ワールドトリガー
□第1話
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「見て見て、嵐山くんだよ!」
「ほんとだ!テレビで見るよりカッコイイよね…!」
「同じ大学とか幸せすぎる…」
なんて、ヒソヒソと話す内容が届いてるのか届いていないのかわからないが(多分後者)、ニコニコと声の方へ笑顔を向ける隣で歩く彼。
『…ホント、"ボーダーの顔"だねぇ…』
「そうか?まぁ、広報担当だしな!」
『あぁ…うん、そうだね…』
…そういうことじゃないんだけども…相変わらず天然だなぁ。
なんて、高校からの付き合いの彼…嵐山准に改めて思った。
『(…に、しても…今日はまた一段と視線が……)』
チラリ、と周りを見れば頬を赤らめ、こちらを見つめる女の子達。
そしてそんな子達と同じくらいの割合でいるのは、私を怪訝そうに見る女の子の視線。
「なんなのアイツ…」
「さぁ?ボーダーなのかな?」
「全然強そうに見えないけどね」
クスクスと笑う声に、はぁ、とため息を漏らせば、どうかしたか?と私の顔を覗き込む准。
『……准、そういうとこだよ』
「え?なに?」
『高校の時から変わんないな』
「あ、おい!待てよ!どういうことだ?」
スタスタと先に歩き出せばすぐに私を追いかけてくる彼。色々と話しながらとりあえず支部に向かおうと校門を出れば、車が1台止まっていた。
「あ、来た来た」
『なにやってんの、悠一』
「久しぶりだな!迅!」
「お〜久しぶりだな嵐山」
と、2人が軽く挨拶を交わせば、ま、とりあえず乗れよ。と車を指さす悠一。
准と共に乗り込めば、運転席に居たのはウチのボス。
「林藤支部長、お疲れ様です」
「おう、お前らもお疲れ!」
『珍しいですね、わざわざ大学まで来るなんて』
「近くを通ってたからな。迅がついでに拾って行こうって」
「よく俺たちが講義終わるって…あ」
『…ホント、腹立つサイドエフェクトだな』
「悪いな」
『ウザイ』
そのまま本部に着けば准だけ降ろし、私たちは玉狛支部へと向かった。
『ただいま〜』
「おう、おかえり」
「あ、瑠唯さんおかえり〜」
中へと入れば、陽太郎と栞ちゃんが出迎えてくれる。
「あれ?迅さんやボスと一緒だったの?」
「迎えに行ってきた」
『勝手に来られた』
「おいおい、冷てえな」
相変わらず仲良しだねえ。なんて言う栞ちゃんに、適当に返事をし、台所へと向かう。
今日は私が非番のため、晩御飯の用意をしていれば、俺も手伝うぞ〜。と悠一が隣に立った。
『じゃあそれ切って』
「はいはい」
指示しながらご飯を作っていれば、栞ちゃんがじっとこちらを見つめていた。
『?どうかした?』
「いや、相変わらず夫婦みたいだなぁって」
『誰がこんな奴の嫁になんか』
「俺的には大歓迎」
『黙れ』
「あははー、迅さん振られっぱなしだね」
「そろそろ泣きそうなんだよね」
『残念、私は蒼也さんが好きなんで』
グツグツとスープを煮込みながらそう言えば、なんで風間さん?と栞ちゃんが言った。
「『俺/悠一と嵐山/准を足して2で割った感じだから』」
「………」
『ちょっと、ハモんないで』
「お前いつも言うだろ」
「(それって結局迅さんも嵐山さんも好きってことだよね…)」
『…栞ちゃん?何考えてる?』
「何も考えてないよ〜」
『嘘つき』
なんか勝手にほっこりしてる栞ちゃんに溜息を吐きとりあえず料理を終える。
――暫くしてから、防衛任務から帰ってきたレイジさんに、学校帰りの桐絵ちゃんやとりまる達と晩御飯を食べ、ダラダラと過ごしていた。
『…そう言えばとりまる、この間本部行ってたんだっけ?』
「あぁ、行ってきましたよ」
『みんな元気にしてた?』
「はい。瑠唯さんもたまには行ってあげたらどうです」
『え〜〜、まぁでもそろそろ賢を鍛えに行ってやんないとな〜』
「荒船さんも会いたがってました」
『おお、哲が?珍しいな』
…アイツが私に会いたいなんて本当に珍しい…。
『(今度会ったらハグしよう……)』
「やめとけよ瑠唯。誤解生むから」
『しないよ。っていうかそんな変なこと考えてないし!』
と、話していれば、ボスがやってきて解散となった。
『じゃあねみんな、お休み〜』
「お〜」
「また明日な」
お風呂を済ませ、部屋に戻りベッドへ飛び込む。
『(…今日も何もなかった、よかった)』
私の大好きな日常。私の大好きな"世界"。
…――私の…全て…。
と、目を瞑れば、ふと頭に流れてきた映像。
「なぁ、ちょっと俺に乗ってくれねえか?」
「瑠唯…お前…!!」
「あんたまでネイバーの味方をするのか、瑠唯さん」
「待っていたぞ」
「お前…頼むから……約束は守ってくれよ」
『…ゆう…いち……?』
――これは、後に"大規模侵攻"と呼ばれる事件が起こる、少し前のお話。