ワールドトリガー

□第2話
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「おーい、終わったぞ」

『ん…あぁ…うん……』


ユサユサと准に揺さぶられ、目を覚ませば、人で埋まっていた講義室は准と2人だけになっていた。


『…ほかの人たちは?』

「今日は食堂のランチの取り合いらしいぞ。月イチで出る"ステーキカレー定食"」

『…名前聞いただけで胸焼けする……』


ははは、と笑う准と食堂へ向かい、お互いお弁当を食べていれば准が、そう言えば、と話す。


「賢と充が瑠唯さん元気ですか?って気にしてたぞ」

『え、うっそ、みっちーが?!』

「賢もな」

『賢は絶対気にしてない。私見つけたら多分隠れるよ』

「そうか?」


そうだよ。なんて本部にいる彼らの最近の話を聞いていれば、やっぱりそろそろ顔出そうかなぁ、なんて思い始める。


『…嵐山隊、今日は非番?』

「ああ。でもみんな集まる予定だ」

『よし、じゃあ帰り一緒に行こ』


みんなにも伝えておくよ。と、どこか嬉しそうな准に、私も顔を綻ばせていれば、国城さん、と呼ばれる。


「ちょっといいかな?」

『…准、次の講義室に移動してて』

「え?いや、ここで待つけど…」

『ううん、多分話長くなりそうだからいいよ』


じゃあまた後で。と言い残し、その女の子についていけば、案の定複数人の女の子が待ち構えていた。


「国城さんて、嵐山くんとどういう関係?」

『高校からの友人デス』


…あー、めんどくさ。こういうとこも高校の時から変わんないわ、准……。

っていうか大学生になってまでこんなことあんの?大丈夫かこの子ら。


「それにしてはずっと一緒に居るよね?」

「仲が良いのは悪いと思わないけど、嵐山くんもたまには違う子と一緒に居たいと思うんだよね」

『だろうね。別に常日頃一緒なわけじゃないし、アイツだって好きなように過ごしてるよ』

「それで国城さんを選んでるってこと?」


とことん食い下がる目の前の彼女たちに、徐々に溜まるイライラ。


「いい加減、嵐山くんに依存するのやめたら?国城さん、他にも男は居るでしょ?」

『(なんで男が前提なんだよ…)…別に准に依存してるつもりはない。っていうか話って"こんなこと"?もう行っていい?』

「なっ、まだ終わってないっつーの!」


通り過ぎようとすれば、ガッと肩を掴まれた。

…その時、


「お、瑠唯じゃん。何してんの」

「いや、これどう考えたって話しかけていい雰囲気じゃねえよ」

「「太刀川先輩!?」」


おい!俺も居るからな!!とツッコミを入れる諏訪さんに笑いそうになりつつも、どーも。と挨拶をする。


『ぷふっ…学内で一緒って珍しい…。こんなとこで…ふっ…何してるんですか、太刀川さん、す、諏訪さん…』

「おい国城!堪えきれてねえからな!」

「昼飯食ってたら諏訪さんに捕まった」

『あらまー、それはまた災難ですね』


なんだと!?と声を荒らげる諏訪さんに、まぁ太刀川さん常に暇ですもんね。と言えば、こらこら、と頭を掴まれた。


「人生の先輩に失礼だぞ」

『組織的には私が先輩ですけどね』

「え…?」


どういう…?と、戸惑いだした女の子達に、太刀川さんも諏訪さんも私へ目を向ける。


「…国城、お前言ってねえのかよ」

『言ってません。こんな知らない人たちにベラベラ喋る程、口軽くないんで』

「ま、まさか国城さんて…」

「おお。コイツ、ボーダーでも相当厄介な奴だぞ」

『太刀川さん、それは悪口です』


太刀川さんの脇腹を肘で突けば、ぐえっ、と変な声を出した太刀川さん。


「な、るほど…ボーダーだから嵐山くんとも…」

「ご、ごめんね勘違いして……」

『いいよ。慣れてるし』

「でもはじめから言ってくれれば…」

『?特に仲良いわけでもないのに、自分のこと話すメリットってある?』


そう言い切れば、顔を少し青ざめ、ごめんなさい!と走り去って行った彼女たち。


「お前容赦ねえな〜」

『事実だし』

「そんなんだから友達少ねぇんだろ」

『失礼な!ちゃんと仲良い人は居ます〜。

それじゃあ、准を待たせてるんで、また』


そう言って2人と別れ、午後の講義を受けた後、私は准と一緒に本部へと向かった。

廊下を歩いていれば、あ、瑠唯さんだ。と色んな人に声を掛けられる。


「相変わらず人気者だな」

『いやいや、准には敵わないって』

「あ、嵐山さんと瑠唯さん」

「げっ、瑠唯さん?!」

『!!みっちー!…と、賢…』


お久しぶりです。と手を振るみっちーに、准の後ろへ隠れる賢。


『ほらみろ』

「ははは…さすが師匠だな、弟子の行動はわかるってか?」

「ど、どどどうしたんですか突然?!」

『何よ、たまには弟子たちの顔を見に来てもおかしくないでしょ?』

「そ、そうですね!!」

『よし、じゃあとりあえず…特訓に行こうか、賢?』

「ひええ…」


首を掴み、んじゃ、と准とみっちーに別れを告げようとした時、ドンッ!と何かに突撃され、賢諸共地面に崩れ落ちる。


「ぐえっ、お、重い…!」

『いてて…誰だ…』

「瑠唯さん!!!お久しぶりです!」

『あ、綾ちゃん!』


会いたかったです〜!とぎゅっと私を抱きしめる綾ちゃんの後ろには、藍ちゃんの姿も見えた。


『藍ちゃんも久しぶり。元気にしてた?』

「は、はい!瑠唯さんも、お元気でしたか?」

『勿論。藍ちゃんの活躍はもういっぱい聞いてるよ、これからも頑張ってね』

「!ありがとうございます!!」


と、嵐山隊+私が集まることにより、周囲のざわつきが増し、どこから聞きつけたのか、会いたかった弟子たちと感動(?)の再会を果たせることになる。


「あ、ほんとにいますよ、瑠唯さん」

「瑠唯さん、お久しぶりです」

『おお、義人と哲!元気だった〜?高校生活楽しんでる?』


そう尋ねれば、はい。と答える哲に、まあ。と答えた義人。

そっか〜と、義人の頭をわしゃわしゃ撫でてやれば、やめてください、と言いつつ抵抗はしない彼。


「瑠唯さんも大学生活どうですか?慣れました?」

『まあね』

「時間出来たらまた稽古つけてくださいね」

『あぁ…そん時は荒船隊みんなにつけたげるよ』

「!伝えておきます」


嬉しそうにはにかむ哲に、コイツやっぱりイケメンだなぁ。なんて思っていれば、あ〜!瑠唯さん発見!と声が聞こえ、直後後ろからハグされる。


『うっわ、犬飼……お、新ちゃんいるじゃん!』

「どうも」

『相変わらず顔綺麗だねえ。高校楽しい?クラス替えどうだった?』

「普通です」

「(辻、瑠唯さんとは普通に喋るよな…)」

「瑠唯さん!俺は無視ですか!会いたかったんですけど!」

『お前は離れろ…今すぐ私の半径500メートル以内から出て行け……』

「えー嫌です」

「犬飼先輩いい加減にしておいた方が…」


新ちゃんがそう言うも離れそうにない犬飼に、ニッコリと微笑んで腹パンを喰らわせれば、うぐっと声を上げ腕を話した彼。


「女のコのすることじゃない…」

『残念だったな』

「パワハラです」

『なら私はお前をセクハラで訴えてやる』


…本当に、コイツにはパーソナルスペースはないのか?

犬飼って言うくせにお前が犬だろ。となんかもうよくわからないツッコミを心で入れておき、しばらくその場に集まった人達と話していれば、今度は私が会いたかった人に会えた。


『!!蒼也さん!!!』

「瑠唯。久しぶりだな」


喜びのあまり、抱きついてしまうがそれを受け止めてくれた蒼也さん(カッコイイ)


「元気にしてたか?」

『そりゃもちろん!蒼也さんは?風間隊、最近任務忙しそうですけど、きちんとご飯食べてます?』

「あぁ」

『よかった』


と、蒼也さんにベッタリで話していれば、賢が、うっっわ…と声を漏らしていたため、回し蹴りを食らわせた。


『それより、蒼也さん一体どうしてここへ…』

「お前を探してたんだ」

『!え…嬉しい…!蒼也さんとならどこへでも…!!』

「そうか、ならすぐに来てもらおう。城戸さんが呼んでる」

『………私ちょっと用事が…』

「行くぞ」

『えっ、ちょっ、まっ、やだ!やだぁ!!蒼也さん!!やだ!!誰か!助けて!』


抵抗するも、成人男性の力に敵うわけもなく、ズルズルと引きづられるように腕を引かれ、その場に居た人達に助けを乞うも、"風間さん相手には…"と誰も私を助けてくれなかった。

そして会議室に連れてこられると、では、と私を置いて出ていく蒼也さん。


『(あああ…あんまりだぁ……)』

「珍しいな、お前が1人で自分から顔を出すとは…」

『…愛弟子たちの顔を見に来てました』

「そうか」


相変わらず無愛想な城戸さんに、こちらもあからさまに不機嫌を顔に出せば、忍田さんが、すまないな。と私に声を掛けてくれた。


「実は防衛任務のことで頼みがあってな…。今度、迅と一緒に行って欲しい」

『えー、悠一とですかー』

「なら、加古隊と合流でもいいか?」

『悠一と行きます』


防衛任務の話を聞き、会議室を後にしようとすれば、国城。と、城戸さんが私を呼び止めた。


「本部へ異動の件は?」

『…"アイツ"がここに居る限り、移る気なんてありませんよ』

「………」

『それに、私が本部に異動したところで、そのお願いをしても叶えてくれそうにないだろうし、多分アイツもそんなことさせない。腐ってても金と技術は持ってる男だ』

「!」

『…私は、アイツがしたことを一生許さない。父親なんて思ったこともない。あんな奴、ただの他人だ』

「国城…」

『では』


扉を閉め、はぁ、と大きな溜息を吐く。


『……ガキか…私は…』

「まだガキだろ、俺達は」

『!!…悠一…』

「今度、お前と防衛任務だろ?その話をしにきた。ぼんち揚げやるよ」

『……ありがと』

「どういたしまして」


ぽん、と頭を撫でられ、悠一について歩きだす。

なんだかんだ言っても幼馴染だ。もう15年以上は付き合ってるのでお互いのことは大体わかる。


『(…悠一…ありがとう……)』
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