2人の英雄

□第8話
1ページ/1ページ



『はぁ…はぁ…!』

「見えてきた…!」


飛び出してみれば、ボロボロになった緑谷くんやオールマイトがボスであろう敵と対峙していた。

敵はオールマイトを潰さんと言わんばかりに鉄柱を降り注ごうとする。


「オールマイト!!」


緑谷くんの叫び声とほぼ同時に、風で鉄柱をぶった斬れば、轟くんは氷結を、勝己くんは敵に向かって爆破を起こしていた。


「くたばりやがれ!」


しかし勝己くんの攻撃は塞がれ反撃を受ける。


「あんなクソだせえラスボスに、何やられてんだよ!ええ?!オールマイトォ!!」

「爆豪少年……!」

「今のうちに…敵を!」

『さっさと片付けて!オールマイト!!』

「轟くん!嘉風さん!」


轟くんと同時に私も凝固で氷を作り出し鉄柱を止める。


「金属の塊は俺たちが引き受けます!」

「八百万くん、ここを頼む!」

「はい!」


切島くんや飯田くんも飛び出し、5人でとにかくオールマイトのサポートにあたる。

闘いの合間で、轟くんの肩に触れれば、バッ!と目が合うも、彼は何も言わずに、ギリッと歯を鳴らした。


『(…くそっ……もう…限界が…!!)』


…視界が…ボヤけて…。

凝固と空、さらに回復も使いながら鉄柱を防ぎ、これ以上被害増やさないのと、オールマイトへの妨害を防ごうと試みるも、徐々に威力を失っていく個性。

チラリとオールマイトの方を見れば、敵のワイヤーに絡まれ宙に浮いたままにされていた。

そして、次の瞬間…。


「がああああ!!!」

『ーーーッ!!』

「オールマイ……っ!!」

『!緑谷くん!!』


蹲る彼に駆け寄ろうとするも、鉄柱がそうさせてくれるわけでもなく。

隣で闘う轟くんや勝己くん、百たちの周囲で鉄柱を破壊する切島くんや飯田くんたちも徐々に動きが鈍くなっていた。


「クソがあぁ!!」

『(こんな時に……私は…ッ!)』

「Noooo!!」


オールマイトのその叫び声に反応し、そちらへ目を向ければ凝固で作った氷越しで見えたのは、鉄柱に挟み打たれるオールマイトの姿だった。


「さらばだ、オールマイト!」

「マイトおじさまああ!」


メリッサさんのその叫び声の瞬間、先程まで蹲っていた緑谷くんが飛び出し、鉄柱を破壊した。

するとバランスを失った鉄柱が崩れていく。


『緑谷くん!オールマイト!!』


急いで駆け寄れば、2人ともボロボロになっていた。


「!嘉風さん!」

『2人とも!無事!?』

「ああ!心配をかけたようだね!もう大丈夫だ!」


先程までの、絶望に満ちた雰囲気とは打って変わって、どこか希望に溢れた顔になった緑谷くん。

…あぁ、すごい。すごいな、さすがNo.1ヒーロー……


『(でも………)

オールマイトも緑谷くんも、ちょっと寄って』

「?」


2人の手に触れ回復の個性を使えば、嘉風少女!!と、手を離すオールマイト。


「ダメだ!君ももう体力が…」

『…少しでも、奴を倒す力になるのなら…大丈夫です』

「嘉風さん…」


ほわ…とギリギリまで回復させれば、ぽん、と頭に乗る温かくて大きな手。


「救かったよ、嘉風少女」

『…っいえ、あとは…頼みます…!』


ああ!と、2人は敵へ向かって飛び出した。

…大丈夫だ…もう、あとは……。


『(任せて……)』

「舞さん!!」

『メリッサさん…!』


大丈夫!?と駆け寄ってくる彼女の肩を借り、なんとか立っていれば、敵が苦しそうにも再び攻撃を始める。


「ぐっ……くたばりぞこないとガキが…。ゴミの分際で、往生際が悪ィんだよ!」

「そりゃ、てめぇだろうがあ!」

「させねえ!」

『2人とも!!』


散弾に向かって勝己くんは凄まじい爆破で爆炎を起こし、更に轟くんが氷壁を出現させた。

2人の阻止によって突き進むオールマイトと緑谷くんに激昂した敵が手を振りあげると、鉄柱がそこらかしこから伸び、地面が不安定になる。


「きゃあ!」

『くそ…!思い通りにはッ…させない…!!』


凝固で鉄柱を抑え込めば、オールマイトも緑谷くんも、物凄いスピードと威力を保ったまま、鉄柱を伝って敵の元へと突き進んでいく。

そんな2人の後ろ姿を思わずじっと見つめてしまっていた。

…ずっと、すごい人だと思っていた。わかっていた。

No.1ヒーローの隣に並ぶ彼は、オールマイトに比べて随分小さい背中だし、身体の発展途上もまだまだいいとこだ。

それでも…


『(ああして並んで、闘う姿がカッコよくて…少しだけ…羨ましい……)』


…いつか、自分も、憧れの人と……――。

と、その瞬間、両腕を高く上げた敵は、先程よりもたくさんの鉄片を猛スピードで集め出した。


『(やばいっ…崩れる…っ!)

メリッサさん!』

「えっ?…きゃっ!!」


崩れる足場からメリッサさんを押し出せば、顔を真っ青にしたメリッサさんが視界に入った。


「舞さん!!!!」

『大丈夫です!』


ニコリと笑ってそう伝えると、手を必死に伸ばし、私の名を呼ぶ彼女。

…もう、個性で落下の衝撃を和らげる力も気力もないや…。


『(全身打撲くらい…で済むかな……)』


まるで自分だけ、時間がゆっくり流れているかのような、変な感覚に囚われ、ゆっくり瞼を閉じた時だった。


「舞!!!」

『っ!!…轟くん!!!』


声の方へ顔を向けると、手を伸ばして私を見上げる轟くんが居た。

…このままじゃ、ダメだ。あそこへ…轟くんのとこまで…!


『(お願い…!!)』


なんとか力を振り絞り、風を起こせば轟くんは少し駆け、私を抱きとめた。

ドサァ!


『ご、ごめん轟くん…ありが「無事でよかった」


顔を見る前に、私をぎゅっと抱きしめた彼。私も背中に手を回せば、ドクンドクンと聞こえる心臓の音。


「…無茶苦茶しやがって…」

『あはは…ごめん…』


全部見てたのか…と思っていれば、勝己くんもこちらへ向かってきていた。


「!…ンだテメェ着地したんかよ」

『あぁ…轟くんが助けてくれて…』

「ハンッ…情けねえ」

『うるさいなあ。それより、緑谷くんとオールマイトは…!』


轟くんから離れ、見上げれば塔の上に巨大な金属の集合体が出来ていた。

そして、そこへ突っ込んでいく緑谷くんとオールマイト。


「タワーごと潰れちまえ!!」


巨大な鉄の塊が落ちていく。

2人は拳をグッと握り、パワーを溜めた。


「「ダブルデトロイトォォ!!スマーシュッ!!!!」」


鉄の塊に拳がぶつかれば、更にパワー込め敵を押し込んでいく。


「ぐ……ぐぐ……がハッ!」


敵が耐えきれず腕を弾かれると、鉄の塊に亀裂が走り、轟音を立てながら瓦解する。

2人は更に敵の元へと距離を詰めた。


「いけえぇぇ!!」

「「オールマイト!!」」

「「緑谷!!/くん!!」」

「『ぶちかませえっっ!!』」


みんなが自然と声を張りあげれば、2人は再び拳を構えた。

迫る拳に金属の中へと身を隠す敵だが、拳が鉄の塔に激突すると、衝撃波が広がる。


「ぐうううう!!」

「おおおお!!!!」


凄まじい威力に、閃光が漏れ爆発すると塔が崩れていった。


『やった……?』

「……あぁ」

『倒して…くれたんだ……』

「おお」

『そ、か……そっかぁぁ……』


じんわりと伝わる勝利に思わず笑みを零せば、轟くんも笑みを浮かべ、少し離れて隣に居た勝己くんも笑みを浮かべていた。

それに気づいた轟くんは、ふっと柔らかく笑みを作ると、勝己くんは、ケッ、とどこか恥ずかしそうにそっぽ向いた。


『ふふっ』

「?どうした?」

『いや?勝己くん、可愛いなあって』

「アア!?黙れクソ女!!」


と、そんなやり取りをしていれば、舞!!とこちらに駆けてきた百たち。


『皆!』

「先程より更にボロボロじゃないか!大丈夫か!?」

『うん!私はちょっと個性使いすぎただけだよ』

「俺も別に大したことねえよ」

「そうか!よかった!!」


ひとかたまりになっていれば、お茶子ちゃんが緑谷くんとメリッサさんを見つけた。


「デクくーん!メリッサさーん!」

「怪我はないか!2人とも!」

「やったな緑谷!!」


お茶子ちゃん、飯田くん、切島くんがそう叫ぶと、少しだけ間が空いて返事がきた。


「大丈夫!オールマイトも博士も無事だよ!」

「みんなは大丈夫!?」


今度はメリッサさんにそう尋ねられ、大丈夫です!!と、飯田くんとお茶子ちゃんが返事をしてくれていた。

2人は顔を合わせると、瓦礫を伝ってこちらに向かってくる。


『ふぅ……!』


ホッと胸を撫で下ろせば、カクンッと膝から力が抜け、轟くんに凭れるように倒れた。


「!おい!」

『あ、はは…安心したら力抜けちゃって…大丈夫だから!』

「大丈夫じゃねえだろ」

『え、きゃっ!』


膝の下に腕を通すと、私を横抱きにした轟くん。


『ちょっ、轟くん!これは!恥ずかしい!おんぶ!!』

「おんぶは倫理的にアウトだっつってんだろ」

『なんで!?』

「………行くぞ」

『無視!?』


暴れる体力ももうなく、なるべく轟くんの負担にならないようにと大人しくしていれば、みんなに冷やかされながら私たちはプロヒーローや警察の人達の集まる場所へと向かった。


次の章へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ