ワールドトリガー

□第8話
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パァン!パァン!

一定の間隔で鳴り響く音。狙撃手の訓練場で、私は久しぶりに1人で撃ち続けていた。

そんな中、あ、と隣から声がしたので手を止めると、そこに立っていたのは、


『げっ、イサミン…どうしたの?』


げっ、ってなんですか酷いな。と笑うイサミンは、私の腕を掴んだ。


『……嫌だ』

「何も言ってないですよ」

『なんか、嫌な予感がする』

「おお、さすが瑠唯さん。わかってるならさっさと行きましょう」

『いーやーだー!』


イサミンにより無理矢理連行されたのは会議室だった。

で、そこに並ぶ面々を見れば、察しはつくもので。


『……ヤです』

「まだ何も言われてねえだろ」

『メンツ見りゃわかります。遠征の話でしょ?私行かないよ』

「だろうな〜。そう言うと思ってた」

『あ、冬島さん、お久しぶりです』

「よう、久しぶりだな」

「こら!余計な話をするな」

『え〜だって〜〜』

「異論は認めん」


ピシャリと言い放つ城戸さんに、私も言い返す。


『…私、玉狛の人間だし、本部の部隊じゃなくて玉狛第一所属で考えてほしいんですけど』

「これは決定事項だ」

『!』


カチ、とハマった今この瞬間。

…あぁ、ここだったんだ。嫌だなぁ。

どれだけ捻じ曲げようとしても、曲げられない、避けられない未来。


『……はぁ…わかりましたよ』


クシャッと髪の毛を掴んでそう言えば、視えていたのか。と、ボスに言われる。


『まぁ…薄らと…』

「そうか…。悪いが、行けるか?」

『ボスは狡いなぁ。そんな言い回し、行くしかないじゃないですか』

「決まりだな。頼んだぞ、国城」

「いつもすまないな」

『いえいえ、忍田さんが謝ることではないんで。

で、太刀川隊でいいですか?』

「あぁ。期待しているぞ」


みんなで会議室から出た後、さり気なくその場から居なくなろうとすれば、太刀川さんに引っ張られる。


「おいおい、どこ行くつもりだ?お前はこっちだろ?」

『あ…えへ…?』

「瑠唯さん、目ェ離すとすぐどっか行きますもんね。鈴(という名のGPS)ついた首輪でも付けます?」

『冗談でもやめろ、公平』


そのままズルズルと太刀川隊の作戦室へ連れていかれ、中に入れば柚宇ちゃんと唯我くんに出迎えられる。


「!瑠唯さん、お久しぶりですね」

「瑠唯さ〜ん」

『久しぶり〜、唯我くん。柚宇ちゃんはこの間ぶり』

「瑠唯さん、新しく出来たカフェまた行こうよ〜」

『お、いいね。太刀川さん、お金ください』

「なんでだよ」


とりあえず遠征の話になり、一通り柚宇ちゃんと(一応)唯我くんにに話し終えた後、みんなで訓練することになった。


「瑠唯さん、狙撃手でウチ入るんですよね?なんで一緒なんすか?」

「俺の遊び相手」

『出ていきますよ』

「冗談だ」


10本ずつグルグルと回って訓練をしていれば、時間はあっという間に過ぎていて。

みんなで食堂でご飯を食べた後は、再び作戦室に戻る。

部屋に入るや否や、太刀川さんと柚宇ちゃんはゲームを始め、唯我くんがお茶を淹れにいき、私と公平はソファに掛けてゲームを眺めるのだった。


「わーい」

「くそー」


わいわいと盛り上がる目の前のゲームに、ふっ、と思わず笑ってしまった。


「どうかしました?」

『ううん、楽しそうだなって』

「玉狛はどんな感じなんですか?」

『そうだなぁ…。こことあんま変わんないかなぁ』

「変わんないんすか」


そう言って笑う公平に、思い出す玉狛での毎日。

…桐絵ちゃんと陽太郎が騒がしいし、とりまるは冗談言って桐絵ちゃんで遊ぶし、栞ちゃんもたまに乗ったりするし、悠一だって…。レイジさんはツッコミ役というか常識人というか…。

そんな何気ない1日、平和な1日、みんなが当たり前にいる1日…。

それは、支部も本部も変わらない。


『(…あぁ…大好きだなぁ…)』

「瑠唯さん、たまにそういう表情しますよね」

『え?』

「俺、好きですよ」

『!…マセガキめ』


そう言って頭を小突けば、すみません。とケラケラ笑う公平。

それから、お茶を飲んでゆっくりした後、支部へと戻る。


「瑠唯」

『あ、悠一。どうしたの』

「今度遠征行くんだってな。頑張れよ」

『わかってたくせに。それ言いに来ただけ?』


そう言うなら代わって欲しいんだけど。と言えば、そりゃ無理だな。と笑ってぼんち揚を食べる悠一。


「しばらく会えねえから、こうして喋りたいだけだよ」

『……寒ッ、え、なに、どうした?』

「お前ホント失礼だよな」


幼馴染のことくらい汲み取れよ。と私の頭を撫でる悠一に、それはこっちのセリフだし。と返しながら屋上へと上がる。


『で、何が視えたの』

「…別に、大したことじゃないよ」

『嘘つき』

「本当だっての。…昼寝してたら、夢見ただけだ」


ポスンと私の方に重心を預ける悠一。


『夢かあ…。最上さん元気にしてた?』

「してたしてた。相変わらずだったよ」

『そっか。よかったじゃん』


私も悠一の方へ体重をかけると、ふっ、と笑った悠一。


「お前も、元気そうだよ」

『…それは、現実の話?』

「さあ、どっちだろうな」


引き止めて悪かったな。ありがとう。と中へ入る悠一に続いて私も入り、お互い自分の部屋に戻った。


『(何を見たのだろうか、あの幼馴染は)』


…相変わらず、読みづらいな。


『(…まぁ、それも今更か)』


――それから、遠征に出るまではあっという間で、特訓やら遠征先での動きのシュミレーションやらでほぼ毎日本部へ行き、何となく以前よりも更に太刀川隊に馴染んでしまった自分。

そして、


「隊服も合わせてくれたんすか?」

『じゃなきゃ浮くじゃん。それにわかりやすいでしょ?』

「ようこそ、太刀川隊へ」

『入りません』

「お前ら、いい加減私語はやめろ。緊張感を持て」

『はい蒼也さん!!』

「変わり身早ぇな」


遠征艇の前に集まるのはボーダートップ3の、太刀川隊、冬島隊、風間隊の3隊。


「…では、頼んだぞ。ボーダー精鋭部隊」

「『了解』」
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