ワールドトリガー
□第3話
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「そう言えば、瑠唯さんて彼氏とかいないんですか?」
『ぶっ!』
防衛任務を終え、報告の為に本部へ寄った後、たまたま嵐山隊に遭遇したので食堂でご飯を一緒に食べていれば、みっちーがそんなことを言い出した。
「…なんかすみません。ぶっ込んで」
『げほっ!げほっ!いや、ほんとに…え?どうしたのみっちー?』
「いえ、純粋に気になって」
『別にいないよ、そんな人。告白されたこともないし』
「瑠唯さん、高嶺の花みたいに思われてるんじゃないんですか?」
『それは藍ちゃんでしょ』
「確かに。瑠唯さん、黙って大人しくしてたらかわいいですもんね」
『オイ賢、頭ぶち抜くよ』
「嵐山さん、瑠唯さんて大学でもそれらしい人居ないんですか?」
綾ちゃんが准にそう尋ねると、ん〜。と思い返してる准。
「特に心当たりはないな…」
「えー、つまんないですね」
「ほら、護ってあげたいって思えないからじゃ…」
『賢、いい加減黙れ…!』
「まあ瑠唯は基本的に俺と一緒だからなぁ…他の人と一緒に居るとこは…。…?」
「「………」」
「?」
その言葉に何かを察したような顔のみんな。
「…あの…えと…そう、ですか…」
「…なんとなく理由がわかりました」
「大変ですね、瑠唯さん」
『でしょ。もう慣れた』
「?なんの話だ?」
『ほんと、そういうとこ』
――――――
翌日。
いつも通り、午前中の講義を終え、お昼も食べ終わり午後の講義が始まる直前、私と准のケータイがほぼ同時に鳴る。
『……非番の私たちのケータイが鳴るって…』
「あぁ…珍しく警戒区域外に出そうだ」
『しかもすぐそこっぽい』
「騒ぎが大きくなる前に行かなきゃな」
すみませーん!緊急で出動になりました〜。と叫びながら講義室を飛び出れば、え?なんで国城さん??と声が聞こえた。
「…いいのか?」
『…まあ隠してても(前みたいに)面倒なこと起こるし、どうせいつかバレるだろうし、今みたいに緊急の時に動けなきゃ意味ないから』
「瑠唯がいいならそれでもいいけど…」
『いいよ』
准的に、大学には他にもA級隊員もB級隊員も居るから、と言いたかったのだろうけど、連絡が来た以上、私も行くしかない。
「あ、瑠唯と嵐山発見」
「!太刀川さん!それに来馬さんと堤さんも!」
『連絡見ました?すぐ近くでゲートが発生してるっぽいです。急ぎましょう』
「なんか今日はいつもより気合い入ってんなー」
『そうですか?とにかく行きますよ』
トリガーを起動させ、現場へ向かうと通常のネイバーと大型が数体居た。
「今日はそっち使うのか?」
『こんな街中でアステロイド使わないですよ。使い慣れてる准ならいいですけど、私なんかが区域外で使ったら威力抑えるのも大変なんですから』
「命中率高いくせによく言う…」
「さり気なくトリオン量の自慢…」
『さて、さっさと片しますか』
「よし、なら…『あ、待って』
『前線に行くのは私と太刀川さんだけでいいよ』
「!…え…なに、今日ほんとにどうした、お前…」
『たまには共闘"してあげます"』
ニィと口角を上げて言えば、この野郎、とどこか嬉しそうに笑った太刀川さん。
「……」
『じゃあ、頼んだよ准。来馬さん守ってあげてね。何かあったら鋼くんと太一くんに怒られる。
堤さんもよろしくお願いします』
「ええっ!?」
「!あ、あぁ、こっちは任せろ」
「わかった!」
准達が一般市民の方へと向かうのを見送り、私と太刀川さんは目の前に迫るトリオン兵を見つめる。
『せっかくですし、どっちが街を破壊せず、素早く倒せるかでも勝負します?』
「いいぜ。勝ったら?」
『ランク戦でいいですよ』
「いつもやってるだろ。たまには俺の願い事の1つでも聞いてもらおうか」
『…別にいいですけど。変なこと言わないで下さいよ』
「んー、考えとく」
『私が勝ったら新しく出来たカフェに柚宇ちゃんと行くのでお金だけ下さい』
「いや、それなら俺も行くし」
互いにトリガーを一振りし、戦闘態勢を取る。
「…間違っても俺を斬るなよ?」
『フリですか?』
「違ぇよ」
『ふふっ、ま、気をつけて下さいね』
* * *
「…こんなもんか」
『案外すぐ終わりましたね』
勝負、と言ったからには負けたくないし、割と本気でやれば、知らぬ間にトリオン兵は居なくなり、俺と瑠唯が倒したのが何体か積まれていた。
『…勝負は私の勝ちですね』
「ぐっ…お前のトリガー狡くねえ!?」
『白弧は私仕様ですから』
「くっそ…」
ふっ、と柔らかく笑った瑠唯が持つトリガー。
弧月より短く、また旋空のようなオプショントリガーは必要ではない。
完全に瑠唯用に改良された弧月…通称"白弧"
アイツのトリオン量を利用し、"ブレードを伸ばす"のではなく、"斬撃を飛ばす"トリガー。
「(ずりぃだろ…)」
『…ずりぃだろ、みたいな顔やめてください。結構トリオン使うんですからね』
「あれ?バレバレ?」
『わかりますよ。太刀川さんの考えなんて』
と、話していれば、インカムで報告をする瑠唯。
『《…はい、はい。お願いします》』
「終わった?」
『はい。准達と合流しましょう。向こうの方が大変かも』
嵐山達の元へと向かえば、既に避難は済んでいて、アイツらも報告を終えた所だった。
『こっち終わったよ』
「瑠唯!太刀川さん!」
怪我はないか?と瑠唯に尋ねた嵐山の顔はどことなくいつもと違う気がした。
『ないよ別に、心配性め』
「なら、よかった。こっちも今のところ大きな被害は聞いてないから大丈夫だろう」
『おー、よかったよかった』
「……」
「太刀川?」
「…ん?どうした?」
「いや、ボーッとしてたから…考え事か?」
「……まぁ、ちょっと」
天然と鈍感を兼ね揃える嵐山は気づいているのだろうか。
彼女に対する気持ちが"なんなのか"
「(…いや、いつ気づくのか、だな…)
…瑠唯はやっぱ人気だな」
『?A級1位の太刀川さんに言われると嫌味にしか…』
「…そうだ、お前も大概だった」
まあ、今後どうなるかちょっと楽しみにしてみるか。