ワールドトリガー

□第6話
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『お母さん!おばあちゃん!』

「これ…お父さんの形見よ…瑠唯ちゃん」

『なに…おじいちゃん…?…ペンダント…?』

「瑠唯ちゃんを護ってくれるお守り…ちゃんと持っててね…」

『おばあちゃん…!』

「瑠唯…あなたは…ちゃんと生きるのよ…」

『お母さん!』

「どれだけ辛くても…瑠唯が傍に居れば…辛くなかったの…お母さん、幸せだった…」

『お母さん!やだよ!やめて!一緒に生きよう!』

「生まれてくれてありがとう、瑠唯」

『お母さん!!!!おばあちゃん!!!!』



『……』


…まだこんなにも鮮明に覚えてるんだ。

ふぅ…と息を吐きながらもう一度目を閉じると、頭で流れる映像。


「これは決定事項だ」

「…もう、このままここに居ろよ」

「俺は瑠唯を信じるよ」

「まだ、一緒に居たいって言ったら…どうする…?」

「久しぶりだなぁ、瑠唯」



『ーーーっ!?』


完全に目を覚ませば、静かな部屋でカチ…カチ…と響く秒針の音。

…あの、未来は…いつの……。ついこの間も見たばっかなのに……。

悠一のサイドエフェクトとはまた違う。未来が視えるとは言え、私のはちぐはぐなのだ。時系列は関係なく、未来で起こることだけが視える。


『(…気持ち…悪い………)』


気分転換に何か飲もうかとゆっくり起き上がれば、頬にツゥと冷たいものが伝った。


『…泣いてたんだ…』


静まる廊下を、なるべく物音を立てないように歩いて、台所へ向かうと扉から光が漏れていた。


『(誰か起きてるのか…?)』


ガチャ…と静かに扉を開ければ、ソファで寝ている悠一の姿があった。

…あれ、今日は非番じゃなかったっけ。街に行ってたのかな。また何かやってたのか。休みの日くらいゆっくり休めばいいのに。疲れてんだな。

珍しくこんなところで寝る幼馴染に、言いたいことが山ほど出てきたが、起こして言う訳にもいかないし、ブランケットを掛けてあげる。

静かに台所に移動して、ホットミルクを作り、悠一の向かいのソファに座って一息吐いた。


『…なんか、いつも以上に嫌な未来だったよ…悠一は、いつもこんな感じなんだね』


厄介なサイドエフェクト持ってるよな。と、笑いながら寝てる彼に語りかけるように言う。


『…ねぇ、悠一の見てる未来に…私はいる…?』

「……」

『ちゃんと…生きてる…?』

「……」

『……私は…生きてても「瑠唯」


顔を上げれば、眠たそうな眼でこちらを見つめる悠一の姿。


『!ご、ごめん!起こしちゃったね。風邪引くから部屋で寝なよ』


急いでホットミルクを飲み干し、部屋を出ていこうとすれば、待てよ。と止められる。


「ん…」

『え?』

「ちょっと来い…」

『え…あ…うん』


手招きされ、悠一の傍でしゃがんで、どうしたの?と尋ねると、ブランケットをガバッと広げた。


『…え?』

「寝ろ。うるせえから…」

『は?いや、ゆうい…、うわっ!』


グイッと引っ張られ、私を抱きしめたまま寝息を立てる悠一。

丁度悠一の胸の位置に頭が来たため、ドク、ドクと心臓の音が聞こえる。


『………お休み、悠一』


そう呟いて私も身体を寄せれば、返事をするかのように、さっきより強く抱きしめられた。

――翌日。


「……ねえ、コイツらこれで付き合ってないってどういうこと?意味わかんないんだけど」

「今更だろう」

「距離感おかしいことに気づいてないんスかね」

「瑠唯さんは気づいてないんじゃない?迅さんは確信犯だろうけど」


なんて会話をしていたのも知らず、私と迅は何事もなかったかのようにその日を過ごした。


――――――


『招待券?』


しばらく何も無い、いつも通りの日々を送っていれば、大学の友人が唐突に渡してきたソレ。


「そ!しかもお食事券付き!嵐山くんか幼馴染くんでも誘って行ってきなよ」

『何故その2人…』


とりあえずチケットを受け取り、どうしたものかと悩む。


『(2人しか行けないのかぁ…栞ちゃんか桐絵ちゃん行くかなあ……)』


…もしくは高校生の誰かに譲ってあげるか…。

うーーん、と歩きながらチケットと睨めっこしていれば、瑠唯!と肩を叩かれる。


『!!准!おはよう。広報の仕事お疲れ』

「ああ!ありがとう!さっきからずっと下向いて歩いてたけど何か……ん?何持ってるんだ?」

『あー…友達から貰ってさ、ほら、最近新しく出来た水族館の招待券』

「!それ!!」


珍しく食いついた准に、えっ、と驚けば子供みたいにキラキラした目をする彼。


「そこ!行ってみたいと思ってた場所なんだ!」

『え、そうなの?じゃあこれ准にあげ「一緒に行っていいか?」

『……ん?』

「?瑠唯も行きたいんだよな?」

『あ、いや、私はどっちでもいいの!准にあげるし、行きたい人誘って行ってきなよ』


ぽん、と渡せば、じゃあ…と私の手にチケットを置き返した彼。


『?』

「俺、瑠唯と行きたい」

『…え?』

「ダメか?」

『あ…いえ…ダイジョブ…です』

「よし!なら早めに予定合わせよう!また連絡するよ」


さ、次の講義室行かなきゃ、遅刻になる!と私の手を引いて歩き出す准。


『(あれ?なんか、結局准と行くことになっちゃった…)』


…まあ、なんとかなるか。
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