、うわっ!と言って身体はギリギリ避けた。
「緑川!」
「?足に当たったけど、別に何も…?!」
『まずは、機動力から奪うのが一番だよね』
駿くんの足に当たれば、そこからトリオンを吸い取り、片足を失くす。
「…なるほど」
「さて、長引かせてもいいことはねえからな。さっさと終わらせるぞ」
『了解』
と、悠一が風刃を出した瞬間、ステルスになる風間隊。そして、太刀川さんと駿くんが詰めてくる。
『懲りないね』
「強い人と闘うのは好きだからね」
サクラでシールドを作りながら攻撃していけば、徐々に削れていく駿くんの身体。
『悪いけど、風間隊はステルス入っちゃったし、悠一の方にも行かなきゃ。また今度遊ぼうね、駿くん』
「!」
動きを先読みし、供給器官を破壊してから悠一達の向かった方へ走る。
『(多分、透くんも来てるはずなんだよな…だったら……)』
透視で悠一の姿を確認できる範囲まできて、透くんの姿を探せば、すぐ目の前で待機していた。
相手もこちらを警戒してるのか、周囲をよく見ている。
…ふむ、とりあえず攻撃できるとこまで近づくか。
と、足を進めていれば、悠一がガレージに入るのが視えた。
『…勝負あったかな』
弧月を作り、透くんにわざと気づかれるように近づけば、顔を歪めた彼。
『狙撃手は姿を見つけられた時点で終わりだ。さて、どうしようか?』
「……」
追い詰めれば、悔しそうな顔で、わかりました。と銃を下ろした透くん。
私も百華をオフにして、いつものトリガーを起動し、悠一達の勝負を見守っていた。
そして…
『蒼也さんも太刀川さんもベイルアウトか。終わったね』
「…そうですね」
『あ、心配しないで、何もしないから。蓮ちゃんから指示飛ぶんじゃない?』
と、言っていれば丁度来たらしく、三輪達と合流します。と彼らの方へと向かった透くん。
「んじゃ、終わったことだし…行くか」
『はぁぁ…そうだね』
「そんな嫌な顔すんなよ。大丈夫だっての」
『マジで頼んだからね、悠一』
「はいはい」