ワールドトリガー

□第7話
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『(ラブレター…信じていいのかな……)』


…悠一は、一体どこまで視えてるんだろう。もしかして、こうなることを待っていた、とか。


『(有り得るな…アイツの考えることだし)』

「考え事か?余裕だな」

『ぐっ…げほ!』


鳩尾を蹴られたかと思えば、髪を引っ張られ無理矢理顔を上げさせられた。


「余計な約束しやがって…何としてでも断れよ。旅行になんぞ行かせんからな」

『…言われなくても』

「まだ強気でいるか。呆れる」

『い゙っ!』


放り投げられれば、その瞬間に首から力が吸い取られるような感覚。


『(このままじゃ、ダメだ。トリオンがなくなる前に、やんなきゃ…今度こそ負ける…!)』

「変な真似はするなよ。まあ、トリガーが使えない以上、トリオン体になることも不可能だからな…。お前の身体が傷つけれることに変わりはない」

『…だろうね、あんたはそう思うだろうと思ってた』

「あ?」

『本部の意思とそぐわない、トリオン兵を作って何をするのか知らないけど、私の力はそんなもののためにあるんじゃない…!』

「舐めた口を…」

『私は信じるよ、みんなを。絶対にこんなところから抜けてやる!

もう、お前なんかに縛られてたまるか!!!』

「!!おい!お前ら!入ってこい!こいつを…」

『トリガー起動!!』

「!?トリガーだと!?」


ブラックトリガーを使い、男達を振り切り封鎖されていた扉を蹴破って、すぐにトリガーをオフにする。

そして、全力で上を目指す。


『(久しぶりに使った…一瞬しか出てないけど…反応拾ってくれてるよね…!!)』

「捕まえろ!」

『っ!』


男達の手が伸びてきた瞬間、

ボコォ…ドォォン!!!


「『!?』」

「ちょっとやりすぎじゃないすか」

「瑠唯さん生身だからやりすぎるなって言ったのに」

「そーだよ。なにやってんのいずみん先輩」

「犬飼先輩はともかく、京介と緑川!お前らまで文句言うな!」

「おーい、瑠唯〜。いるか〜」


土煙が晴れ、目の前に現れたのは…。


『とりまる、犬飼、駿くん、公平に悠一…?!

…え…どういうメンツ…?謎すぎるんだけど……』

「会って早々気になるのそこですか!?」

「みんな迅さんに誘われたんですよ。出水先輩は戦力的に必要だと思ったので」

「あ、太刀川さんは作戦に向いてないと思ったので呼んでません」

「瑠唯さーん!無事?」

『無事は無事だけど…とりあえずコイツらからどう逃れるか考えなきゃ』


ジリジリと迫る男達に、私の前に立つみんな。

悠一は私の隣に来ると、手にあるものを置いた。


「瑠唯、コレ」

『!私のトリガー…取り返してくれてたの?』

「あぁ、でも、先にこっちをどうにかしねえとな」


そう言って私の首を触る悠一。


「チッ…やはり君が邪魔するか…悠一くん…」

「悪いねおじさん。おばさん達に瑠唯を任せられてたから、俺も全力でいくよ」

「ねえ、迅さんホントにいいの?」

「あぁ、城戸さんから許可もらってる」

「これで相手がトリオン体じゃなかったらシャレにならないっすよ」

「ま、大丈夫だろ。とりあえずやるぞ」


全員戦闘モードに入れば、悠一が私の手を引く。


「お前は戦うな」

『!?』

「トリオン反応で追いかけられるのはあっちも同じだ。おじさん達を適当に抑えて地上に出れば大丈夫。

俺のサイドエフェクトがそう言ってる」

『……ありがとう、悠一』

「…いや、悪いな。2週間も我慢させて」

「ちょっと、俺の前でイチャつくのやめてくれます?迅さん」


アステロイドを撃ちながら私たちの元へ来た犬飼。


「瑠唯さんを上へ逃がせばいいんですよね?」

「あぁ」

『犬飼…』

「今度はちゃんと守るんで安心して下さいね、瑠唯さん」


いたずらっぽく笑った犬飼は私たちを守るように攻撃をしつつ、共に上へ向かう。


「くそっ…こちらも反撃しろ!」


アイツのその言葉から、激しい銃撃戦が始まる。


『(悠一は、アイツの手下が撃ち合いするのを読んでこのメンツを集めたのか…?駿くんは多分不意つくために呼んだんだろうけど…)』

「瑠唯、じっとしてろよ」

『えっ?うわっ!?』

「トリオン体の俺が担いで走る方が早い」

『それはわかるけど…尻を触るな!』

「迅さん!!」


後ろからの攻撃を犬飼が防いでいれば、今度は前からも敵が現れる。


「おーおー、すげえなおじさん。地下だからいいものの、地上だったらやべえぞ」

『そうじゃないでしょうが!さっさと降ろして!私も闘う!』

「さっき闘うなって言ったところ…『でも!』

『守られてばっかりは、性にあわない!』


ったく…と呆れる悠一を他所に、私はトリガーを起動させる。


「長いこと相手はしないからな」

『わかってるよ。アステロイド!』


ドドドド!と攻撃をし、階段を登って出口へ向かおうとした時、階段の付近で犬飼が足を止めた。


『犬飼!?』

「俺こういうのやってみたかったんですよね〜。先に行ってて下さいってやつ」

『バカ!何言ってんの!』

「…無茶はするなよ、犬飼」

「わかってますよ、ちゃんと瑠唯さん守ってくださいね、迅さん」

『っ!犬飼!』


グイッと勢いよく悠一に手を引かれ駆け出した。

追っ手を凌いで出口が見えてきたところで、ソイツは待っていた。


『……』

「出るのは自由だが、首のそれはどうするんだ、瑠唯」

「本部で解析してもらうよ。なんせ、あそこはおじさんが育てた人達ばっかりだしな」

「それまで持つかは別だろう?」

『!まさか…』


物陰から現れたのはモールモッドに似たトリオン兵。


「コイツのトリオンの供給源はお前だ、瑠唯」

『!』

「首のを外さない限り、お前のトリオンを吸収し、何度でも立ち上がるぞ」

「父親のやることとは思えねえな…」

『…人としてどうかしてるよ、ホントに』


首のやつはどうしたら外してくれる?と尋ねるも、そんなことするわけないだろう。と一蹴される。


「瑠唯」

『?なに、ゆうい…』


スパンっ…


『えっ、はっ…?なに…?』

「ちょっとだけ傷いったが…ちゃんと取れたぞ」

『!』

「な…!?無理矢理…破壊したのか…!?」


悠一は引き剥がした機械を地面に落とし踏み潰すと、風刃を構える。


「おじさん、これ以上こいつに関わらないでよ」


そう言って何振りかすると、目の前のトリオン兵がバラバラになる。

そして、ガクンと膝から崩れ落ちたアイツ。


「瑠唯はモノじゃない。ましてやおじさんのオモチャでもない。瑠唯は俺の大切な家族で仲間だ。

傷つけるような真似は、もう二度とさせない」


悠一がそう強く言い放つも、はんっ、と鼻で笑ったアイツ。


「貴様らがどう足掻こうが結局私は本部から動くことはない…!なんせ、ボーダーへの金と技術は私が…」

「それはもう大丈夫ですよ、国城さん」


遮るように入ってきたのは、外務・営業部長の唐沢さんだった。


「また新たなスポンサーが見つかってね、貴方よりも多大な額を出してくれる」

「な…ッ!?」

「開発室の技術ももう貴方が居なくとも申し分ない」

「ま、待て…!そんな…!」

「城戸司令も、さすがにもう意見は聞いてくれないだろうな」


唐沢さんによって更に追い詰められたアイツは、気力を無くしたかのようにその場から動かなくなってしまった。

――私が地上へ上がれば、外にはボスや玉狛のみんなが待っていて、安全を確認してから、とりまる達の撤退命令が下る。


「もう!ほんっっっとに!あんたは!!!」

『いててて、ごめんってば桐絵ちゃん!盗聴器付けられてたから下手なこと言えなくて…』

「そうだけど!そうだけどそうじゃないでしょうが!!!」

「迅さんから聞いた時は本当に心配したよ…無事でよかった…」

『栞ちゃんも、ごめんね』


と、玉狛で話していると、撤退してきた皆が帰ってくる。


『みんな!よかった、無事で…』

「何言ってんですか。瑠唯さんは自分の心配をして下さい」

「そうだよー、迅さんから話聞いた時びっくりしたよ俺」

「俺もまさかこんなことになってると思わなかったな。ホントにやめてくださいよ、瑠唯さん」


とりまるや駿くん、公平がそう私に言ってる中、犬飼が私を抱きしめる。


『ちょ、いぬか…「よかった」…!!』

「瑠唯さん、お願いだからもうこんな無茶はしないで下さいよ」


ぎゅっ、と私を抱きしめる犬飼。


『…ごめん、犬飼』

「戻ってきてくれてよかった」

『うん、だから言ったじゃん、戻るって』


犬飼の背中に腕を回し、ポンポンと叩いてやると離れる身体。

そして、そのタイミングで悠一が寄ってくる。


「…瑠唯、おかえり」

『…!…ただいま、みんな』


精一杯の笑顔でそう言えば、みんな私に抱きついてきた。

…あぁ、やっぱり、ここが私の帰る家だ。どんなに辛いことでも、彼らのためなら耐えられる。

でも、自分が我慢するだけじゃもうダメだってことはわかった。仲間を思うなら、自分の身もちゃんと守らなきゃ。

みんなで一緒に戦っていくんだから。


「よーし、瑠唯さんも無事帰ってきたし、本部まで誰が早いか競走しよ!」

「じゃあ緑川、お前グラスホッパー禁止な」

「よーいどん!」

「聞けよ」

「最下位は食堂奢りで!玉狛も参加してよ〜!」

『お、じゃあ本気で行くからね!』

「手加減しないわよ!」

「大人気ねえなお前ら…」
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